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ゴールドラッシュをめぐる冒険 in New Zealand

写真・文/石塚元太良

ゴールドラッシュをめぐる冒険

photo & text: Gentaro Ishizuka

2024年5月13日

 さまざまな展覧会ですでに発表をしておりますが、僕はこれまで世界中のゴールドラッシュのリサーチと撮影を行ってきました。ゴールドラッシュとはつまり、辺境と呼ばれるような人気のない山野で金が発見されると、我も我もと大量の人々たちがその原野へと繰り出していった世界史的な出来事のことです。

 金が発見された山野の近くには、ブームタウンという集落やコミュニティーができて、情報を交換したり、換金所などができて、その原始的なギャンブルがビジネス化していきます。それは大体先見者以外数年のうちに十分な利益を上げられなって、今度は集落やコミュニティーが廃墟や、ゴーストタウンになってしまいました。

 有名なところではアメリカ合衆国のカリフォルニア州やアラスカ州などがありますが、19世紀末の同時代にはフィンランドの北極圏域や、オーストラリアの南西部や、南米のパタゴニアなど、世界中の辺境の地と呼ばれた場所で頻発したムーブメントでもありました。

 21世紀になった現在でも、荒野には当時のブームタウンの残骸である小屋や、砂金を合理的に掘り出すための機械類などが廃墟として残されいて、栄枯盛衰。かつての強者たちの夢の跡かたを見るような思いがします。

 10年近い歳月をかけて、そんな「ゴールドラッシュ」という世界的な出来事の記録を現代の風景の中に追いかけてきましたが、今回の旅ではニュージーランドの南島にあるオタゴ州という場所に5年ぶりに撮影に行ってきました。オタゴ州は、ニュージーランドの中でも南緯の高い、つまり南極側の豊かな自然が残された場所で、19世紀の末に砂金や金塊が複数の河川で発見されたことに端を発して、まさに移民と入植が始まった場所なのです。

 5年ほどの前のリサーチで、現地でこんな「宝の地図」を得ました。(写真参照)これはオタゴ州のメイス川という川の流域を、どんな風に人が遡上して金の採掘を行い、そして金が取れなくなったのちに、どんなものが残されているのか情報をイラスト化した貴重な地図です。(少なくとも僕にとってはとても!)当時はメイス川の上流域は豊かな金脈を有していたことから、「リッチ・バーン」と呼ばれたまさに宝の地図だったわけです。

 このニュージーランドの「宝の地図」を頼りに、オタゴ州の中心都市の一つであるクイーンズタウンへ飛びました。100年前の人々と同じように「リッチ・バーン」目指してメイス川を遡上してみます。その自然の中にはどんなものが残され、100年以上経った現在の景色の中で、どんな佇まいを見せているでしょうか? 12日ほどのゴールドラッシュをめぐる冒険の始まり始まり。

プロフィール

石塚元太良

いしづか・げんたろう|1977年、東京生まれ。2004年に日本写真家協会賞新人賞を受賞し、その後2011年文化庁在外芸術家派遣員に選ばれる。初期の作品では、ドキュメンタリーとアートを横断するような手法を用い、その集大成ともいえる写真集『PIPELINE ICELAND/ALASKA』(講談社刊)で2014年度東川写真新人作家賞を受賞。また、2016年にSteidl Book Award Japanでグランプリを受賞し、写真集『GOLD RUSH ALASKA』がドイツのSteidl社から出版される予定。2019年には、ポーラ美術館で開催された「シンコペーション:世紀の巨匠たちと現代アート」展で、セザンヌやマグリットなどの近代絵画と比較するように配置されたインスタレーションで話題を呼んだ。近年は、暗室で露光した印画紙を用いた立体作品や、多層に印画紙を編み込んだモザイク状の作品など、写真が平易な情報のみに終始してしまうSNS時代に写真表現の空間性の再解釈を試みている。