TOWN TALK / 1か月限定の週1寄稿コラム

【#4】The Yosemite Facelift

執筆:渋谷ゆり

2025年4月2日

 ヨセミテに通い始めてから毎年参加しているイベントがある。ヨセミテのローカルクライマーのひとりであるケン・イエガーが、2003年に「The Yosemite Facelift」と名付けて始まったクリーンアップのイベントだ。

 当時クライミングガイドをしていたケンが、クライミングエリアに行く途中に残されたトイレットペーパーの多さに嫌気がさして、自らゴミ拾いをするようになったのが全てのはじまりになったという。〈Yosemite Climbing Association(YCA)〉の創設者でもある彼は、2021年には『Yosemite Climbing Museum』も作り、ヨセミテのクライミングの歴史や精神がこれからの世代にも理解され、いつまでも継承されるようにと地道な活動を続けている。

 Faceliftは毎年9月末に5日間に渡って行われ、クライマーだけでなく、幅広い人たちがボランティアとして参加する。今ではヨセミテ国立公園の公式イベントのひとつとしても認められ、そのおかげでレンジャーとクライマーの関係もいい方向に変わりつつある。その期間中は昼間のクリーンアップだけでなく、夜のプログラムとして毎晩2〜3人のゲストによるトークやフィルムの上映もあり、憧れのクライマーの話を聞けたりもする。

 ヨセミテでのゴミの種類は本当に様々で、何十年も前のビール瓶や錆びついた空き缶から、ちぎれたロープ、自動車のパーツやマットレスまでと、毎回びっくりするようなものが出てきたりする。さらにこの期間には、普段はなかなか難しいエル・キャピタンのクライミングルートの掃除もクライミングレンジャーによって行われる。有名なルートに残されたゴミの多さも、このイベントに参加するまでは知ることもなかった。毎年5日間だけで5〜6000キロのゴミが集められているということに、このイベントの大切さをあらためて気付かされる。

 そして何よりもこのイベントがクライマーにより始まって、クライミングコミュニティーの力で成長していることを個人的に嬉しく思う。今ではあちこちのクライミングエリアでFaceliftが行われるようになり、これから更にこういう活動が世界各地のクライミングエリアに広がっていったらいいなと思う。

プロフィール

渋谷ゆり

しぶや・ゆり|写真家。ニューヨークのスケーターからヨセミテのクライマーなどのコミュニティを写真で撮り続ける。4月12日から『The North Face Standard Kyoto』で個展を開催予定。

Official Website
https://www.yurishibuya.com/

Instagram
https://www.instagram.com/kimurikimur/

ポートレート集『Ten Years After』、『For A Moment』はこちらから↓
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