ファッション
〈Bode Rec.〉と〈NIKE〉がスペシャルコラボレーション!
デザイナー、エミリー・ボーディ・アウジュラにインタビュー。
2024年5月22日
Coordination: Momoko Ikeda
text: Neo Iida
photo : Courtesy of Bode
〈Bode Rec.〉と〈NIKE〉とのコラボレーションが実現した。〈Bode〉といえば、デッドストックのキルトやドレス生地、インドの伝統的なシルクといった物語や歴史のある古布を使い、アップサイクルなもの作りを行うファッションブランド。すでにアメリカでは4月から発売がスタートしており、刺繍のスウッシュや、ポンポンやビーズの装飾など、ハンドメイドの温かさを感じるコレクションが話題を呼んでいる。
東京では5月24日から26日までの3日間、UNKNOWN Harajukuに『Bode Rec. Nike Clubhouse』がオープン。スポーツとレクリエーションを共に祝い、つながりを深め、情熱を分かち合うコミュニティーの場として開放され、コレクションの販売が行われる。
『Bode Rec. Nike Clubhouse』に合わせて初来日するというデザイナーのエミリー・ボーディ・アウジュラに、今回のプロジェクトについて話を聞いた。
〈NIKE〉黎明期に父親の記憶を重ねた、
1970年代生まれのアストログラバー。
――どうして〈NIKE〉とのコラボレーションが実現したのでしょうか。
これまでもシューズブランドから声がかかることはあったの。その中でも〈NIKE〉とコラボをすることに決めたのは、〈NIKE〉のナラティブとヒストリーに惹かれたから。“アメリカのスポーツ史の中でのNIKE”というものに興味があったし、〈NIKE〉の起源は〈Bode〉のそれとよく似ていて、本当に情熱が持てるものだけを作っている。その点が共鳴したんだと思う。数年に渡り打ち合わせを続けて、実際にコレクションのデベロップメントには約2年かかったわ。
――エミリーさんも昔から〈NIKE〉は好きだったんですか?
そうね。小さい頃からテニスとソフトボールをやっていて、〈NIKE〉と〈CONVERSE〉が好きだった。そういえば今は偶然にも両方とも同じ会社になったけど。
――コラボレーションが決まってから、どんなふうにアイテムを作っていったんですか?
コラボレーションのためのコラボレーションはやりたくなかったし、まず〈NIKE〉の歴史を深く調べてたの。中でも〈NIKE〉は当時、大学から人口芝生用の靴を初めて依頼された会社でもあるという点には特に惹かれたわね。そしてそのストーリーが自分の父のストーリーと結びついたの。フットボールをやっていた父は1971年に高校を卒業したんだけど、その年はビルが人工芝のための靴を作ることを依頼された年と一緒なの。その後、ナイキのアーカイブをみたりして、初期のころのNIKEのことを知りたくて、NIKE最初の従業員と言われるジェフに会いに行った。私の家族の過去の記憶とNIKEの初期の記憶を融合させていったの。
――面白い符号ですね。なぜアストログラバーをフィーチャーしたんですか?
アストログラバーをデザインした〈NIKE〉の共同創業者ビル・バウワーマンは、同じく共同創業者のフィル・ナイトと、コーチとアスリートの関係だったでしょう。私は、その背後にはたくさんの興味深い哲学があるなと思ったの。アメリカンスポーツの歴史、何のためにコーチングをするのか、陸上競技とは何か、レクリエーションとは何か、社会でよりよい人間になるためにはどうしたらいいか。そういった当時の意図を、今回のコラボレーションに落とし込めないかって考えた。それでいて、毎日履けるものにしたかった。オリジナルのものは手作りだったこともあってゲーム後にはボロボロになってしまうこともあったけど、現代版としてはちゃんと長持ちするものにしたかった。それは今の時代に蘇らせるために意識したところね。
――なるほど。
ビルにはイノベーティブな側面があって、最も情熱を注いだのは「本当に良い製品を作ること」。一方フィルには「大きなブランドになるには夢を持つこと」という強いビジョンがあった。そのふたりの関係性にも強く惹かれたの。
――そのバックボーンをアストログラバーから読み取ったわけですね。でも1970年代に開発されたシューズということは、今回のコラボレーションでアップデートされているわけですよね?
