TOWN TALK / 1か月限定の週1寄稿コラム

【#3】音散歩② 上野〜御徒町編

執筆:金光佑実

2025年1月28日

こんにちは、金光佑実です。
第3話は、前回の音散歩の続き『上野〜御徒町編』です。

動物園を池之端門から出て、ボート乗り場をめがけて不忍池を散歩。ビニール袋に入れたエサを配り歩く紳士に、カモやカモメが沢山群がっていた。

紳士の去った後も呼び合う鳥たち

ボート乗り場から不忍池辯天堂へ。誰かの鳴らした小さな鐘の音を皮切りに寺の境内へ。砂が敷かれていて、入った瞬間におおきな足音が目立つ。その後まもなく、厳かな雅楽が聞こえてきた。

足音がしっかり聞こえると、移動しているのか静止しているのかわかりやすくていいですね。RPGゲームっぽさ。

今日はなんたって新年明けたての1月5日、どこでこんな贅沢な演奏が……?と心浮き立っていましたが、スピーカーからの音声でした。

参道に並ぶ人々に向かって配置されたスピーカー。街に溢れる音が一体どこから流れてきているのか、探すのも好きです。駅の音声とか。

その後は上野東照宮へお参り。参道周辺は小石が敷かれていて、すっかり写真を撮りそびれてしまったけれど「投げたり持って帰らないでください」の注意書きがあった。

お参りに並んでいる間も時折小石を踏み締める音。投げてみたくなる気持ち、ちょっとわかる……だっていい音がしそうだから。投げないけど。

繰り返す案内音声が気になり元を辿ると、ハイテクな巫女さん看板を発見。

喫茶店で遅めのお昼を済ませ外に出ると、もう16時をまわり少し陽も陰ってきた。JR上野駅の公園口の目の前にやきいも屋さんのトラックがあったけれど、おじさんが歌うあの焼き芋のうたはどこからも流れていなかった。

走ったら流れるのかな、最近聞いてないなあ。騒音問題など関係しているのだろうか、と勝手に想像してしまう。公共の場であらゆる音が共存することの難しさを思う。全然関係ないかもしれないけれど。

公園口からアメ横への道のりは、様々な電車が乗り入れる上野ならではのあらゆる構内放送が漏れ聞こえてくるのも魅力的。

冒頭の街のアナウンスも良い。新宿でキャッチ行為禁止などの放送はよく聞くけれど、タバコポイ捨てバージョンもあるんですね。

さあ、大好きなアメ横に到着!人、人、音楽、人、電車の音……歩いてるだけで元気が湧いてくる時は、絶好調な証。エネルギーを吸われるように感じる時は、疲れてる証。と、心身の元気度指標にもよく使ってます。

少し間をつまみつつ、アメ横の様子をどうぞ。

ふと見上げると、「かねの鳴るまち」との表記が。

かねの鳴るまち……?調べてみると、寛永寺の“時の鐘”が、毎日朝夕6時と正午に鳴らされており、さらにその音は「日本の音風景100選」にも選定されているとのこと。し、しらなかった……!きっとこれまでもどこかで聞いてきたはずなのに。

これこれ、いい音しそうだなあって、写真は撮ってたんです。どの時間にもぎりぎり滞在しておらず、音は録りそびれました。

アメ横と並行する「上野中通商店街」を歩いていると、どこからともなくクラシックが流れてくる。これまで何度も通っていたけれど、初めて気づきました。

お正月だけではなく、いつも流れているのだろうか……?

「賀正」を吊り下げている箇所に、横長なスピーカーがありそうな雰囲気。

上野駅から歩き始めたアメ横ゾーンもそろそろ終点に差し掛かったところで、いわゆるガチャポンの専門店を発見。こうなると、音ギミックのついた景品を探さずにはいられない。今回はこちらに挑戦。

500円という値段設定には少し悩みましたが、電池も交換可というのは嬉しい。

すっかり陽も暮れて、足もパンパンでぜひアメ横で一杯…と行きたいところだけれど、夜は仕事の予定があったため今日はここまで。地下鉄の仲御徒町駅付近まで歩くとガラッと街の雰囲気が変わった。

車どおりの激しい幹線道路。動物園をでた時と似ている少し寂しい、人恋しいような気持ちになった。観光地あるあるな気もする。

行きは山手線、帰りは地下鉄の、構内の雰囲気の違いもどうぞ。

音散歩【鶯谷〜上野〜御徒町編】、ここまでお付き合いいただきありがとうございました。

音に限らず何かひとつの物事に注視して街を歩くと、いつもの街でも全然目が(耳が)向くところが違って新鮮に感じられます。さらにはそれを繰り返すうちに、その感覚が研ぎ澄まされていくような、使わない筋肉が鍛えられるような実感があるのが面白い。川や海で魚を見つけるのが妙にうまいひとがいますが、特殊な筋肉だなあと思っています。そういうことなんでしょうか?

次回はついに最終回!石神井公園の音散歩を敢行し、そこで採取した音を使って、短い音のコラージュを作る予定です。最後までお付き合いいただけますと嬉しいです。

プロフィール

金光佑実

かねみつ・ゆうみ|1991年、東京都生まれ。音楽家として様々なジャンルの楽曲制作を行う。ブランドムービーやCM、またTV番組への楽曲提供(テレビ東京『シナぷしゅ』、TBS『バナナサンド』他)、チョコレートプラネット、ニューヨークなどお笑い芸人のコント作品や単独ライブの楽曲を手がけることも多い。贅沢貧乏の舞台作品では多チャンネルでの制作にも取り組み、街や家の音採取から作曲の糸口を得るなど、出しどころに合わせた楽曲作りを日々たのしんでいる。

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