TOWN TALK / 1か月限定の週1寄稿コラム

【#3】海苔の産地を訪ねて、福岡へ

執筆:kinhiji

2025年3月24日

kinhiji


text & photo: Waki Hamatsu(kinhiji)
edit: Miu Nakamura

今回は福岡旅について。福岡はたびたび訪れている大好きな場所。自然と町の近さが一番心地良い「都会」なのかもしれない。
四人姉妹の私は高校卒業と同時に家から追い出され、一人暮らしを始めた。高知で高校時代を過ごした私にとって、そこまでハードルは高くなかった一人暮らし。(高知は横に長いので高校生の頃から寮生活や一人暮らしをする友人がちょこちょこいた)二十歳になるまでの二年間は、近場の都会、大阪、神戸、福岡にたびたび足を運んだ。たぶんその頃の記憶がまだなんとなく残っていて、福岡に行くとあの頃の懐かしい楽しさというか、憧れというか、全てに少しフィルターがかかっているようなかんじ。

お土産:左から時計周りに①最近気に入っている薬院の古着屋APNEAで一目惚れの全プリントスウェット②有明の海苔は味が濃厚。柳川の江の浦のりさんの味海苔とのりフレーク(塩のりもおすすめ)③表紙が最高。クオリティ抜群のフリーペーパー「柳川の海苔」④三浦さんの博多張子豆虎

この旅ではちょっと都会から離れ有明海の方へ。良い縁が見つかり、いずれは行きたいと話していた海苔の取材へ。有明の海苔といえば佐賀をイメージしていたのだけど、福岡や熊本も生産量が高く、年によってどこで一番採れるかも変わってくるそう。今回行った柳川は、去年の⅓の海苔しかとれていない、ということで昆布や他の海藻同様、ここでもか!という気持ち。どこもかしこも海藻が減少しているのは明らか。改めて数字になると、自分で思っていたよりもそれはとてつもない速さだった。このままでは本当、当たり前にあった海藻達が食卓から消える日が近づいてる。

柳川の海苔の干し場

柳川のホテルにあったフリーペーパー「柳川の海苔」は、佐賀長崎の「SとN」を思い出すような地元愛満載のクオリティ高き冊子。タイトルから想像できるけどまさかの本当に丸一冊海苔について書いてある。Google mapではなかなか見つからないお店も沢山あり、 しかも柳川海苔が主役のお店たち。せっかくなので私たちもこの中にあるお店へ。今回は、和食山崎をチョイス。

和食山崎さんのしぶい外観に興奮する桃ちゃん

テラスからは柳川が目の前に見える好立地で、そのまま泊まって眠れそうな、誰かのおうちのような空間。魚も肉もあり。だったのだけど何より紙面に載っていたトマト巻きが気になってしまい頼んでみた。これは、サラダ巻きのようでもあるけど、柳川の海苔を味わうための巻物かも。パリパリで海苔そのものの味がとてもよくわかる。ちょっと甘いなと思っていたシャリもこの巻物にはばっちりあう。

お目当てのトマト巻き。店を営むのはとてもナイスなご夫婦。食後に熟した柿をだしてくれた。

柳川の人々の海苔愛を感じた旅だった。

海苔の産地は、海苔の種類も多い。
kinhijiで海藻旅をするようになり、私のキッチンには海藻が溢れすぎ、海藻の引き出し、を作ってしまった。
どんな食材でもそうだけど、海藻も用途用途で使い分けるとさらに美味しい。海苔で常備しているのは、巻物やおにぎり用の大きな一枚海苔、おつまみ用のカットしている味海苔だったり塩海苔だったり。塩海苔は産地以外ではあまりみかけないので買えると嬉しい。韓国海苔とは風味もちがって和風の優しさがある。あとは一番使用頻度の高いばら海苔。これはもうなんでもあう。麺類とかピザとかとにかく便利。海苔は最初から平たいわけではなく元々はバラバラなわけで、一度板状にしたものをきざんだきざみ海苔を買うよりは採れたままの海苔を干しただけのばら海苔の方が美味しくて食感もよいことに最近気づきました。

我が家の海藻だけの引き出し。実は非常食でもある。

プロフィール

濱津和貴

はまつ・わき|東京在住のフォトグラファー。日常にたたずむ美しさをテーマに、人の営みとそこから生まれる光景を撮り続ける。写真集『summer vacation』ほか。中村桃子さんと結成したユニットkinhijiは、海藻にまつわる日本各地の衣食住を探求中。

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