TOWN TALK / 1か月限定の週1寄稿コラム
出会いはアメリカのスケート雑誌とビデオ。
執筆:野村訓市
2025年2月11日
キャンバス製のいわゆるオールドスクールなスニーカーばかり履いている男。そう、それは自分がいつも言われていることなのだけれど、本当の友達はそうじゃないってことを知っているのさ、俺が定期的にレザーのスニーカーを履くということを。それはほぼ一択、エア ジョーダン 1。それがなぜかって?長い話になるが付き合ってもらおうじゃないの。
俺とジョーダン 1の出会いはバスケじゃない。むしろ最初はそれがバスケシューズだとも知ってなかったくらいだ。偶然が2人に出会いをもたらしたってわけだ。それも一生もののね。そうだ、出会いはアメリカのスケート雑誌とビデオ。洋物のビデオさ。休みになるとハワイに行き雑誌やビデオを持って帰ってくる幼馴染がいて、俺はその頃はBMXに夢中だったんだけど、その雑誌やらビデオでスケートに浮気するようになったんだ。80年代バリバリで当時はみんなネオンカラーみたいな派手色の服を着て、今より丈が短めの短パンにハイカットのスニーカーを履いていた。格好よかったよ。浮気が本物の愛に変わったってやつだね。それからはもうスケート一本さ。それで格好から入るじゃないですか?軽薄な僕らは。靴も彼らの真似してキャンバス製のスニーカーを履いては、オーリーの練習をしてすぐ穴が空き、途方に暮れることになった。スニーカーってキャンバス製でもアメリカブランドのなんてすぐ買えないんですわ。プロはスポンサーからジャブジャブ新しいの貰えるからいいけどさ。だから壊さないようにガムテープ貼って補強したり、練習は別の靴履いたり。それじゃ持っている意味ないよね?そんなときに見かけぬ靴を履いたスケーターに目が釘付けになった。今でも現役の日系レジェンドスケーターなんだけど80年代、まだ彼(憶測してね)が10代の頃のかっこよさときたらちょっと別次元だったね。スポンサードを受けていたJimmyZの服にダブルでつけたスウォッチ、色違いで履くキャンバスのスニーカー。筋肉質のいい体にメッシュの入った髪型。とにかく派手で動きがデカくて80年代を真空パックしたような人だったんだけど、いわゆるスーパースターさ。俺は当然彼にもう夢中❤️。どんな格好しているか目が飛び出るほど眺めていたのだがいつからかちょこちょこ違う靴を履くようになったのに気づいた。赤黒や白黒のハイカットの〈ナイキ〉。それがちょっとバギーなJimmyZのパンツにメチャクチャあう。だが当然何の〈ナイキ〉だかわからない。けど他のスケーターを見渡すとどうやら同じスニーカーを履いているプロの姿がチラホラ。青黒もあったし、赤黒白もいる。何なんだ?何なんだよこのスニーカーは?雑誌にもどこにも彼の靴はこれです!なんて親切に書いてないのだからわかりようがない。そんな謎は俺が当時住んでいた吉祥寺の靴屋である日、偶然に解けることになった。そこは、〈ナイキ〉の見たこともないようなスニーカーを売る、スニーカーマニアには有名な店だったらしいんだけど、そこで売ってたんですよ。オールレザーのジョーダン 1が。そんときの俺には知る由もなかったが、スケーターがジョーダン 1を愛したのには理由があったらしい。バスケット用としては最薄のソールがボードコントロールに最適だったこと(他のカップソールのバスケットシューズはソールが厚過ぎた)、オールレザーで耐久性が抜きんでていたこと。そして何よりカラーリングも最高だったこと。ライトグレーやベージュのチノパンに赤黒を履く。スキルのレベルが数段上がることはなくても、上がったと錯覚させてくれる位格好が良かった。手に入れたときの喜びがどのくらいだったか分かる?わかりますか?今思うと履いてオーリーの練習なんてして履き潰さなきゃ良かったと後悔なんてもんじゃないけどね。それがジョーダン 1との出会い。ごめんね長くて。でも最初に言ったけどね、長くなるって。じゃあ内容が濃いかと聞かれると自信もないけどね…。
とにかくそれ以来俺はジョーダン 1を愛し、愛し続けてきた。どんなに自分の格好が変わろうとも、顔に皺が増えようとも、引っ越しをしようとも常に手元に持ち続けてきた。そして、こ、これは!というモデルが出るとどうしても手を出してしまう。今でも8足か?いやそれ以上あるかもしれない。一度虜になったらもう抜け出せない、ジョーダン 1沼の俺は立派な住人なんですよ。ときに履かないときでも手に取り、ついつい愛でてしまう。なんだろう、イームスのシェルチェアーとかリーヴァイスの501とかそういうデザインのアイコンってあるじゃないですか?もうこれ以上引くことも足すこともできないよー、という完成形のもののみが持ち得る凄み。アレがコレにもあるんですよ。そんな完成形の極みのスニーカーで足元を恐れ多くも飾れる喜び。みなさんも是非ジョーダン 1を一度履いて、一緒に沼にハマっていただきたいということで、この長い話を〆させていただきたいと思います。
プロフィール
野村訓市
のむら・くんいち|1973年、東京都生まれ。海外放浪の旅を経て、雑誌編集、執筆活動を中心に活動する。毎週日曜日20:00〜『TUDOR TRAVELLING WITHOUT MOVING』(J-WAVE)のナビゲーターを務める。
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