カルチャー
アーティストのVincent Tsangとおしゃべりしましょ。
everyone presents VINCENT TSANG ‘GRATITUDE’ EXHIBITION
2024年12月10日
text: POPEYE
photo: Kenta Sawada
プロフィール
Vincent Tsang
ヴィンセント・ツァン|1988年、カナダのモントリオール生まれ。〈DIME〉の共同ファウンダーでアートディレクターを務める。絵画の他にも、造形や、映像など多岐にわたる作品を発表している。最近はテニスにもハマっている。
Instagram
https://www.instagram.com/vincent.mtl/
和室で武士のごとく正座するこの男、カナダはモントリオール出身のアーティストVincent Tsang。スケートブランド〈DIME〉のファウンダー兼アートディレクターであり、アーティスト。
彼のはじめての個展「everyone presents VINCENT TSANG ‘GRATITUDE’ EXHIBITION」が淡島のギャラリー『DDD ART』にて、12月11日まで開催中ってことで、朝のコーヒーを片手に今回の展示について話を聞いてみた。

POPEYE
こんにちは。住宅街の中にこんな素敵な日本家屋のギャラリーがあるとは知りませんでした。気持ちのいい場所ですね。

ヴィンセント・ツァン
こんにちは。とてもスペシャルな場所ですよね。日本で個展をやるからには自分が日本を感じられる場所でやりたかったんです。
どの国にもあるような単なる白い空間は嫌でした。僕の作品はアジア全体からインスパイアされたものなので、畳や日本家屋がハマりますし。

POPEYE
確かに普通のギャラリーだったら、作品が展示された写真を見てもそこがロンドンなのか日本なのか区別がつかないですもんね。この場所は自分で見つけたんですか?

ヴィンセント・ツァン
いや、展示をオーガナイズしてくれた〈everyone〉の三好(良)さんが見つけれくれました。彼とは2年前に知り合って以来、とてもオーガニックでナチュラルな友達関係を築けていると思う。ビジネスライクな繋がりは一度もない。

POPEYE
二人はどのように出会ったんですか?

ヴィンセント・ツァン
はじめは、お互いInstagramをフォローしあっていたくらいの関係だったんですが、彼から突然「新しく始めるプロジェクトeveryoneのためにペイントを買いたい」とDMが来たんです。
でも僕は自分自身のために描いているだけだったし、近しい友達にしか渡したくなかった。だから、

POPEYE
作品を売るつもりはなかったと。

ヴィンセント・ツァン
そう。「だけど、もし日本へのフライトチケットを買ってくれるなら、そっちで作品を描きたい。もちろんフリーで」と返信しました。友達になりましょうと。実際に会ってみて、すぐに友達になりました。そのときに描いたのが今回も展示しているし、〈everyone〉のショップに飾ってある作品です。

POPEYE
他の作品もすべて日本に滞在しながら描いたと聞きました。

ヴィンセント・ツァン
4、5回日本に来て、それぞれ10日間ほどの滞在で一気に描きました。50作品ほどあると思います。
というのも、日本で制作することに恋に落ちてしまったんです。この国の環境すべてに影響を受けています。外を歩いて見かけたポスターのカラーコンビネーションに感動してインスパイアされたし、おいしいものを食べてとても気分が良くなったから描けたし、日本人の仕事に向き合う姿勢にも触発されました。
三好さんを見ていると、すごく物事に集中して取り組んでいる。自分のモチベーションも上がって、細かいディテールにもフォーカスしようと気合いが入りました。

POPEYE
ディテールと言うと、漢字のようなフォルムの作品もありますね。

ヴィンセント・ツァン
まさしくです。漢字に影響を受けたのは最近のことで、それまではもっとアブストラクトなフォルムでした。
どんどん日本に来るにつれて、漢字がいろんなところにあることを自覚して、キャンバスに向かううちに漢字の意味や自分の好きな言葉が浮き出てきました。自分の作品も漢字のシェイプに合わせられるなと気がついて今回試したんです。

POPEYE
抽象的なフォルムというのは、どこから影響を受けたのでしょう?

