カルチャー
【#1】かみしらいし、の話。
2021年9月10日
text: Moka Kamishiraishi

上白石萌歌と申します。
かみしらいし。病院の待合室でなるべく呼ばれたくない名字。受付のお姉さんはちょっと言いづらそうだし、呼ばれた途端ムムッとその場の空気がざらつく。私は背中をちょっと丸め、そそくさと席を立ち、なるべく洗練された所作を心がける。私こそが上白石であり、上白石以外の何者でもない。たぶん同じ名字を背負った姉も同じような思いをしてるだろう。
鹿児島で生まれ育った私は、上京するまで自分の名字を珍しいと思ったことは一度もなかった。なぜなら、鹿児島には3文字名字の人がとても多い。私よりももっと複雑な名字のクラスメイトは沢山いたし、上白石なんて、白石に上がトッピングされただけの、いたってシンプルな名字だと思っていた。
だが上京してから一転。転校先の東京の中学校ではかなり珍しがられ、「カミシライシってかっこいい!」「いままで出会ったことない!」と新しく出会うクラスメイトたちにことごとく賞賛された。体操着の左胸に刺繍された”上白石”の3文字はいつしか私の誇りとなり、これまでこの名字を受け継いでくれたご先祖さまに心から感謝した。
ただ、長い。かみしらいし、長い。1番困るのはアルファベットで書くときだ。
Moka Kamishiraishi 。
shi が2回も出てきちゃうから、英語のテストの時なんか、周りの人たちが既に1問目に取り掛かっている時にやっと名前を書き終える。上白石ハンディキャップが存在してもいいのに!と今まで幾度となく思った。あと、カミシライシさん ってやっぱり呼びづらいらしく、取材していただく記者の方やドラマのスタッフの方はいつも「カシラッシさん」って感じでちょっと申し訳なさそうにしている。高校の時は”カミシ”とか”カミシラ”とか、中途半端に略されてたなぁ。いいのです、好きに呼んでください!
こんなに自分の名字をまじまじと見つめ直したのは初めてだ。思えば私は結構上白石人生を謳歌していたし、この名字を気に入っている。名前はアイデンティティの象徴。これからも上白石っぽく、胸張って生きます。
プロフィール
上白石萌歌
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