TOWN TALK / 1か月限定の週1寄稿コラム
LIFESTYLE

【#1】リモコンが落ちていた。

2021.06.10(Thu)

道を歩いていると何かが落ちている時がある。私は基本的に下を向いて歩いているので落とし物に気づきやすい。それは落とし物の定番である手袋や軍手であったり、財布であったり、食べ物であったりするわけだが、時折「なぜこんなものが!」と驚くような意外なものが落ちていることがある。

先日はエアコンのリモコンが落ちていた。なかなか屋外では出会うことのない代物だ。なぜエアコンのリモコンだけが落ちているのかはわからない。どうしても知りたいのなら防犯カメラの映像を解析するしかないがそんな行動力はない。それにしてもエアコンのリモコンがないと結構困るだろうなと思いつつ近寄ってよく見ると電源が入っていて液晶画面に「25℃」と表示されていた。

その瞬間私は思った。これは神様のリモコンではないかと。神様が地球の温度を調節するリモコンに違いないと。そう考えれば屋外にリモコンがあるのも頷ける。もしかして温度を「30℃」に上げたなら、一気に夏になるのだろうか。逆に下げたら……。私はリモコンに触りたい欲求を抑えまた歩き出した。

プロフィール

せきしろ

文筆家。1970年、北海道生まれ。4月にエッセイ集『その落し物は誰かの形見かもしれない』を発売。著書に又吉直樹と共著の自由律俳句とコラム集シリーズの第3弾『蕎麦湯が来ない』や『去年ルノアールで』などがある。

公式サイトはこちら。
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