TOWN TALK / 1か月限定の週1寄稿コラム
LIFESTYLE

【#1】オノマトペが似合う植物

2022.11.10(Thu)


photo & text: Ushio Yoshida
edit: Yukako kazuno

 2年前にさかのぼる。
「週刊新潮」の連載を始めて、10年がたった。編集部の担当Aさんからお祝いをいただいた。素敵な花束に限定販売の日本酒・亜麻猫、そして贅沢なチーズ盛り合わせ。美酒と美味に舌鼓をうった。

いただいた日本酒・亜麻猫とチーズと花束。床に置いて撮る無礼。

 その花束の中に、多肉植物が1本。コップの水につっこんでおいたら、みるみる、グングン、メキメキ育った。大きめの植木鉢に植え替えて、ベランダに出したところ、横にも縦にも育ちまくった。驚きの生命力。

この右下の多肉がまさかの成長を遂げることに…。

 本来、多肉植物が縦に伸びるのは、あまりよろしくないとされている。「徒長」と言うらしい。いたずらに伸びて長くなると、病害虫の被害に遭いやすいのだとか。縦に伸びるだけでなく、隙間という隙間にモリモリ&ぶりぶりと生えてきて、多肉植物らしい可愛さよりも、ややホラー感が。

 以前、NHK BSプレミアムで、田口トモロヲ主演の『植物男子ベランダー』という番組が放送されていた。その中に「多肉 愛の劇場」というミニドラマがあったことを思い出す。登場人物は多肉植物。それぞれの品種の特性を擬人化して、人気の声優が盛り上げる愛憎劇だ。変色や徒長、寄せ植えなども物語に落とし込み、多肉植物の知識が満載の作品だった。あのドラマに我が家の多肉を登場させるとしたら、完全に悪役。モンスターというか、ゾンビレベルのモブキャラとしても活躍できるに違いない。

ミニ大根と小ネギ、冬。味噌汁の具はベランダで揃う。豆腐はさすがに買うけれど。

 肥料も水もほとんどやらないのに、もこもこ繁殖してゆく。多肉の植木鉢は増える一方。基本、我が家のベランダでは「食料」になる野菜しか育てていない。苺、ミニトマト、パクチー、小ネギ、ミニ大根、実がなるかどうか怪しいキンカン。水やりに摘芽、虫よけなどのケアがそれなりに必要な野菜に比べて、多肉の手のかからなさったら!

 切っても切っても枯れず、横に広がり、縦に伸びていく。多肉植物の本来の持ち味(小ぶりで肉厚で可愛らしい)を超越し、なかば野生化。まさかここまで繁殖するとは思ってもいなかった。グングン、メキメキ、モリモリ、ぶりぶり、もこもこ……こんなにオノマトペが似合う植物、他にないよね。

 連載が続く限りは、共に生きようと決めたものの、ベランダが多肉だらけになることを想像するとぞっとする。そろそろ里子に出すべきかもしれない。

プロフィール

吉田潮

よしだ・うしお|1972年生まれ。法政大学法学部政治学科卒業。編集プロダクションで健康・美容雑誌の編集を経て、2001年よりフリーランス。テレビドラマ評を中心に『週刊新潮』『東京新聞』で連載中。『週刊女性PRIME』『PRESIDENT Online』などに不定期寄稿。NHK『ドキュメント72時間』の「読む72時間」(Twitter)と「聴く72時間」(Spotify)を担当。介護や家族問題、マンション理事会も鋭意取材中。トレースイラストも描く。

Official Website
yoshidaushio.com

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