フード

“ほぼ天国”なテラスがある九品仏のパイショップ『Punk Doily』。

11月はこんなお店に行ってきた。

2022年11月30日

photo: Naoto Date
text: Eri Machida

ニューオープンやリニューアルして行きやすくなったお店、新メニューが出た老舗や最近やたらと友達が行っている店など、なにかと気になる飲食店を毎月紹介する連載。

 今月訪ねたのは、九品仏にあるパイショップ『Punk Doily』。オーストラリア出身の店主キフ・セイントさんが作った、ミートパイやステーキパイなど日本では珍しい食事系のパイがメインのお店で、営業日は土日のみ。お店は5年前からあるけれど、まるで天国のようなテラス席が9月に屋上にできたから、秋晴れの気持ちのいい昼間に行ってきた。

ミートパイ¥850、ステーキチーズパイ¥1,000、ソーセージロール¥600、アップルパイ¥400、アップルパイはイートイン限定で自家製カスタードクリーム(¥150)をつけてくれる。パイに使っているお肉は「ケープグリムビーフ」という良質な牧草だけを食べて育ったオーストラリアンビーフ。

 お店は住宅地にあるマンションの3階。入り口からはどんなお店があるのかまったく想像つかないけれど、階段を上がっていくうちにパイの香ばしい香りが漂ってきて、突如キオスクのようなこじんまりとしたお店が現れる。パイがずらりと並んだ売り場の先にはさらに階段があり、屋上に行くとキフさんが作ったウッドデッキの席が! 九品仏の住宅街と大きな空を見渡せる最高のロケーションに、パイやデザートを楽しんでいるお客さんたち。流れている幸せな空気に包まれて、この場所にいるだけで日帰り温泉に行ったのと同じくらい癒される。

 この日は、看板メニューのミートパイとキフさんおすすめのステーキチーズパイ、人気メニューのソーセージロール、季節限定のグラニースミスのアップルパイをオーダーした。欲張りすぎたかも、と一瞬不安がよぎったけどほのかに香るスパイスやハーブが食欲を刺激して完食。

 ミートパイとステーキチーズパイは、ほんのりあたたかく、半分にカットすると中から溢れんばかりのお肉が。玉ねぎやニンニク、グレービーソースなどでしっかり煮込まれているけれど、お肉の食感はしっかり残っていて食べ応え抜群。

「7〜8種ほどあるパイは、具材や調味料、生地の包み方がそれぞれ違って、調理に時間がかかる。だからオープンは週末だけなんだ」とキフさん。何気なく話していたけれど、手間を惜しまない覚悟がよく伝わってきた。

 現地の味を届けようという熱意は食事だけではない。クラフトビールやクラフトサイダーなどのドリンクもオーストラリアで作られたもので揃えている。ビールだけでも14種類、コーヒーもラテやカプチーノ、ロングブラックなど種類豊富で悩んでしまうけれど、まずはお店自慢のフラットホワイトを。エスプレッソにきめ細やかなスチームミルクを合わせた、オーストラリアやニュージーランドでは一般的なドリンクで、9月に導入したばかりの〈スレイヤー〉というエスプレッソマシンで作ってくれる。「東京でいちばんクリーミーで美味しいフラットホワイトを目指しています!」と笑いながら話すキフさん。練習を重ね、マシンを最大限に活かしているから、一口目からエスプレッソのコクがダイレクトに感じられた。

テラスは入り口からは想像がつかないほどお客さんがいて、週末特有のリラックスした雰囲気で包まれている。外国人のお客さんが多く、そばにいたカップルは2人ともニュージーランド出身で、日本に住むニュージーランド人の中では母国の味を味わえることで有名だと教えてくれた。

 選び抜いた故郷の食材を使い、時間を惜しまずに作る料理はストイックだけど、お店の雰囲気はどこまでもラフで気取っていない。土日しか開いていない開放的なテラスで、美味しいコーヒーとミートパイを食べたら、スペシャルな週末になること間違いなし。あったかくして行ってみてほしい。

インフォメーション

punkdoily

Punk Doily

2017年のクリスマス直前にオープンしたオーストラリア・ニュージーランドスタイルのパイショップ。店名は、「パンク」と「ドイリー」(上品なレースの敷物)という相反したものを組み合わせた造語。キフさんが店名を迷っていたときに夜中目覚めて突然ひらめいたらしい。

◯東京都世田谷区尾山台3-28-21 3F 土〜日11:00〜17:00 月〜金休

Instagram
https://www.instagram.com/punkdoily/