カルチャー

僕らが観てきた映画のABC。/A24

Tシャツで振り返るA24の映画。

2025年11月26日

良い作品を紹介するためなら、ポパイは手段を選びません。今年もやります、映画のABC!
現代の映画を語る上で欠かせない話題から、あまり重要じゃないトピックまで、余さずご紹介。
25年をざっくり振り返ろう。アルファベットはこじつけでも、載ってる作品は間違いないよ!

言わずと知れたA24。
その歩みを〈ONLINE CERAMICS〉の
歴代コラボTで振り返ろう。

 年々存在感を増し続け、今や映画好きで知らぬ人はいない「A24」。かつては小さな独立系レーベルだったけど、世紀を代表する映画製作会社に成長した。そんなA24とともにあったのがご存じ〈オンライン セラミックス〉。ブートで作った『ヘレディタリー』のTシャツが後に公式化というエピソードを持つ彼らは、ロサンゼルスのスタジオで手染め・手刷りを続け、作品の持つ空気をタイダイの色や歪んだ文字で可視化。オンラインショップはありがたいことに日本まで配送してくれるってことで、映画の世界をぼくらの日常へ引き寄せてくれた。衣替えで半袖を全部クローゼットの奥にしまっちゃう前に、今日は並べて見つめ直して、いろんな映画を思い出してみよう。確かに思い出される感動の数々……いや恐怖の割合がちょっと多め。しかし11枚も並ぶとなかなか壮観!

WHAT'S “ONLINE CERAMICS”?

共にアーティストのアリックスとイライジャによって、ロサンゼルスで2016年に創業。タイダイ染め、コラージュ、モチーフやワードのセレクトなど、唯一無二の感性が光る。「A24」とのコラボを機に、〈マークジェイコブス〉〈カシオ〉など世界的なブランドと協業を果たす。

©Alamy Stock Photo/amanaimages 

ミッドサマー/2019
アリ・アスター

日本でも話題を呼んだ「明るいホラー」。恋人に誘われスウェーデン奥地の村を訪れたダニーは、奇妙な儀式に不穏な空気を感じ始める。少しずつ仲間が減っていくのはよくある展開ながら、経緯が省略され、悪夢的な大惨事の「結果」だけが次々映されるのが怖い。プリントされたテキストは「最も明るい光は最も暗い影を落とす」の意。

スプリング・ブレイカーズ/2012
ハーモニー・コリン

A24初配給作品のひとつ。退屈な生活にうんざりした4人の女子学生、刺激を求めて銀行強盗! というアブない青春映画だ。新しい世界に踏み込む恐怖と緊張、乗り越えた先の危険な快感や虚しさなど、この夕景に全部詰まってる。ピンクの目出し帽も売って!

ウィッチ/2015
ロバート・エガース

17世紀ニューイングランド。森の奥で暮らす一家に次々と災いが起こり、娘は魔女だと疑われる。主演アニャ・テイラー=ジョイは本作で大きく出世。今じゃ『マッドマックス:フュリオサ』の主演も張って大人気なわけで、古参ファンだとアピールするには最適の一枚。

『ヘレディタリー/継承』/ 2018
アリ・アスター

悪名高きホラー作家アリ・アスターを世に知らしめた一作。祖母の死後、不可解な事件に見舞われる一家を描く。惨劇をスタイリッシュに見せてくれるのが楽しい。表面には静謐な棺のショット。そして背中側にはあの電柱という、映画を観た人にはわかる悪趣味っぷり。

Everett Collection/アフロ

MaXXXine マキシーン/2024
タイ・ウェスト

『X エックス』3部作完結編。「テキサス・ポルノスター・マサカー」こと1作目の大虐殺を生き延びたマキシーンは、またしても連続殺人事件に巻き込まれ、またしてもかなり善戦! 彼女のモンスター性、いやスター性を表現した前面デザインはもちろんのこと、「ハリウッドじゃみんな成功するために必死」と記された背面が良い。

セイント・モード/狂信 2019
ローズ・グラス

敬虔なクリスチャンのモードが住み込み看護師として派遣されたのは、余命いくばくもない有名ダンサーのもと。献身的に働くモードは徐々に異常な振る舞いを見せ始め、やりすぎモードに。ジャンプスケアなしの上質なホラー。ステンドグラスを模したプリントも上品。

グリーン・ナイト/2021
デヴィッド・ロウリー

『ア・ゴースト・ストーリー』のデヴィッド・ロウリー監督作品。若き騎士ガウェインは、自らの勇気と名誉を示す旅に出る。原作はなんと14世紀イングランドの作者不詳の物語。7世紀の時を隔てて映画化&Tシャツ化って、これもなかなか壮大な話だ。

X エックス/2022
タイ・ウェスト

1979年テキサス。ポルノ映画撮影のため農場を訪れた若者たちは、撮影を覗き見た老夫婦に襲われる。Tシャツ前面には切ない顔で窓を覗くパールおばあちゃん、背面はその窓から見える撮影風景ということで、切り返しショットを表現したシネマティックな一枚。

Pearl パール/2022
タイ・ウェスト

『X エックス』と同年製作の前日譚。田舎で暮らす少女パールが、スターの夢破れて、暴力に手を染めるまでを描く。古き良きアメリカ映画のコッテリした質感を再現した一作だけど、両面のデザインにその精神の継承を感じる。この顔を見るとエンドロールを思い出す。

TALK TO ME トーク・トゥ・ミー/2023
ダニー・フィリッポウ&マイケル・フィリッポウ

YouTuber出身監督が撮ったオーストラリア製オカルティックホラー。母を亡くした女子高生ミアは、SNSで話題の「#90秒憑依チャレンジ」に友人と挑戦。大きくプリントされたカンガルーはオーストラリアの象徴だけど、劇中のカンガルーの使い方もなかなかうまい。

愛はステロイド/2024
ローズ・グラス

ジムで働くレズビアンのルーは、ボディビルダーのジャッキーと恋に落ち、やがて血にまみれた犯罪に巻き込まれていく。クリステン・スチュワートが美しい前面も良いが、背面に記された「MURDER(殺人)」「SEX(性)」「MUSCLES(筋肉)」の勢いに思わず笑う。