もちろん。でもオリジナルには忠実でありたいと思った。ソールがワッフルのような凸凹の形状になっているのが大きな特徴。このワッフルソールって、本当にワッフルの焼き型を使って開発されたものなんだって。
――えっ、あの食べるワッフルですか?
そう(笑)。いろんな形のワッフル器を試して、うまくいかなかったものをそのままにしていたらしい。何年も経ってからその時の大量の靴が見つかったとかで、〈NIKE〉はそれをアーカイブしてるんだって。すごいよね。
――面白い(笑)。じゃあそういった形状は当時のまま、素材などで変化を加えているわけですね。
そうね。靴もそうだけど、コレクションは全体的にレザーとコットンがメイン。毎日使えるものとして作りたかったし、ゲーム終わりに履けなくなるものではなくて、ずっと使えるものにしたわ。
――〈NIKE〉という大きな企業とのコラボでありながら、〈Bode〉らしさが感じられるコレクションですよね。デザインをするにあたってエミリーさんが心がけたのはどんなことですか?
私たちはいつも手仕事の温かさを大事にしていて、レースはすべて手作業で仕上げている。セーターの紐やジャケットに付けた取り外し可能なポンポンも、トラックパンツに付けたビーズも、ハンドメイドで作られているの。
――ほんとだ、よく見ると〈NIKE〉のスウッシュも刺繍が施されているんですね。白いシューズに付いているチャームもかわいらしいです。
よく学校のスポーツ大会でこういうチャームをもらうんだけど、昔から大好きで1920年代のものとかヴィンテージのものもたくさんコレクションしていたのね。そこからヒントを得て、新たにチャームを作って靴にアクセサリーとしてつけてあるよ。
――なかなか思いつかないアイデアだなと思いました。あと、モノクロのビジュアルも素敵ですけど、この写真は〈NIKE〉のアーカイブから持ってきたものですか?
〈Bode〉が制作したキャンペーンビジュアル。ジェフ・ジョンソンがかつて撮影した膨大なアーカイブに、新たに撮り下ろした写真を混ぜて作り上げた。〈NIKE〉の語源となったサモトラケのニケなどのモチーフも。
これは私たちが撮った写真と、〈NIKE〉のいちばん最初の従業員、ジェフ・ジョンソンが撮った過去の写真を混ぜたもの。上のペイントは、アーティスト(〈Bode〉のブランディングを手掛ける)のエリック・レンに描いてもらったの。
――モノクロとパステルカラーのコンビネーションが美しいです。それに、イメージカットではなく、実際の写真を使ったところに歴史を感じます。ジェフさんの写真も素敵ですね。
ジェフはコーチでありながら写真家でもあって、当時からいろんな試合の様子を撮影していたみたい。実際に彼に会って写真を見せてもらったんだけど、どれも本当に美しくて。それに記憶力もすごくて、撮影日、選手の名前、年齢、最速のタイムなんかを全部覚えてる。
――すごい! ジェフはどんな人ですか?
