ライフスタイル

シティボーイのための宴会芸。Vol.8

2022年9月5日

photo: Kyuseishu & Ganjiro Hanayama
text: Michael Mitarai 
edit: Yukako Kazuno

のらくろロック

のらくろロック

「のらくろ」というキャラクターを知っているだろうか。1931年に連載を開始した、日本の漫画キャラクターの元祖とも言われる野良の黒犬だ。「のらくろロック」は、その「のらくろ」が誕生から半世紀を経た80年代後半に謎の大ヒットを飛ばしたおもちゃ。シックなアンティークショップで見かけたことがあるシティボーイも多いんじゃないかな? 手拍子に合わせて得意のブレイクダンスを披露するというんだから、なかなかクールだよね。

そんな、のらくろロックになり切るのがこの宴会芸。タイトな黒の上下でシックにまとめて、手足にはいつもの白靴下を装着。文献には「髪をポマードでかためてのらくろの耳を作ってみよう」なんて書いてあったけど、あいにくポマードがなかったのでつけ耳で代用した。毛量に自信のある人はぜひ”毛髪製の耳”にチャレンジしてみてほしい。なんというか、グッと迫力が増すと思う。

この宴会芸の起源については宴会芸学会の中でも考えが分かれている。「子どものおもちゃになりきる」という発想はかなりクレイジーだよね。おもちゃ会社がプロモーションのために仕掛けた、なんていう説もあるくらいだ。でも僕は、ちょっぴりロマンティックなこの説を支持したい。

【バースデープレゼント説】
1987年、夏。東京の郊外にあるニュータウンの子供部屋。小学校低学年の男の子が泣いている。今日、男の子は誕生日プレゼントにのらくろロックをもらうはずだった。ずっと楽しみにしていた。でも、父親が買ってきたのはただのぬいぐるみだった。「おもちゃ屋、何軒も行ったけどどこも売り切れだったんだ。」父親は申し訳なさそうにぬいぐるみを横に振った。当時はAmazonも楽天もない。おもちゃ屋の在庫がすべて。売り切れたらどうしようもない。誰も悪くないのは分かっている。でも、どうしようもなく悲しい。今頃、僕はのらくろを思いのままに踊らせているはずだったんだ!

その時、静かにドアが開いた。そこには、のらくろの格好をした父と、片膝をついた母がいる。無言の母の手拍子に合わせて、父は踊った。何度も、何度も踊った。もちろん、男の子は全然泣き止まない。やめ時を失ってそのまま踊り続ける父。母の手拍子と、男の子がしゃくり上げる声だけが夜の子供部屋に響く。「やっぱりダメか…」父は思った。

「でも、明日の宴会芸には使えそうだ。」

プロフィール

マイケル御手洗

マイケル・みたらい|1986年生まれ。日本宴会芸学会研究員。専門は宴会芸哲学。2018年に開催された第74回日本宴会芸学会で「特別講義:マイケル御手洗の宴会芸白熱教室」を開講。カントやベンサムを引用しながら“宴会芸における正義とは何か?”を語り掛ける、ナラティブでプラクティカルな講義を繰り広げ、宴会芸研究に新しい地平を切り開く。今夏はサブカルチャーの祭典「コミケ100」にも参加した。

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第74回日本宴会芸学会「マイケル御手洗の宴会芸白熱教室」講義録
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日本宴会芸学会のオリジナルTシャツ
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