カルチャー
【#2】『黒人音楽史』番外篇——アルバート・アイラーと末井昭の奇妙な関係?
2022年11月19日
text: Mamoru Goth-O
edit: Ryoma Uchida
11月9日にインタヴューを受けました。
『黒人音楽史 奇想の宇宙』という私の二冊目の本が出たので、それについてあることないこと(?)色々お話ししたのでした。
その内容は『DOZiNE(旧:HAGAZINE)』という魔術的で尖がったアングラカルチャーを扱う媒体に12月頃に掲載予定ゆえ、後日ご覧いただければ幸いです。
それよりなにより、聞き手がなんとケロッピー前田さんだったのです! TBSの『クレイジージャーニー』で有名な身体改造ジャーナリストの御方ですね。2、3年前、文学フリマで私が出店している機関精神史ブースに遊びに来てくださって、そこからのご縁。
というわけで凄い人なのでインタヴューのつもりが逆インタヴューのようになって、ケロッピーさんから色々な話を聞きました。実はライターになる前、白夜書房に編集者として勤務していて、千葉大学工学部に行ったのは荒木経惟さんに憧れたからだとか。
伝説的エロ雑誌『写真時代』でのアラーキーとのタッグで有名な元白夜書房・末井昭さんの話も。若かりし頃の末井さんが自らの肉体に赤いペンキを塗りたくってストリーキングをやったのは、偶然にも三島由紀夫が割腹した1970年11月25日だった…というエピソードは映画『素敵なダイナマイトスキャンダル』を観た方ならご存じかも。
ただこの日はフリージャズ界最大の天才サキソフォニスト、アルバート・アイラーがニューヨークのイーストリバーで変死した日でもあるのでした——「だから末井さんはその偶然に霊感を受けて、ペーソスでいまだにサックスを吹いているのだ!」というケロッピー説には「目から鱗5億枚!!!!!!」(宇川直宏)でした。
ちなみに末井さんが最初に買ったサックスはアイラーと同じテナーだったりします。1970年11月25日こそ、アメリカ黒人音楽史と日本エロサブカル史のクロスオーバー(?)が切腹的に切り開かれた記念すべき瞬間だったのかもしれません。
さらにケロッピーさんからお土産に『モドゥコン・ブック 増補完全版』という身体改造の猛者たちのレポート本や、ケロッピー前田+剛田武『Electric Tjurunga』、GGSB『Farm to Farm』などハードコアなCD二枚を賜りました。何を隠そう、ケロッピーさんは音楽家でもあり、ツァイトリッヒ・ベルゲルダーという日本初のインダストリアル・バンドのドラマーだったこともあるのです(『鉄男』をはじめ塚本晋也監督作品の殆どの映画音楽を手がけた故・石川忠さんがいた伝説的バンド)。
そしてこのバンドは前回連載で扱った楠本まきさんが大好きだったトランス・レコード所属で、なおかつインダストリアルはゴスの近接ジャンル(ノイバウテンを見よ)…という感じで緩やかに一回目と接続しておしまいです。
プロフィール
後藤護
ごとう・まもる|1988年、山形県生まれ。暗黒批評、映画・音楽・漫画ライター。著書に『ゴシック・カルチャー入門』(Pヴァイン、2019年)、『黒人音楽史 奇想の宇宙』(中央公論新社、2022年)。魔誌『機関精神史』編集主幹を務める。Real Sound Bookにて「マンガとゴシック」を連載中。
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