TOWN TALK / 1か月限定の週1寄稿コラム

【#4】メキシコ 死者の日 – 想いが宿るお墓の風景

執筆:Momoca

2025年1月30日

3週間にわたりお届けしてきたメキシコの死者の日シリーズも、今回が最終回となりました。
これまでを振り返ると、

第1話では、死者の日がどのような祝祭であるか、その背景と意義についてお話ししました。
第2話では、各州ごとに異なる独自の風習や文化の多様性をご紹介しました。
第3話では、「死者の花」とも呼ばれる黄金の花、センパチシルについてお伝えしました。
最終回となる今回は、死者の日の象徴ともいえる「お墓」の光景についてのお話です。

こんなに可愛らしく飾られたお墓があちらこちらに。ご家族の愛を感じます。

命が宿るお墓の情景

死者の日が訪れると、人々は家族や先祖のお墓を訪れ、センパチシルを一面に飾ります。黄金色の花々が太陽のように輝き、お墓を鮮やかに彩る様子は、まるで眠る命が再び息を吹き返したかのよう。墓地全体がお花畑のようになり、どこを見ても鮮やかなセンパチシルが咲き誇ります。墓地の周りには、花を売る人々が集まり、小さな市場のような賑やかさも生まれます。どこでも商売を楽しむメキシコの人々らしい光景です。

墓地一面がまるで鮮やかなお花畑の様です。

日が沈む頃になるとお墓を飾り終えた家族や友人たちで賑わい、無数のキャンドルが灯されます。その灯火はまるで踊るように揺れながら柔らかな光を放ち、センパチシルを美しく照らし出します。

センパチシルがキャンドルライトに照らされいて幻想的です。

そんな幻想的な光に包まれた墓地には愉快な音楽や歌声が広がり、温かな雰囲気が漂います。各家族がそれぞれの好きな曲をかけて歌い、心地よい自由さがあふれる時間が流れていきます。自宅の祭壇とお墓の両方が祝祭の中心となり、お墓は単なる眠る場所ではなく家族が再会し、命と死が繋がる神聖な空間となります。

お花で作った十字架の飾り、厚みもあってとても豪華。

色々な食べ物が可愛らしく盛られている。なんともお茶目な可愛らしさ。

この独特なメキシコの死者の日は、他国から訪れる人々にとって貴重な体験となります。実際、多くの観光客が集まり、国全体が活気にあふれます。ただし、観光客が入れない墓地もあり、地元の人々の習慣や思いを尊重することが大切です。

個性あふれるお墓のお飾りが目を引きました。

お盆と Día de Muertos が教えてくれること

特に私たち日本人にとって、メキシコの死者の日を知ることは、自国の文化の素晴らしさやその特性に改めて気づくきっかけとなります。静けさの中で先祖を敬うお盆と、賑やかに命を讃えるメキシコの Día de Muertos。その対照的な在り方は大きく異なるように見えますが、どちらも命と家族の絆を大切にする心を根底に抱いている点で共通しています。

みなさんも、今年のお盆を少し特別なものにしてみてはいかがでしょうか?先祖や家族への想いを再確認することで、より深い絆や感謝の気持ちを感じられるかもしれません。

墓地の敷地内にある建物の中に祀られた祭壇。 キリストやマリア様像の周りにお供え物のパンや果物、お花、砂絵などがあります。

窓もついて小屋の様になったピンクでかわいいお墓。センパチシルの花びらがピンクのタイルや壁に映えていてとても素敵。

私自身も、帰省のたびに実家のお仏壇を華やかに飾りつけます。ペーパーアーティストの私は自分で作った紙花を次々と飾りつけては、母から「賑やかすぎる!」や「今年はお坊さんがいらっしゃる年なので、あまり派手にしないで!」とお小言をもらうこともありますが、それでもついお仏壇を飾り付けてしてしまいます。そんな賑やかさの中にも、日本らしい慎ましさを大切にしつつ、自分のペーパーアートでお仏壇を飾ることが、私にとってのささやかな楽しみです。

ある村の中心にある教会に飾られた花々がとても綺麗です。

文化をつなぐ祭壇

お盆とDía de Muertos、2つの祭壇・仏壇を並べて祀った際、そのユニークな融合が話題となり、ニューヨークタイムズに取り上げていただきました。第一話でご紹介した写真をもう一度載せておきますね。

私の祭壇作品: 日本の「お盆」とメキシコの「 死者の日 」の祭壇

これにて、死者の日のお話は一区切りとなります。最後までお付き合いいただき、ありがとうございました! インスタグラムでは、私のアート作品や旅の記録をそれぞれ楽しく投稿しています。ご興味がありましたら、ぜひフォローしていただけると嬉しいです。

オアハカの小さな村で見つけた壁画。カラベラ(頭蓋骨)は、メキシコ人にとって、とても神秘的であり親しみのある存在。

プロフィール

Momoca

ももか|ペーパーアーティスト / 祭壇クリエイター。カリフォルニア州バークレーで約25年暮らした後、2021年にメキシコシティへ拠点を移す。紙を主素材としたオブジェや絵画を制作し、旅で得たインスピレーションや内なる世界を表現する祭壇アートも手掛ける。その活動は、メキシコの「死者の日」と日本の「お盆」の祭壇を並べた作品がニューヨークタイムズに掲載され注目を集めている。かつては自身の洋服ブランドをバークレーで立ち上げ10年間店舗経営、〈Adidas〉や〈Red Bull〉といった大手ブランドとコラボレーションを実現。また、『シェ・パニーズ』のアリス・ウォータースや〈Apple〉社のデザイン部副社長エヴァンス・ハンスキーのイベント装飾を手掛ける。モロッコ・マラケシュにあるイヴ・サンローラン美術館からデザイン賞を授与される。

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