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〈adidas Originals〉とシティガールの肖像。#2
Erika Murphy(24)_Musician
2024年4月11日
〈adidas Originals〉とシティボーイの肖像。
photo: Ryohei Ambo
illustration: Kouzou Sakai
styling: Kazuro Sanbon
grooming: Risa Fukushima
edit: Koji Toyoda
「私、ジョーン・ジェットが好きで。バンドといえば、男性が中心の’70年代に女性だけのバンド、ザ・ランナウェイズをいち早く結成し、’90年代のライオットガールムーブメント(男性主体のパンクシーンにフェミニズムを喚起する運動)をサポート。そして、自分のレーベルを運営しながら、ジョーン・ジェット&ザ・ブラックハーツのシングル「アイ・ラヴ・ロックン・ロール」で全米1位になるんですよ。強くて、優しくて、かっこいい。ステレオタイプな女性像をぶち壊すパンクな姿に猛烈に惹かれてしまって」
撮影の合間にジョーン・ジェットのスゴさを熱く語る、ルビー・スパークスのボーカル、エリカ・マーフィーさんは、根っからのパンク少女だ。
-Before The Lesson-
パンクバンドをやっていた母親の影響で“ジョーン・ジェット”の存在を知り、中学生の頃から革ジャンを相棒にしてきた。
「高校生の頃は、ノイズプロジェクト、メルツバウのTシャツを着て、ポップパンクのコピーバンドをやるのに夢中でしたね。大阪のアメ村にも頻繁に出入りしていて、古着屋やライブハウスに通うのが生きがいだったなぁ。本当は両親が若い頃に暮らしていたイギリスの大学に進む予定だったのですが、ある時、SNS経由で、今のバンドメンバーから声が掛かって……。高校の卒業式の翌日には、地元の兵庫県川西市から上京。3日後には、“ルビー・スパークスのエリカ・マーフィー”としてステージに立っていました」
-In The Studio-
まるでバンドものの少女漫画のような急展開であるが、エリカさんはそれ以来、7年間ノンストップ。昨年は、アメリカや中国、インドネシアなどを回る世界ツアーを行った。パンクに育まれたチャーミングで透明感のある歌声は、いつの間にか世界標準になっていた。そんな彼女がベースにしているのが、渋谷の音楽スタジオ『スタジオペンタ渋谷ジュークハウス』。
「ここは、少し年季の入ったアットホームな雰囲気が居心地いいし、バンドメンバーも集まりやすい場所だから、なんやかんや7年くらいは通っていますね。待合室にミスマッチに置かれたエーロ・アールニオのボールチェアがお気に入りのスポットで、休憩時間はここで過ごすことが多いですかね。練習に疲れたら少し眠ったり、歌い方の再チェックをしたり。たまにビールを飲んでみたり(笑)」
-Band Lesson-
間近で見たエリカさんは肩の力の抜けた、飾らない性格。何も予定のない日は、自宅でホラー映画やゲームの世界に入り込んで、ダークヒーローの活躍に固唾をのむ。その一方で、ルビー・スパークスの曲の作詞やメロディ制作に没頭することもしばしば。
「小学1年生からずっと日記をつけるのが習慣で。映画も昔からよく観ていたこともあって、自分で物語を考えるのが好き。わりと実体験がベースで、女性目線の恋愛や友情について書いたものが多いですね。散歩しているときやお風呂に入っているときにふと思い付くのですが、どうしても浮かばないってときは実家に帰っちゃう。少女時代を過ごした自分の部屋やのどかすぎる田舎町の風景の中で、幼い頃に感じていた気持ちや考えを振り返っていると、それまで行き止まりだった世界が急に開けてポジティブな感情で詞が思い浮かんでくるんです。走り続けているだけじゃなくて、ときには立ち止まることも重要だなと」
大切にしているのは、ファンが映画や小説を読んでいるような感傷に浸れること。そして、英語で詞を書くこと。小さな世界で完結してしまいがちな日本のインディーポップを、世界のリスナーに聴いてもらうために英語というツールが必要だと力説する。島国日本に立ちはだかる高く築き上げられた壁を、自分のやり方でブレークスルーしようとするエリカさんは、まるでジョーン・ジェットのようにかっこいい。そして、とびきりチャーミングなのだ。
インフォメーション
adidas Originals GAZELLE
「ガゼル」は、’60年代のトレーニングシューズに端を発する〈アディダス オリジナルス〉のレトロクラシック。発売当時は、屋内サッカーやハンドボール用のスニーカーとして人気を博したが、’90年代には、ブリットポップムーブメントのアイコンに。
Official Website
https://shop.adidas.jp/
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