
1994年、山口県生まれ。お笑いコンビ・ラランドのツッコミ担当。読書家芸人として知られ、ネタは書かないが小説は書くという初めてのパターンで小説家としてもデビュー。初の作品集『不器用で』はロケ地の『紀伊國屋書店 新宿本店』でもとても売れていた!
新しい小説を読み、楽しむことから
読書の深遠な世界が広がっていく!?
映画や音楽の場合、新作、新譜を自然とチェックしている人ってたくさんいる気がする。けど、ふと考えると、いわゆる小説、純文学というジャンルにおいては、新刊をチェックすることの楽しさっていうものがあまり広まっていない気がする。確かに、読書という聞こえだけでもネガティブな印象を抱く人がいるかもしれない。でも、最近の純文学はひと昔前とは異なり、宇佐見りんの『推し、燃ゆ』や高瀬隼子の『おいしいごはんが食べられますように』など、芥川賞受賞作といえど、難解なだけではなく、シンプルに面白いものも多い。このままではもったいない! 年間100冊読書をしてきたという読書家芸人であり、自らも小説を書いているラランドのニシダさんと『紀伊國屋書店 新宿本店』の店内を巡りながら、最近読んだ新刊の中から良かった5冊を見つけて、語ってもらった。
Select 1 ハンチバック 市川沙央

「本を読み慣れていない人にとっては、昔の作品て本当に読むのが大変だと思います。(三島由紀夫の)『金閣寺』とかあそこら辺はやっぱり難し過ぎるじゃないですか。そういうのが教科書に載ったりしていると、それをその時代ならではのものではなく、普遍的な文学だと捉えてしまうきらいがすごくあると思うんです。だから、文学に対して苦手意識を持っている人が、今本屋で売ってる、同時代の人が書いた小説を読んだら、きっと驚くだろうなっていう気はしますよね。だから、そういう意味で新刊が一番とっつきやすいはず。もちろん、教科書に載ってるやつも面白いけど、文学の標本ていう感じがあって。いきなり標本を見せられたら難しいけど、実際に生きてるものを見たら違うと思うんですよね」
Select 2 笑って人類! 太田 光

なるほど。さすが毎月書店に行き、10冊くらいをまとめ買いして積読も維持しながら、日々読書に勤しむニシダさん。古典と現代作品のどちらが優れているとかそういう話ではなく、自分たちが暮らしている、今の時代から生まれた作品が必然的に持っているムードを入り口にもっと読書を楽しめるようになる。それも新刊を読むことの良さの一つなのかもしれない。
Select 3 ##NAME## 児玉雨子

「小説を読んでいて、わからない言葉が出てきたら電子辞書で調べて線を引くんですけど、昔の作品だとめちゃくちゃわからない言葉が出てくるから線だらけになるんです。全集とかで読んでると、そもそもどう調べたらよいのかわからない漢字も出てくるし。これで〝からだ〟って読むんだ……みたいな。僕は基本的に芥川賞の候補になった作品は全部読むんですが、読みやすい作品が本当に増えたと思います。でも、それは小説っていうものが時代を映すものだからかもしれませんね」
Select 4 ミーツ・ザ・ワールド 金原ひとみ

Select 5 オールアラウンドユー 木下龍也

インフォメーション

紀伊國屋書店 新宿本店
2023年1月に数年かけて行われていたリニューアル工事が完了。文学のフロアは2階。ニシダさん曰く「ちょっと怖くなるくらい滅茶苦茶いい本屋」。
◯東京都新宿区新宿3-17-7 ☎03·3354·0131 10:30〜21:00 無休