TOWN TALK / 1か月限定の週1寄稿コラム

【#1】図書館のこと

執筆:箕輪はるか(ハリセンボン)

2025年3月14日

釜山図書館

知っているはずの名前が出てこない、ということがよくある。
たとえば、数年前にブームになった、丸いパンに生クリームをたっぷり挟んだイタリアっぽい名前のやつ。
たとえば、ハンバーグ師匠が手に持って鳴らす楽器の名称。
あれ、ほらあのー…えっとー…
口から空っぽがこぼれて溜まる。はやく答えを見つけないと自分が世界から消えてしまいそうだ。

そんなとき、私は図書館のレファレンスサービスを思い浮かべる。
じつは私は図書館司書の資格を持っている。
レファレンスサービスとは、利用者の知りたいこと調べたいことを図書館職員が聞き取り、そのために必要な本を探すサポートをする専門的なサービスのことだ。
図書館の利用者はおぼろげな記憶で本を探していることもある。丸パン生クリームほどではないにしても、ある利用者は
カズキ・イシダ*の『わたしを探さないで』という本、を探していることがある。
図書館のデータベースに載っていないからといって所蔵されていないと諦めてしまったらもったいない。レファレンスサービスを利用すれば、探していたものがカズキ・イシダの『わたしを探さないで』ではなく、カズオ・イシグロの『わたしを離さないで』だったことがわかり、利用者は無事に本にたどり着けるのだ。図書館職員の情報収集力が役に立った一例だ。
もちろんこれはレファレンスの一端にすぎない。地球上で最も大きな生き物を知りたいとか、きのこが雨を降らせるって本当?とかいったことも、知りたいことの参考になる本を膨大な資料のなかから見つけて案内してくれる。

それが、レファレンス。

名前が出てこなくなる前に、ぜひお近くの図書館で利用してみてほしい。


*カズキ・イシダの例は『100万回死んだねこ 覚え違いタイトル集』から抜き出して紹介しました。
覚え違い例がたくさん載っていて、くすぐられます。

『100万回死んだねこ 覚え違いタイトル集』
著・編:福井県立図書館
講談社

プロフィール

箕輪はるか

みのわ・はるか|1980年生まれ、東京都出身。早稲田大学卒。NSC東京校出身で2003年に相方「近藤春菜」とハリセンボンを結成。
コンビではTBS「モニタリング」、TX「にちようチャップリン」をはじめ、多数のテレビ番組に出演中。
ピンでも幅広い分野で活動している。
ニッポン放送「ナイツ ザ・ラジオショー」では木曜パートナーを務める。光文社「女性自身」では、毎月書評を連載中。