カルチャー
そろそろ『Actual Source』の正体をちゃんと知りたくない?【後編】
ユタ州プロボの、気持ちのいいオフィスを拝見。
2023年11月2日
OFFICE
みんなで一列に並んで働いています。
「プロボまで来てキャニオンに連れていかないなんて僕らのシェイム(恥)だ」とJPとデイビスは口を揃える。彼らのオフィスから車に乗り込み走ること15分。あたりを囲む岩山から一か所、滝が流れ出ている。眼下のトレイルを指してJPが言う。「あそこを歩いてから仕事に向かうのが日課なんだ」。デイビスも穏やかに相槌を打つ。
アクチュアルソース(AS)を知ったのは彼らのアパレルなどのマーチからか。僕らの周りのグラフィックデザイナーたちが『ショップリフターズ』のタイポ集を必ず持っているからか。とにかく、作るモノはクールで大好きなのに、彼らのこと自体はよく知らない。そこで僕らは、ASが拠点を構えるユタ州プロボまで旅に出た。
通りに面したガラス窓からはファウンダーのJPとデイビス、スタッフたちが一列に並んでパソコンに向かう姿が見え、奥にはショップと本の在庫や過去の資料が収められたクリーンなコモンエリアが広がっていた。まず率直に、なぜプロボなの? という問いに、彼らは冒頭のクイックドライブで粋な伏線を張り、二人の出会いへと遡った。「JPは生まれも育ちもプロボで、僕は進学のためにカリフォルニアから越して来たんだ。共通の友人を介して遊び仲間として知り合ったのが’04年。日々が最高に楽しかった僕らの〝人生のベストイヤー〟と呼んでいる」とデイビス。JPも「音楽やスケボー、ファッションなどカルチャーへの興味が似ていたんだ。でもその根本に共通してあるのがグラフィックデザインだとは全く知らなかったよね」と振り返る。
ORIGIN
これがACTUAL SOURCEのスタートだ。
その数年後、デイビスとJPはそれぞれカリフォルニアとユタでデザインを学ぶためにカレッジへ。卒業後、デイビスが就職のためユタに戻り、二人はなんと同じテック企業の同僚として再びハングアウトを始める。が、時を経た彼らには明確なゴールがあった。それは自分たちの本を作る、ということ。そうして生まれたのが2013年の、『ショップリフターズ 1』。
「作りたい本を作ることはもちろん、本のデザインを本業にしたいのに前例がない。ならば自分たちで本を作ってポートフォリオにしようと企てたのさ」
しかしそのはじまりは、全くもって鳴かず飛ばずだった。
SHOP
サイズもカラーも豊富に揃う隠れショップ。
転機をもたらしたのが、2015年。100部から始まった『ショップリフターズ』が500部に届いた頃、彼らはデザインスタジオ〝No.04〟として独立。そう、二人にとっての〝ベストイヤー〟’04年に由来する。さらに初の個展『アクチュアルソース』を開催。これを機に出版レーベルと書店部門「アクチュアルソースブックス」(ASB)を立ち上げ、ブックフェア等に出展。作品が世に知られていく。また「出版社でグラフィックデザイナーであることをエクスキューズに」先輩デザイナーの元や書店に赴き、印刷や製本などあらゆる質問をしまくったという。『HYPEBEAST』から夢だった雑誌のデザインの仕事が入ったのもこの年だった。2017年には全活動を「アクチュアルソース」に統一。その翌年、A24からマーチデザインの依頼が来る。JPによれば「(A24には)Tシャツ一枚しか商品がなかった」頃の話だ。
Common Area
ランチをしたりミーティングをしたり。
約20年前、プロボのストリートで遊んでいた二人がプロボを拠点に始めたASは、いまや世界の業界トップ・クライアントを抱えるデザインスタジオ/出版レーベルへと成長した。
「大都市のほうがいいのではと悩んだことは何度もあった」が、いまは彼らのストアを訪れることを名目にプロボを旅のルートにする人が後を絶たないし、峡谷で散歩後に仕事に来る生活に代わるものはない。あくまでもマイペースなまま「あ、『ショップリフターズ』は10号で完結したけどね」と最後に衝撃の告白を受ける。「でもノーウォーリー! 今後は『ASB』と題してインテリアの本も計画しているし、いつか書店も展開したいと思っている。本は僕らにとっての始まりであり、永遠のものだから」
インフォメーション
ACTUAL SOURCE
アクチュアルソースの本をはじめ、アパレル、ホームグッズなどが一堂に揃う。ユタ州最大の都市、ソルトレイクシティから車で45分ほど。
◯E 500 N #103, Provo, UT USA 10:00~18:00 金~日休
Official Website
https://actualsource.org/
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