TOWN TALK / 1か月限定の週1寄稿コラム
【#4】漆から海藻へ繋ぐみち
執筆:kinhiji
2025年3月31日

お土産:左上から時計周りに①古本屋で見つけた海藻事典 ②浜辺の海藻調査に欠かせないワークマンのウェア ③「天草」:海藻探求プロジェクトの相方わきちゃんが毎回見つけたものを押し海藻してくれる ④淡路の自凝雫塩 ⑤節分にしか手に入らない昆布だるま
東京から京都へ拠点を移して、3年が経とうとしている。
皆、声を揃えて同じことを言うけど、やっぱり時の流れは益々早く感じる。私は果たして、成長できているのか?3年前の自分が誇れる40代の大人になれているのか?
京都に移り住んだ理由は色々あるけど、きっかけとなったのは、日々の研究だった。
3年前は漆に没頭していた。漆を軸とした生態系が非常に面白く、日本人の国民性や人間の意地を感じる素材。そんな漆が私と京都を繋げてくれた。
伝統素材の研究は10年前、稲から始まり、研究スタイルはニューヨークで励んでいたテレビの仕事が原点となっている。お米をテーマとした番組だったとしても、視聴者が最も興味を持つのはモノでもコトでもなく、ヒト。料理番組の制作では、料理家さんやシェフの料理の腕は正直そんなに重視していなく、その方のストーリー性や画面という厚い壁を取っ払うくらいのカリスマ性が求められていた。今はフィールドワークで収穫した物語を教育コンテンツに変換していくことをさせていただいている中、人の心に響くストーリーテリングが勝負所。私の中では、料理番組はメディアコンテンツではなく、教育コンテンツであって、エンターテインメント性が高ければ高いほど良いと思っている。
だいぶニッチかもしれないけれど、私の中では、「人」x「エンターテインメント」の頂点は神話。日本の始まりを描く物語は地域により全く異なることがまた面白いところ。郷土玩具や妖怪のように、神話には風土が現れる。日本で最も知られている神話では、イザナミとイザナギが日本列島を産み出す際に最初に生まれたのが淡道之穂之狭別島。だから、私も含め、淡路島を特別に思う人は少なくはないはず。
漆が私と京都を繋げてくれて、次は私と淡路と繋げてくれた。漆のフィールドワークで、淡路に初めて上陸し、そこで出会った鰆のタタキに感動した。いや、正確に言うと、鰆の上に振ってあったお塩に衝撃を受けたのです。話を端折ると、そのお塩のおかげで、海藻探究プロジェクトの相方わきちゃんとまた淡路を訪問。
漆がお塩へ。お塩から海藻へと。モノからモノへと繋がるように聞こえるけど、その裏には沢山のヒトの想いや丁寧な仕事や優しさが詰まっている。しかも、割と変わり者ばかりで、ヒトからヒトへと繋がっていくと、研究の楽しさが倍増する。
人は陸の生態系を必要としているのと同じように、海藻は海の生態系を必要としている。単独では生きていけない。しかし、陸と比べると海はまだまだ未知の世界。地球の7割は海だけれど、海の生物や環境を対象とする研究者の数は1割以下と言われている。その貴重なメンバーの中でも圧倒的にスペシャルな海藻博士さんたちとご縁ををいただき、わきちゃんと私はその方々に支えられている。面白い変わり者たちで、お話を聞かせていただく度に海藻をどんどん好きになっていく。
大きな学びの一つで言うと、海藻は人間が思う綺麗な海水を求めているのではなく、雑で栄養たっぷりの海水を欲している。海藻を単体にピックアップせず、海水、海塩、そしてもっともっと言うと、山の健康状態まで知ることが大事。畠山重篤さんの書籍『森は海の恋人』 をおすすめします。
料理番組のプロデューサーを務めていた時は、人の表現力ひとつで、全く自炊に興味がなかった方でも、テレビを観てから台所を満喫するようになった現象を多々みてきた。
今では、私が視聴者側として、日本各地のプロフェッショナルから学ばせていただいたことが今の自分の趣味嗜好になっている。ありがとう。
プロフィール
中村桃子
なかむら・ももこ|京都在住。株式会社京都研究所の代表として、伝統素材のフィールドワークを元に教育玩具やプログラムを制作。フォトグラファー濱津和貴さんと結成したユニットkinhijiは、海藻にまつわる日本各地の衣食住を探求中。
Official Website
https://www.kyotoresearchinstitute.com/
kinhiji
Official Website
https://www.kinhiji.com/
Instagram
https://www.instagram.com/kinhiji_/
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