フード

【#3】学食の話。

2021年4月24日

料理

引き続きリヨンの学校の話です。

今回は学食の話。この学校には大きな食堂がありました。食堂にもシェフとセカンドシェフがいて、毎週1〜3学年の料理学科各クラスのグループが担当します。基本的にはシェフがメニューを考えていて、1グループ7人の生徒が400人前を11時半には用意します。

メニュー内容は前菜1品、主菜1品だけですが、料理学校なだけあって、レトルトや冷凍は一切使わず市場から仕入れた食材を使い、若い学生のためにボリュームはもちろん、見た目も綺麗な料理を仕上げなくてはいけません。

7時から厨房に入ってもなかなかハードですが、食べる側としては料理も美味しく、各グループの力量を観察できる昼食は学校生活の中でも有意義な時間でした。

2年生のとき、グループで学食のメニューを決め自分たちで調理を行う1週間がありました。

曜日ごとにテーマを変え、2人1組のペアを組んで各曜日の代表になります。

私のグループには韓国人の男の子がいたので、2人でインターナショナルな料理の曜日を担当することにしました。テーマはもちろんアジア料理。彼は主菜の照り焼きチキンと甘辛野菜焼きそば。私は前菜に巻き寿司をすることに。

前菜なので、なるべく軽やかな巻き寿司にしようと思いました 。日本食として卵焼きも人気だったので、付け合わせに卵焼きもすることに。

しかし問題は400人前。全生徒、先生、シェフ、事務員が食堂に集まり、国籍は30カ国以上、好き嫌いもある中で具材をどうするかとても迷いました。

色々と考えた結果、感覚として一口ライスサラダ巻き?のようなテイストにすることに。サーモンとクリームチーズ、サラダ菜とアボカド。

食堂の食事なのでもちろん予算は限られています。サーモンを頼んだ時点で私の食材の幅は確実に狭くなりましたがここは譲れない。

他の魚だと好き嫌いが分かれるし、甲殻類は下準備に手間がかかる。。。

卵焼きは一般的な作り方だとたとえ一口サイズでも時間がかかりすぎます。

困ったあげく土井善晴大先生に電話。大阪の味吉兆時代に、卵かまぼこを蒸し焼きにして作っていたと言います。

ということで大きなステンレスのバットに油をしき、生地を流し込みアルミホイルをかぶせてオーブンに入れ、ゆっくりと火を通す巻かない卵焼きをつくることに。

巻き寿司は朝一番に私がご飯を炊き、すし飯を作り、その間に他の人がサラダ菜を洗いアボカド、サーモンを切っていきます。具材が整ったらお米を乗せる人、具材を乗せる人、巻く人、切る人。という流れ作業をすることにしました。

主菜の準備もあるので7人全員は使えません。最小限に早いスピードで出来るよう工夫しました。

当日。割と上手くいっていると思っていたら、オーブンから卵焼きを出したら全部バットにくっついている笑 全く取れなくて驚愕。

シェフは何故バターを塗らなかったんだ!と激怒。

バターじゃバターの香りがつくから油だけにしたんだ!と逆ギレするヒカルドイ。

今思えばクッキングペーパーをひけばよかったのだけど。。。

その時先週の投稿でもお話しさせて頂いた友人ダニエルくんの登場。

これ外しておくから静かにせえ、とのこと。涙目ぴえん。

もちろん綺麗に剥がしてくれました。メルシーボクーすぎます。

巻き寿司チームに戻り一気に巻いていきます。あんなに巻き寿司を作ったのは後にも先にもこれが最後でしょう。

なんとか巻けた時、具材入れ係がみみっちかった為アボカドが異常に余っていました。。

シェフがそれを見てちゃんと量を考えろとまた激怒。

うるせー!と余ったアボカドを鷲掴みにして走り出すヒカルドイ。

ミキサーに全部ぶち込んで塩、醤油、オリーブオイル、レモンを入れてピュレにしてやりました。

ソースのように使えないかなあと思った突発的行動。

主菜の準備も忙しくなり、前菜の準備の時間はないに等しかったので、最後の盛り付けは私ともうひとりの2人でやることに。皿を400枚出して網に並べて一気に盛り付けていきます。

ただ並べるだけでは、皿に載せた巻き寿司セットになるので、フランス人が好きそうなデコレーションでどうにかしようともがきました。エディブルフラワー(食べられる花)とハーブのディルを添えていく。アボカドピュレもソースのように。バルサミコ酢も刷毛で皿に塗ってみました。

最初の思っていた時とは違う見せ方になりましたがなんとか完成。

結果的にとても美味しかったと高評価をもらえシェフの機嫌も取り戻せました。(反抗してそのままだったので一安心。)

料理を作ると一言でいっても、仕込みの時間、提供する人数、予算、料理人の数と技量、厨房の環境などで内容は常に変化します。

当たり前のことですがそれを痛感した学食の授業のお話でした。

写真は左上が今回のお話しした寿司前菜。右上が主菜の焼きそばとチキンです。

左下と右下はフランス家庭料理というコンセプトの日の前菜主菜。他の料理もたくさん思い出があります。笑

プロフィール

土井光

どい・ひかる | 1991年、大阪生まれ東京育ち。東京の女子大学卒業後、フランスリヨンにあるL’institut Paul Bocuseにてフランス料理とレストランマネージメントを2半学ぶ。フランス三つ星レストランMichel GuérardTroisgrosリヨンにある老舗チョコレート店 Bernachonに勤める。在仏7年。帰国後、父である料理研究家土井善晴の事務所、おいしいもの研究所でアシスタントとして勤務。料理デモストレーションのフランス語通訳やフランスと日本文化を繋ぐイベント参加なども行う。趣味はマラソン。インスタグラムはこちらから!

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