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【#3】崇敬神社での誓い

2022年11月28日

manga & photo & text: Yuuki Nara
edit: Yukako Kazuno

住んでいる地域の氏神様が祀られている神社は氏神神社。対して、地縁などとは関係なく個人の思いなどで信仰し崇敬される神社を崇敬神社と呼ぶそうです。

それを知ったのは最近のこと。でも実は10年ほど前から、僕には定期的に参拝し続けている崇敬神社があります。それは東京都台東区の入谷に鎮座する小野照崎神社。

小野照崎神社。小野篁公、菅原道真公をお祀りする神社で、芸能・学問・仕事運にご利益があるとされています。

キッカケは、2013年4月頃。会社を辞めて1年、仕事もそれほど多くなく、各社へテレアポしてはポートフォリオを持って営業に飛び回る日々を送っていました。

電話しても門前払いは日常茶飯事、なんとかアポを取り、持ち込み営業に行けても、当然すぐには仕事につながらない。そんな日々に、「このままじゃヤバイ……会社辞めたのは失敗だったのか?」なんて、持病のようなネガティブが発症しそうになった時、仕事場で流れていたラジオから気になる話が聴こえてきました。

それは「男はつらいよ」の寅さんこと渥美清さんのエピソード。まだ全然仕事がない駆け出しの頃に、神社で神様に「大好きなタバコをやめるから仕事をください!」と願掛けをしたところ、程なく「男はつらいよ」主演の依頼が来たのだとか。その神社は小野照崎神社、今では芸事を志す人たちに人気のパワースポットになっていると、ラジオパーソナリティが紹介していました。

僕は「これだ!」とすぐに小野照崎神社へ参拝に向かいました。でもここで問題が。当時、僕はすでにタバコをやめて2年以上経っていたのです。「こんなことならヘビースモーカーのままでいれば良かった! じゃあ何をやめる? まさか人間? いやそんなことはできない!」 なんて考えた結果、当時(特に会社を辞めてから)毎日のように飲んでいたお酒をやめようと、小野照崎神社の境内で決めたのでした。

「今後お酒を一切飲みません! だから僕にもっとたくさん仕事をさせてください!」

そう願掛けをした帰り道、鶯谷駅前の艶めかしいホテル街を歩いていると電話が。なんと某出版社からの連載の依頼でした! これウソのようなホントの話です。

それから9年半以上。僕はお酒を一滴も口にしていません。…と言いたいところだけど、ノンアルと間違えて妻のビールをひとくち誤飲、すぐ吐き出したなんてことはありました。あと料理にもお酒は入ってる場合あるし……。とは言え、神様もそのくらいは大目に見てくれているのか、今も漫画家・イラストレーターとして、毎日なんとかやれています。

余談ですが、断酒してからちょっと気になる事象が。それは家族で外食に行くと必ずと言っていいほど発生します。

目の前にキンキンに冷えた生ビール……。もしかしたら、神様が僕を試しているのかもしれない! なんて考えながら、スッと生ビールを妻に差し出すのです。

今年も残りわずか。年末までには、崇敬神社に日頃の御礼参りに行くつもりです。

プロフィール

奈良裕己

なら・ゆうき | 漫画家・イラストレーター。印刷会社、広告制作会社の営業マンを経て2012年に独立。以来、雑誌・書籍・Web・テレビなどジャンルや媒体を問わず幅広く活動中。著書に『印刷ボーイズ』シリーズがある。趣味は筋トレ。

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https://bomanga.com