ライフスタイル

いま、欲しいのはこんな時計。【後編】

What I want now is a clock like this.

2023年6月5日

レコードと時計。


photo: Masaki Ogawa
styling: Yusuke Takeuchi
text: Ku Ishikawa
2023年6月 914号初出

先輩方の部屋にお邪魔して時計を見る目を養ったなら、お次はいよいよ自分の番。
デザイナーは誰か、どんな歴史があるのか、家のどこに置いたら良さそうか。
洋服やインテリアと同じように、色々調べて、まずは自分なりの視点を持つことから始めてみようか。

6. 無機質なステンレスと有機的な曲線美が見事に融合。

MANUFACTURER : Georg Jensen
DESIGNER : Henning Koppel
TYPE : Alarm Clock
DESIGNED IN : 1978

デザイナーのヘニング コッペルは、彫刻の世界からプロダクトデザイナーに転身したという経歴の持ち主。ステンレスのシャープさの中に、不思議と有機的な曲線美が感じられるのは、それゆえだろうか。文字盤は小さな点のみ。フレームと針の関係性だけが印象に残るミニマルな世界観。¥18,150(nordic 日本橋☎080·4445·8331)

7.ミッドセンチュリーを体現する幾何学的なオブジェ時計。

MANUFACTURER : Vitra
DESIGNER : George Nelson
TYPE : Table Clock
DESIGNED IN : 1947

生涯に150以上の時計をデザインしたとされるマエストロ、ジョージ・ネルソンが作り出すのは、もはや時計というより彫刻作品。円形にくりぬいた木材に文字盤をはめ込んだ左のタイプも、幾何学的な三角錐を組み合わせて金属の棒で立てつけた右のタイプも、ウォールナットを自由に成形するミッドセンチュリーモダンの技術と発想が背景にある。ひと目でそれとわかる太めの時針は70年以上たっても色褪せないタイムレスな形状。アートピースと思って飛び込みたい。各¥72,600(ヴィトラ☎0120·924·725)

8.楽しげな文字盤は子供の教育用なのだ。

MANUFACTURER : Lemnos
DESIGNER : Yoko Dobashi
TYPE : Desk Clock
DESIGNED IN : 2018

子供の教育用に開発された「Fun Pun Clock」。その文字盤の構成は、例えば3時は15、という具合に、時針の12進法と分針の60進法の関連を示したもので、時間の概念を視覚化したデザインの妙が面白い。鉛筆モチーフの針や積み木のような色とカタチもポップで楽しげ。¥4,400(MoMAデザインストア 表参道☎03·5468·5801)

9.ずっと眺めていると、なんだか動き出しそうだ。

MANUFACTURER : Arne Jacobsen
DESIGNER : Arne Jacobsen
TYPE : Alarm Clock
DESIGNED IN : 1956

アルネ・ヤコブセンが1956年にルードブレ市庁舎を設計した際に作った時計をベースに、夕焼けのようなマットなオレンジの新色をオン。建築から小物までトータルにデザインした彼ならではの部屋にも馴染みやすいプロダクトで、ベッドサイドにポンと置けばペットのような愛嬌が。¥17,600(アイ・ネクストジーイー☎03·5496·4317)

10.メイド・イン・ジャーマニーのチープシックがこれ。

MANUFACTURER : Uhrenmanufaktur Schwarzwald
TYPE : Alarm Clock
DESIGNED IN : 2017

このところ携帯に頼りきりだけど、できれば朝は目覚まし時計でヘルシーに起きたい。寝ぼけて落とすことも考えて、欲しいのは質実剛健なチープシック。この〈ウーレン・マニュファクチュア・シュヴァルツヴァルト〉は信頼のドイツメイドで、現地のスーパーで売ってそうな雰囲気もいい感じ。¥3,960(ディテール☎06·6647·3101)

11.今こそ新鮮なフリップ時計を使う時が来たようだ。

MANUFACTURER : TWEMCO
DESIGNER : CL LAU
TYPE : Alarm Clock
DESIGNED IN : unknown

’80年代に電子式デジタル時計が普及するまで、置き時計の先端テクノロジーだったパタパタ式のフリップ時計。今や作れるのは世界に3社だけだそうで、こちらは香港の老舗〈トゥウェンコ〉のもの。改めて見るとかつてのSF映画に登場しそうな近未来感がなかなかクールなグッドデザイン。アラーム機能付き。¥16,500(ディテール)

12.床材で文字盤をくるり。素材はもっと自由でいいのだ。

MANUFACTURER : Landscape Products
DESIGNER : Landscape Products
TYPE : Desk Clock
DESIGNED IN : 2010s

床材に使われる「マーモリウム」で海苔巻きのように時計を巻いたこちらは、建物の内装も手掛ける「ランドスケーププロダクツ」ならではの発明。聞けば、アアルトのスツールの天板にも使われたリノリウムの一種だそうで、ビスで留めた繋ぎ目も相まってどこか北欧的な手仕事を感じる。¥16,500(プレイマウンテン☎03·5775·6747)

13.3Dプリンターで生まれる。民藝とポストモダンの折衷。

MANUFACTURER : 新工芸舎
DESIGNER : 新工芸舎
TYPE : Table Clo
DESIGNED IN : 2022

グラフィックによるアプローチではなく、現代的手法で新たな時計の可能性を示すのが京都の「新工芸舎」。FFF方式という3Dプリンターで樹脂を溶かし、一層ずつ積み重ねることで生まれるニットのような独特の編み地は、民藝の籠のようでも、ポストモダン的でもある。各¥13,200(新工芸舎