ファッション
ビルケンシュトックって何かと尋ねられたら?
BIRKENSTOCK
2025年9月20日
text: POPEYE
今年の夏は予想通りに暑く、近所のお祭りに集まった知り合いの足元はそのほとんどがビルケンシュトックだった。普段あまり人の足元を気にして見ていないこと、それとつい先日、ドイツまで行ってビルケンシュトックの工場を見てきたばかりだったので余計に気になった。この人たちのビルケンシュトックのほとんどはあの遠いドイツからやってきたはずだ。
メイド・イン・ジャーマニー。
ドイツ生まれでいまだにドイツ生産。こういうのって意外と珍しいんじゃない? はじめてのニューヨークでクライスラービルを見上げ、アメリカって本当にあるんだな、ってバカみたいな感想を持ったけど、ドイツにあるビルケンシュトックの工場を眼の前に思ったのは、
「ビルケンシュトックってドイツで作ってるんだ」
ってことだった。知っていたつもりだけど、実際に目にするのとではリアリティがまったく違う。ちなみにドイツの人たちはビルケンシュトックのことを「ヴァーケンストック」と呼んでいた。
朝9時に羽田空港を出発しミュンヘン経由でカート・ヴォネガットの小説『スローターハウス』の舞台にもなった歴史の街ドレスデンへ。ホテルの部屋に着いたのは夜9時近くで、日本を発ってからもう30時間近く経っていた。夜のドレスデンは美しくエルベ川沿いにはバロック建築が立ち並んでいた。
エルベ川沿いにバロック様式の建築が立ち並ぶ。夏のヨーロッパは日が長い。
フットベッドをベイクする。
翌朝起きると観光する間もなく早朝のバスでファクトリーへ。実際の工程とは前後するけど、まずはビルケンシュトックと言えば、のフットベット工場から案内しよう。この工場はポーランドと国境を接するゲルリッツという街の近くにあり、主にフットベッドを作っている。後にミュンヘンの本社で話を聞いた社長が言うように、ビルケンシュトックはサンダルというよりこのフットベッドを売っていると言っても過言ではない。まさにブランドの核心だ。
「ベイカー」と呼ばれるマシンでフットベッドを焼き上げていく。
材料となるコルクは細粒と粗粒を混ぜて使う。かたまりをつまみ上げると手のひらでポロポロと崩れた。
主たる原料となるのはポルトガル産のコルク。ワイン栓を抜いた後の端材を粉砕したものを使う。フットベッドの工程はこうだ。「コルクとラテックスを混ぜ、型に流し込みます。その上にジュート(麻布)を敷き、あらかじめカットしたスエードを重ねます。それをプレスし、型から取り出します。もう一度スエードを上に置き、再びプレスし、焼き上げ、乾燥させます」。
フットベッド製造は15工程あり「フットベッドベーカー」と呼ばれる熟練スタッフの技術によって支えられている。もともとは柔軟なインソールのために名付けられた「フットベッド」。それにしても「足の布団」とはよく名付けたものだ。ビルケンシュトックは約100年前にこの名称を考案して商標登録したのだという。
焼き上がったフットベッドは特殊な溶剤を塗って補強されていく。目の前のベルトコンベアの上を次々とフットベッドが流れていく。ビルケンシュトックのフットベッドはほとんどがこの工場で作られているそうなのでキミの履いているサンダルのフットベッドもここで焼かれ、このベルトコンベアを運ばれてきたものかもしれない。
出荷を待つフットベッドがロゴ入りブルーボックスに。この箱欲しいなあ。
続いて紹介するのは、フットベッドに取り付けるアッパーが生産される工場。こちらはベルンシュタットという街にある。各地からレザーが届き、品質チェックを受けた後、カットやトリミング、薄く割く作業、最終工程へ向けた下準備が行われる。その後、フットベッドに一足ずつアッパー素材を組み合わせ仕上げていくアッセンブル作業のため、再度、ゲルリッツの工場に送られる。
こちらは定番サンダル「BOSTON」を作っているところで、アッパー側の組み立て工程は完成して箱に入るまでにおよそ22工程ある。細かな傷の有無を職人がチェックし、合格した皮は、型抜きの機械でズドンとパーツごとに抜かれていく。
ビルケンシュトックで採用するレザーは厚さが3.2mmと決まっており、これは市場に出回るものの中でも特に厚みのある価値が高い皮なんだとか。さらに、丈夫な背はアッパーに、柔らかい腹はストラップにとパーツごとに部位の特性にあわせて使いわけられている。
専用の機械を使って職人がバックルやリベットをつけていく。右はアッパーをフットベッドに接着する工程。
ちなみに一枚皮からパーツとして抜かれる段階で左右揃いのペアには同じ番号が刻印され、各工程で他のペアと混ざらないようにしている。これは左右でレザーの色や質感に差が出ないようにするためだ。
こうやって工程を眺めていくと想像より多くの人が関わっており、クラフツマンシップとオートメーションの融合によって靴が作られていくのがよくわかる。実際に1足のサンダルが完成されるには数十人手を渡っていくことになるそうだ。
さて、最初の質問に戻ろう。
ビルケンシュトックとは何か?
って話。僕らからすればそれはスタンダード、もしくはクラシックなファッションアイコンのひとつと言える。でも社長のオリバー・ライヒェルトはビルケンシュトックを最もシンプルに表現するなら「裸足に次ぐ最高の選択肢」だと語った。
フットベッドの起源は「足跡を砂に刻んだ形」であり、それをジュートをベースに特別なコルクラテックスをスエードで覆って作ったものだ。僕たちを案内した工場の責任者は「ビルケンシュトックって何か?」と聞かれたら、こう答えて欲しいと言っていた。
「自然が意図した通りに歩かせてくれるもの」。
今回、ドイツに行ってビルケンシュトックについて新たに知ったことはたくさんあるが、そのひとつはとても思考がシンプルだってこと。そのことを社長のオリバーはたびたびチキンスープ作りに例えて話していた。「良い素材を使い、伝統のレシピで、美味しいスープを作ること」。機能と品質、伝統の3つを守り、丁寧に作ること。その経営哲学は過剰に行わないマーケティングやコラボーレーションにも徹底されている。
ファクトリーの従業員からランウェイを歩くモデルまで、職種や場所を問わず幅広く愛用される理由は単純明快で、それがシューズ、サンダル、クロッグなのかはひとつの表現みたいなもので、その中にあるフットベッドこそがビルケンシュトックだからなのだ。
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