ファッション
ニューバランスのスニーカーには、本当に職人技が光ってる?
2025年7月17日
photo: Lily Brown
translation & photo(iPhone): Rintaro Tezuka
text: POPEYE
「まさに職人技の光る逸品だ」
よく雑誌で読むこういう文章。嘘じゃん? っていつも思っちゃう。
そもそも何をもってして“職人”と言うかだし、この目で見てないこと書かないでくれよ。
例えばUK製の〈ニューバランス〉のスニーカーは高い。
「それは職人が一点一点手作業で作っているからだよ」とスニーカーヘッズの友達は言うけれど……、ホントかよ。だったら、この目で見てやろうじゃないの。
この春、編集部に届いた一通の手紙は〈ニューバランス〉からのUK工場見学のご招待。僕はイギリスへと飛び立った。
東京からロンドンまで飛行機で15時間、ロンドンからマンチェスターまで電車で2時間半、そしてマンチェスターから車を3時間ほど走らせたフリンビーに〈ニューバランス〉の工場はある。
このフリンビーという街は、イギリス北部の人口2000人ほどの小さな港町。近くにはレイクディストリクトと呼ばれる、渓谷の合間に無数の湖が点在する湖水地帯が広がる。絵本『ピーターラビット』の舞台でもあるのどかな自然の中を車で走ると、まず眼前に広がる緑の色彩の豊かさに圧倒される。日本で見る濃い緑じゃなくて、少し淡い、乾いた土っぽい緑が幾重にも重なり、ところどころにハリエニシダの小ぶりな黄色い花が顔を覗かせる。綺麗だなぁ。
「あ、羊だ!」なんて楽しく驚いていたのも最初のうちだけで、人間よりも圧倒的に多いでしょってくらい羊がのんびりと草を食べている景色がどこまでも続く。
「イギリスの北部に行くんだ」。出発前、このエリアで育った友達に話すと「絶対にミートパイと、ぬる〜いエールビールは飲みなよ。あれが本物だから」と教えてくれた。
あの景色を見ながら食べた、飲んだ。本当に最高だったよ。同じものを渋谷で食べてもこうは行かないんだよ。なんせここはレイクディストリクトだもの。
湖畔の大自然を2時間ほどハイキングした後に立ち寄った『Kirkstile Inn』で「ステーキパイ」をエールビールで流し込んだ。疲れた体に染み渡りすぎて、無心で食らった。
そんな山間の湖畔とは打って変わって〈ニューバランス〉の工場はアイリッシュ海を臨む開けた場所にある。街に暮らすほとんどの人がこの工場で働いているくらい小さな街。
イギリス製〈ニューバランス〉の歴史の始まりは1982年に遡る。
ジム・デイビス(現オーナー兼会長)とアン夫妻はヨーロッパ市場の拡大に際して、リリーホールに工場を開設し、1991年には現在も続くこの場所に移転する。
フリンビーを要するカンブリア州はかつて靴産業や繊維作業が盛んだったそうだ。しかし、’80年代にかけて次第に衰退し多くの工場は閉鎖、失業する者が増えた時代に地元の雇用を支える受け皿となったのが〈ニューバランス〉の工場だった。それから地域に根差し続けているこの工場は、革靴工場の跡地を再利用しているそうだ。
工場の扉を開くと広々とした空間に響き渡る機械が稼働する轟音と、それに負けじと爆音で流れるABBAが聞こえてくる。そしてレザーやスエードの心地良い香りが充満している。もう楽しそうじゃん。
黙々と作業に没頭する従業員は世代も性別も様々で、親子代々この工場で働いている人もいるらしい。
広い工場内は各シューズのモデルごとにセクションが分かれていて、この日、製造していたのは「991 v2」と今年発売したニューモデル「Allerdale」。
そして、そこで見た光景が本当に衝撃だった……。
ホ・ン・トに、ほとんどの工程が人の手によって作られていたんです!
ヨーロッパから輸入した革靴に使われるような高級レザーの傷をチェックする。使用できない部分をおじちゃんが目視でチェックしレーザーでマーキング。そを省いて自動でガイドラインが引かれ、型押しのようにパーツを裁断する次の工程に移る。
縫製はもちろん人の手で、ミシンを使って縫われていく。パーツをつなげていくと徐々に立体的になってくる。この後、靴のサイズごとの木型を押し入れてアッパーを成形していく。
いよいよ終盤。アッパーを別工場で作られたソールと接着していく。写真の彼が何をしているかというとアッパーにレザー照射されたガイドに従って接着剤を塗っているのだ。そこまで人力でやっているんて、一番驚いたのはここ。
こうして圧着されたシューズは、検品担当者によって隅々までチェックされ、これまた手作業でボックスに箱詰めされていく。工程を見てきたこのスニーカーは今、世界のどこで、誰が履いているんだろうか。
各工程を担当する仲間同士の連帯感と、迷いのない手捌き、そして眼差し。僕はこの目でしっかりと見て、今なら実感を持って言える。
確かにこれは職人技だ!
光栄なことに工場を訪れた日付とイニシャルが刻印された「991v2」を作っていただいた。結構履き込んでいる。これから世界中に連れていきたいな。フリンビーの職人たちの気持ちと一緒にいろんな土地を踏み締めていこう。
インフォメーション
New Balance Made in UK
UK製は他にも「1500」が作られている。公式オンラインストアを覗いてみると、あの日見たイギリスの風景のように繊細な色彩のシーズナルカラーもあった。
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