トリップ
【#2】シティボーイ、はじめて1人でバーに行く。
2022年8月19日
text: Takashi Miyata
edit: Ryoma Uchida
先日発売になったPOPEYE(ポパイ) 2022年 9月号の表紙には『シティボーイ、はじめて1人でバーに行く。」という言葉が踊っていた。「ふふっ」、少し笑いながらページを読み進める。
現在44歳の私にも20歳の頃はあり、その時むさぼるように読んでいたのがPOPEYEだった。横浜で生まれ育った少年が東京の大学に通い出し大人に変わるためには、POPEYEは必読の書であった。今は旅人の必読書『地球の歩き方』を束ねる立場になったが編集者のはしくれとして、世に出る雑誌や新聞、紙で刷られたもの、話題になったウェブ記事、SNSは仕事としてひととおり目は通す。だが1冊1冊、少年から大人に変わるあの時のように読むことはなくなった。悲しいが時間は有限なので読み切れないのが現実である。
今回8月のコラム依頼を受けた際、大人から初老(40歳を世間は初老と言う)になった私にとって卒業した雑誌POPEYEと25年ぶりに向き合う(流し読みはもちろん今もしているが)。子供が寝た23時から明け方まで、ひと文字も漏らさず、当時の情熱を思い出して読み込む。19歳の私なら1週間はカバンの中に入れっぱなしで行き帰りの電車の中で開いたし数ヵ月後、数年後に書棚からひっくり返して読み返すこともあったので、それに比べれば、読み込んではいないが……。
いいね、青春。
少年は大人になろうとしている努力を悟られずに大人になりたいものだ。POPEYEは寄り添った言葉で少年の尊厳を尊重しつつ大人にしようとしていた。相も変わらず、25年経ってもPOPEYEは少年にとっての兄貴であることに懐かしさというか、ありがとうというか、集約したセリフが冒頭の「ふふっ」となる。
はじめて1人でバーに行ったシティボーイはいつかパートナーをお気に入りのバーに連れて行くことになる(POPEYEの兄貴もそう願っているはずだ)。バーに行く前にスマートにデートする際、意外と知られていないのが女性向けのガイドブックや雑誌を参考にしたほうがよいということ。今話題の街、スポット、お店は意図的に入れたほうがよい。話題の場所には誰だって行きたいのだから、相手が誰であっても……、いや、そんなことはないか。
例えば、『女子の女子による女子のためのガイドブック』でarucoというシリーズがある(ライター、カメラマン、デザイナー、プロデューサー、スタッフ全員女子)。東京版はもちろん、東京で楽しむ海外(韓国、台湾、フランスなど)やテーマ別(パン、カフェ、おやつなど)、東京だけで14のテーマに分けて発行している。これが、女子の欲望を叶えるための情報がギュギュっと凝縮されている一冊なので面白い。東京でシティボーイになるには、女子向けの書籍やSNSも研究しておくと会話も弾むし共通の話題で盛り上がる、そして、ちょっとモテるかもしれない。
がんばれ、青春。
プロフィール
宮田崇(旅行ガイドブック『地球の歩き方』編集長)
地球の歩き方とは、1979年に発刊した老舗の海外旅行ガイドブックで観光地の見どころやグルメだけでなく、歴史や文化、食、マナーや言葉まで、そのエリアをきちんと知るための情報が網羅されている。語学が苦手な日本人でも、この1冊で日本の空港から旅立たせ、再び無事日本の空港へ帰すことを信念に作られているので、旅人に寄り添った作りになっていることも特長のひとつ。
スマホ時代の現在、旅人に必要な情報まで最短でたどり着かせる『検索結果の集合体』と言われることがある。
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