TOWN TALK / 1か月限定の週1寄稿コラム

【#1】ツリーハウスレインボー

執筆:二名良日

2025年9月13日

 従来の元文部省キャンプというと、青年の家などに行き、日の丸に向って国家(校歌)を斉唱、キャンプファイヤーをやって、一泊して帰る……というようなイメージが強かったが、’80年代の後半に、『大自然に出かけ、長期滞在しよう!』という大変革があった。

 その「冒険キャンプ」新事業を立ち上げるに当り、都道府県単位の「実験キャンプ」が呼びかけられた。そのときに唯一、一般市町村でありながら、大阪のIKD市が「どうしても、やらせてほしい‼︎」と、熱心に手を挙げ、仲介を依頼され、特別許可がもらえて、6泊7日のIKD市「チャレンジキャンプ」が、猪名川の源流にある99万平米といわれる、広大な里山キャンプ場でスタートした。キャンプ場とは名ばかりの、手つかずの里山を、各班ごとに切り拓き、10ヶ所ほどのテントサイトを開拓。各テントから、傍の樹上に階段を作り全員集合できる、真ん中の大木上のツリーハウスまで空中回廊で繋ぐ大作業を、全員で、全力で、やり遂げた‼︎ 

 寝る前の夜廻(まわ)りを始めたら、中央のツリーハウス下のテントの女子中学生達が、「二名(フタナ)リーダー! 月が出ているのに、雨が降ってくるんですけどォ……」と、首を傾げながら訴えてきた……。「そんなワケ無いだろう?!」と、樹上を見上げると、月影をバックに、3人のデッカイ大学生女子リーダーが、昔のお婆さんの様に、ツリーハウスのデッキから、立ちションをしているのが、月影のシルエットの中に、ハッキリと見えた‼︎

「この雨、ナンカ臭い……」と、男子小学生がボヤキだしたが、「チャックを閉めて、早く寝ろ‼︎」と、ナゼか怒鳴って命令し、雨=ションベンの真実は、ナゼだか言わなかった。咄嗟の判断だった(?)翌朝、3女子を呼び出し、説教したら、「夜なので……、長い空中回廊を廻って……、高い階段を降りて行くのが……、恐くって……」と、何故かチョット笑いながら、何度も誤った。今は、3人共、大企業の、リッパな役付き社会人になっていて、会う度に“立ちション”ネタで誂(からか)うのだが、「もう止(や)めて下さい!!!」と、毎度、咳込む程に、思いっきり叩かれる!!! 夜なので、「ツリーハウスレインボー」は見られなかったが……、“ツリーハウスレイン”には、呉々も注意するように!!! 後輩達に、シッカリと、伝承していきましょう!!!

マイクでキャンプの概要を説明しているのが二名さん。

プロフィール

二名良日

ふたな・よしひ|1943年、愛媛県生まれ。早稲田大学文学部探検部に入部。冬期のアラスカベーリング海峡徒歩横断調査や、中央アジアシルクロード5万キロ横断調査など国内外を探検する。知床で熊と格闘、極冬のベーリングをバタフライで泳ぐなど数々の伝説も残したのち、NPO法人〈地球野外塾〉を設立。現在は「関西アウトドアーズスクール」校長として、無人島サバイバルキャンプ、川下り、子供の遊び場、ツリーハウスの企画・制作に携わる。ちなみにPOPEYE黎明期に、アウトドア関連の記事を多数寄稿。

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