ヴィンセント・ツァン
主に、カリグラフィーやグラフィティですね。それと音楽からも。

POPEYE
音楽ですか!

ヴィンセント・ツァン
Miguel Atwood-Fergusonというミュージシャンを知っていますか? ジャズのような、オーケストラのような音を作る現代音楽家で、彼自身もバイオリンを演奏しています。
実は絵を描くときはいつも、彼の曲を聴いているんです。しかも同じ「Library Selection」というアルバムだけ。静かに波が打ち寄せるような音楽です。サウンドセラピーのような気持ちで描くんです。

POPEYE
そう言われると、線筆が波のように感じてきました。昔からこのようなタッチを続けているんですか?

ヴィンセント・ツァン
うーん。ちょっとは違うけど似たようなところはあるかもしれません。〈DIME〉をはじめた頃は、こういう小さいスケーターみたいな感じです。

POPEYE
そもそもいつ頃から絵を描いてきたのか、どのようなカルチャーに感化されたのかを聞かなくてはいけませんね。

ヴィンセント・ツァン
最初はうんと小さいときから。TVで『ポケモン』や『ドラゴンボール』を観て、ずっとノンストップでキャラクターを描いていました。その後『ガンダム』にもハマったんですが、子供にはまだ話の内容が難しくてよくわからなくて、ただ単にかっこいい! と。そこから宮崎駿作品も観るようになりましたね。
ティーンになると絵よりもファッションやスニーカー、写真への興味が勝ってちょっと遠のいていきます。

POPEYE
その頃にスケートボードとも接近するんでしょうか。

ヴィンセント・ツァン
周りにスケーターが多い環境で育ったので自然とですね。〈DIME〉のパートナーであるPhil Lavoieは幼少期からの友達で、大学で一緒にブランドを始めました。
2000年代くらい、僕たちは〈Stussy〉〈Supreme〉といったブランドが好きで、ストリートアーティストやグラフィティライターのグラフィックを使ったTシャツや、デッキのアートワークに夢中でした。FUTURAのアートがプリントされたTシャツをよく覚えています。
2010年か、2012年くらいにしっかりブランドとして〈DIME〉をスタートさせて、自分もそのようにアートを使って服やスケートボードを作りたかった。それでTシャツのグラフィックのためにまた描き始めたんです。そこから描き続けて、Tシャツのグラフィックを紙に印刷してみたらかなりいい感じで、次はキャンバスに挑戦してみようといった具合に。

POPEYE
確かにスケートボードとアートの関係は切っても切り離せないですよね。スケーターのアーティストも多いですが、中でもお気に入りの人はいますか?

ヴィンセント・ツァン
間違いなくMark Gonzales。彼がベスト! 今の作風にもかなり影響を受けています。

POPEYE
彼も立体作品がありますが、今回は陶器も作成していますね。

ヴィンセント・ツァン
これはゴンズというより、イギリスの彫刻家Henry Mooreが生み出すフォルムから大きな影響を受けています。日本で陶器にしてもらいました。
日本の陶芸家の知り合いからブランクの陶器を提供してもらって、そこにペイントした作品もはじめての挑戦です。

POPEYE
(スタッフが慌ただしく動く)おっと、そろそろ開場ですね。すでに入場待ちのお客さんで行列が出来ていました。今日はお時間をいただきありがとうございました。

ヴィンセント・ツァン
こちらこそありがとうございました。
また子供の頃のようなクリエイティビティの源泉に戻って来れて嬉しい気持ちでいっぱいです。ぜひ、ゆっくり鑑賞して行ってください。
インフォメーション
everyone presents VINCENT TSANG ‘GRATITUDE’ EXHIBITION
会場:DDD ART (東京都世田谷区代沢4-41-12)※会場では今回のために制作したマーチャンダイズも販売。
会期:〜2024年 12月11日(水)
時間:11:00~19:00(最終日は17:00まで)
展示に関するお問い合わせ
info@everyonetokyo.com
Instagram
https://www.instagram.com/ddd_art_/
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