ライフスタイル

【#1】年下のバディ

執筆: 二見彰(流浪堂)

2021年11月9日

text & photo: Akira Futami
edit: Yukako Kazuno

 ぼくには41歳下のバディがいる。最も信頼を寄せている友人夫婦の一人息子だ。

彼の名はりんたろう。いつからかぼくのことを友だち、もしくは片腕と思っている。そう思われてこちらも満更ではない。きみがこの世に生まれてからの長い付き合いだ。なんとなく心通じるところがあるし、心地よい。スターウォーズでいえば、ソロとチューイだ。会えば常に横にいる存在。近い将来離れていくのは決まっているが、今は紛れもなくバディだ。

その彼が今夢中なのがトランペットだ。はまった理由は、ガンダム・サンダーボルトの劇中で流れる菊地成孔氏のジャズに痺れたからだ。小学生で、あのブッとんだ格好良さがわかるなんて大したもんだ。

そして先日、ドラムをやっているぼくと二人でスタジオに入った。初めてのセッションは、まあ当然だがそんなに簡単にうまくはいかない。

初めて耳にする生ドラムの音に驚き、そのでかい音に引っ張られ、演奏どころではなくなってしまう。「おれが合わせるから勝手に吹いてな」と言ってもすぐにやめてしまう。

彼のレパートリーである茶色の小びん、アメージング・グレイス、他にも数曲やってみたがどれも同じ結果。そりゃ個人練習しかしてないから当たり前だ。

それでも果敢に挑戦し、残り数分のところで、一曲だけひと回しドラムと合わせることができた。何度もできたし、まぐれじゃない。これだけでも上出来。お互い顔見合せてニヤリだった。

またやろうぜと約束し、二人秋の夜道を、体ぶつけ合い組んず解れつし歩きながら、ぼくは胸中で彼に語りかける。

りんたろうよ。この先の人生、ひとりで立ち向かうには大きすぎる困難や障壁が何度も現れる。それを越えるにはきっとセッションが必要になる。リスペクトしあえる仲間と一緒に、形に囚われず自由に思うまま、道や地図を作り上げる作業だ。迷ったら、ソロとチューイのセッションを思い出せ。自分の音も相手の音も殺さず、ゆっくり擦り合わせていくんだ。いいかい?

41歳上の、きみのバディより

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プロフィール

二見彰(流浪堂)

ふたみ・あきら | 2000年創業の東急東横線・学芸大学駅近くの古書店。11/14日(日)まで、佐久間露涓 個展「析出」開催中。

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木曜定休

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