とても情熱的な人。彼は創業当時、掃除から広告撮影まで手掛けていて、会社の名前を〈NIKE〉と提案したのも彼。会社の立ち上げに関わった従業員なのに、風変わりで、自分がどれだけ重要な存在かまるで興味がないみたいに見えた。今でもランニングコーチを続けていて、いろんなことに興味があるコレクターでもある。ものすごく芸術な人だと思った。
スポーツは、自分らしさやチームワークを育む、
大切なレクリエーションの場。
ーーちなみに、エミリーさんはスポーツからどんな影響を受けたんでしょうか。
私はアートスクールに行っていたけど、それと同じくらいスポーツに参加することも大切にしてきたの。スポーツは自分らしさを育んだり、チームワークを身につけたり、内面を発展させたりするのに役立ってきたと思うし、それってとても重要なことだと思ってる。
――スポーツというと競争とか競技とか、ちょっとハードなものを想像してしまうんですが、エミリーさんが考えるスポーツというのはコミュニケーションの部分が大きいんですね。
うん、私がスポーツに感じるのは“レクリエーション”。今回〈NIKE〉とコラボレーションするのも、〈Bode Rec.〉(=Bode Recreation)というラインだしね。〈Bode Rec.〉は「ジムに行くときのバッグに何をいれるか」と考えたときの〈Bode〉版という感じで、2024FWからスタートするの。アメリカのスポーツ史を踏まえたうえで、アスレチックウェアの進化を探求して、着やすさ、耐久性、洗濯機で洗えることに重点を置いた洋服を作ってるの。つまり、私たちが作るのはアクティブウェアというよりレクリエーションウェア。メンズのスイミングウェアも出る予定だよ。
――楽しみです。今回、『Bode Rec. Nike Clubhouse』のオープンに合わせて来日されるそうですが、東京に来るのは初めてだそうですね。
そうなの。すごく楽しみ! 東京にお店を作りたいと思っているから、アンティークショップを見たり、街を見たり、色々チェックするつもり。
――エミリーさんのもの作りの考え方は、チープシックやクラフトマンシップを愛する『POPEYE』とも通ずるところがあると思います。読者にもぜひメッセージを。
雑誌とブランドの考え方が似ているというのは珍しいことだと思う。今回のコラボレーションもそうだけど、〈Bode〉や〈Bode Rec.〉のこれからにもぜひ注目してほしいな。
プロフィール
エミリー・アダムズ・ボーディ・アウジュラ
1989年、アトランタ生まれ。ファッションブランド〈Bode〉のデザイナー。2016年、ニューヨークを拠点にブランドを立ち上げる。2022年にはLAにもショップをオープン。小誌では2021年3月号「シティボーイの部屋作り。」でチャイナタウンにある自宅を公開してくれた。今年の秋には彼女ならではのユニークなジムウェアの新ライン、〈Bode Rec.〉を立ち上げる予定。
インフォメーション
〈Bode Rec.〉と〈NIKE〉のコラボレーションコレクションとキャンペーンを記念し、東京原宿に『Bode Rec. Nike Clubhouse』が期間限定オープン。
会場:UNKNOWN Harajuku
住所:東京都渋谷区神宮前6-5-10
開催期間:2024年5月24日(金)〜26日(日)
ピックアップ
PROMOTION
この冬は〈BTMK〉で、殻を破るブラックコーデ。
BTMK
2024年11月26日
PROMOTION
タフさを兼ね備え、現代に蘇る〈ティソ〉の名品。
TISSOT
2024年12月6日
PROMOTION
「Meta Connect 2024」で、Meta Quest 3Sを体験してきた!
2024年11月22日
PROMOTION
ホリデーシーズンを「大人レゴ」で組み立てよう。
レゴジャパン
2024年11月22日
PROMOTION
〈adidas Originals〉とシティボーイの肖像。#9
高橋 元(26)_ビートメイカー&ラッパー
2024年11月30日
PROMOTION
〈ハミルトン〉と映画のもっと深い話。
HAMILTON
2024年11月15日
PROMOTION
〈ハミルトン〉はハリウッド映画を支える”縁の下の力持ち”!?
第13回「ハミルトン ビハインド・ザ・カメラ・アワード」が開催
2024年12月5日
PROMOTION
〈バレンシアガ〉と〈アンダーアーマー〉、増幅するイマジネーション。
BALENCIAGA
2024年11月12日
PROMOTION
人生を生き抜くヒントがある。北村一輝が選ぶ、”映画のおまかせ”。
TVer
2024年11月11日
PROMOTION
うん。確かにこれは着やすい〈TATRAS〉だ。
TATRAS
2024年11月12日
PROMOTION
胸躍るレトロフューチャーなデートを、〈DAMD〉の車と、横浜で。
DAIHATSU TAFT ROCKY
2024年12月9日
PROMOTION
レザーグッズとふたりのメモリー。
GANZO
2024年12月9日
PROMOTION
メキシコのアボカドは僕らのアミーゴ!
2024年12月2日
PROMOTION
〈ティンバーランド〉の新作ブーツで、エスプレッソな冬のはじまり。
Timberland
2024年11月8日
PROMOTION
〈バーバリー〉のアウターに息づく、クラシカルな気品と軽やかさ。
BURBERRY
2024年11月12日