From Editors
Another London.
NO.954
2026年9月8日
今回の特集でライターとコーディネーターを務めた手塚です。
普段はロンドンで洋服のデザイナーとして働いています。
高校を卒業してから修行のためあちこちで暮らしてきたけれど、気づけばこの街に腰を据えて5年目になりました。
自然とシティのちょうどいいバランスがとにかく居心地いいロンドンだけど、頭を悩ませるのはやっぱり物価の高さ。パブでビールを1杯飲むだけで1,800円もするのが当たり前。
便利なコンビニがないからこそ生み出される暮らしの知恵や工夫を持っているのが、ロンドンのシティボーイたちだなと思います。自分で料理を作って友人と食べたり、家にあるものを大きな公園に持ち寄って、小さなピクニックを始めたり。パブで飲む代わりにスーパーの缶ビールで乾杯するような工夫1つで、ただの芝生が最高の溜まり場に変わります。
どこかへ出かけなくても、みんな遊ぶ天才なんです。
日本から見ているだけじゃわからない「住んでみて初めて見えてくるリアル」が、この街にはたくさん転がっています。
だからこそ今回の特集では、そうした等身大のロンドンを少しでも詰め込めたらいいなと思いました。
会社の同僚たちは若くても真面目にお弁当を作ってきていて偉いなぁと思うけれど、朝にめっぽう弱くて1人暮らしの僕は「昼くらいは外の空気を吸いながらうまいものを食べたい」と、ついつい街へ繰り出してしまいます。
物価高と騒がれるロンドンにだって、探せば「安くて、びっくりするほどうまいもの」はちゃんと存在するんです。特に、多様な移民が行き交うロンドンのマーケットは本当にエネルギッシュ。足を踏み入れれば、当たり外れも含めて愛おしい果物たちが並び、1ポンドでアボカドが3つ買えたり、5ポンドで本格的なビリヤニやラムカレーが味わえたり。
すっかりハマっているマーケットのインド料理店には、いつもマイタッパーを持って行って容器を使わずに入れてもらうのですが、ゴミも出ないし少し安くもしてくれる、僕にとっての「ロンドンのワンコインランチ」です。それを持って公園の芝生へ直行するのが、僕の定番のお昼の過ごし方。
絵はがきみたいなロンドンだけではなく、僕らが日々汗をかき、お腹をすかせ、工夫しながら暮らしを楽しんでいる「もうひとつのロンドン」。誌面を通して、その日常の熱量が少しでも届いたらうれしいです。
(ライター、コーディネーター)手塚凛太郎
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