From Editors

僕らの気分は、やっぱりバンド。

NO.931

2024年10月8日

 ポパイの3年ぶりとなる今回の音楽特集。テーマは「バンド」です。というのも、近頃の僕らの気分は「やっぱりバンドっていいよね」なのです。「いやいや、自作自演のソロアーティストが全盛ではないか!」とおっしゃりたくなる気持ちもわかります。ソロミュージシャンの話題や勢いはとどまるところを知らない昨今ですから。

 ただ、みなさん。「やっぱり、バンドっていいよね」なのです。バンド。かつては、「これで売れてやる!」とか「運命共同体」みたいなイメージもあったように思います。もちろんその鋭いかっこよさもあるけれど、今回若い世代のバンドと話して、パフォーマンスを見たりする中で感じたのは、もっとフラットで、風通しが良い雰囲気。インタビューの中でも出てくる「人と人が一緒に作るからこそできる音楽がある」とか「他人の意見を受け入れていくという作り方で自分が変わっていくのが面白い」といった言葉からは、確かにバンドの良さってやっぱりライブで「この5人がここで演奏していること!」みたいな、複数人が認め合いながら演奏する、そんな刹那の美しさだったりするよな、なんて思ったりもしました。

 初期衝動のような熱い気持ちが胸の中で燃え盛りながらも、極めて冷静かつ客観的に自分たちの立ち位置や世代、環境を把握する。この姿勢が不思議と、ベテランのバンドとアップカミングなバンドで共通していたりするところもまた、2024年のバンドミュージックを紐解くポイントかもしれません。

 今回の号では、ポップス、サイケ、ロック、エキゾチカ、ハードコアまで、さまざまなジャンルのバンドが登場します。もちろん音楽も最高です。ぜひチェックしてディグってみてください。そして、それだけでなく、是非ともミュージシャンのみなさんが語る言葉から、その精神性を感じ取ってほしいのです。これは音楽だけに限った話ではなく、今これを読んでいるみなさんがこの混迷の現代を生きていく手助けになるとも思います。何を隠そう、これを書いている私(今年新卒で入社、5月にこの編集部に配属になったばかりの新米編集者、です。お恥ずかしい!)こそ、そんな言葉の数々に励まされたのです。

「世界は僕のものなのに!」と花束をかきむしるモラトリアムのあなたも、そして夏休みが終わって社会に揉まれる大人の皆さまも、この号を読んで「バンドやってみよっかな!」と思ってくださったらそれは最高です。ぜひ、音源ができたら教えてくださいね。なにより、みなさんがこの号を読み終わった時に、家族や友人たちと、恋人と、あるいは1人で。「やっぱりバンドっていいよね」と口にしてくれたら……なんて!

ムーンライダーズ・鈴木慶一さんの取材で、『渋谷B.Y.G』へ。壁に貼られた錚々たるバンドの名前に背筋が伸びる思いでした。

(本誌担当編集)濱田浩嵩