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ポパイのウェルフェア・フォーラム。

こんな福祉もあったのか! 目からウロコの、ちょっと身近なウェルフェアコラムをお届け。

2023年10月18日

photo: Naoto Date, Jun Nakagawa
illustration: ZUCK
text: Neo Iida

 福祉と聞いて思い浮かぶのは、高齢者の介護、障害者の支援、児童養護……ナドナド。自分とは遠いものと思いがちだったけれど、今ってもうそんなことない。現場で働く若者たちや、ワクワクするトピック、ケアを感じる選書を通じて、福祉について考えてみました。

COLUMN 01
美容師がカットしてくれる、老人ホームの訪問美容。

西武柳沢の有料老人ホーム、プレザンメゾン西東京では理美容室を完備。入居者は店舗のような空間でカット、カラー、パーマなどの施術が受けられる。

 完全個室の美容室にマダムがひとり。ここは銀座か白金か……なんて思ったら、なんと有料老人ホームの一室だった! ハサミを入れるのは美容師の坂本貴宏さん。福祉事業を展開する会社に所属し、介護施設を訪れて髪を切っている。

「7年前からこの仕事をしています。パーマやカラーもやりますよ」

 青山のサロンに勤め、上司の独立とともに新しい店に移ったが、目の病気を患い休職。その頃、ふと祖母のことを考えた。

「おばあちゃん子だったし、いつか施設に入っても髪の毛を切ってあげたいなと思ったんです。それで訪問美容という仕事を知って」

 特に昨今、若い頃に高度成長期だったイケイケ世代が高齢化。髪型にこだわるのも当然で、訪問美容の需要が増えているんだそう。ただ、やはりサロンワークとは勝手が違う。

「車椅子の場合は? 首がガクンとなったら? 試行錯誤を重ねました。利用者さんごとにリズムがあるので、合わせるよう心がけています」

 身の引き締まる思いもするがやりがいを感じるのは、最後のヘアカットに立ち会えることだという。

「次は難しいかも……という方もおられます。なるべく体調がいいタイミングを探して切ってあげたい。どんなときもさっぱり気持ちよくいてほしいですから」

プロフィール

坂本貴宏 美容師

坂本貴宏

さかもと・たかひろ|1985年、栃木県生まれ。美容師。青山の美容室で働いたのち独立。2016年にEE21に入社し、系列会社が手掛ける福祉施設で訪問美容を行う。現在、東日本エリアの責任者としてスタッフの教育も担当する。趣味はフットサル。


COLUMN 02
方南銀座商店街で発見!クラフトビールを造る福祉作業所。

店頭で購入できる瓶入りクラフトビール(ローカルグッドエール¥680など。)

 方南町のクラフトビール醸造所は就労継続支援B型施設でもある。

「コロナ禍の商店街を活性化するためにクラフトビールを造る話が出て、『ソーシャルグッドロースターズ』で質のいいコーヒーを作っていた僕たちに声がかかったんです。地元の方々がクラフトビールに馴染みがなかったので、度数を4.3~4.5%に抑え、麦とホップと香りを重視した飲みやすいビールにしました」。

 そう話すのは一般社団法人ビーンズの坂野拓海さん。醸造は未経験だけれど、障害のある方々が焙煎士として成長するのを見た経験からチャレンジを決めたそう。すでに醸造士が育ち、季節のビールを含め6種類のビールを醸造中。度数0.1%未満のビールもあるから、お酒が弱い人も安心。

インフォメーション

方南ローカルグッドブリュワーズ

方南ローカルグッドブリュワーズ

2022年3月、方南町ビールプロジェクト実行委員会(方南銀座商店街、NPO法人ふるさとネッツ、一般社団法人ビーンズ)が設立。就労継続支援B型施設の醸造所。生ビール(¥500)が味わえるDIYタップも完備。

◯東京都杉並区方南2-11-7 14:00~21:00、日13:00~19:00 月~木休

Official Website
www.honanlocalgood.jp


COLUMN 03
その発想はなかった!車椅子が人力車に大変身。

ワンタッチで車椅子に取り付けられる「JINRIKI® QUICK」(¥54,780)。

 よく浅草で見かける人力車。あの要領で車椅子の前輪をピッと持ち上げたら避難しやすいのでは? そんなアイデアを形にしたのが、〈JINRIKI〉の中村正善さんだ。東日本大震災のニュースを見て車椅子の避難が困難だと感じ、解決できる道具を作ろうと脱サラ。

「車椅子の弟と遊びに行くとき、よく前輪を持ち上げて走ってたんです。それがヒントに」

 車椅子はオーダーメイドも多いから、汎用性のある道具にしなければ。試作を繰り返し、どんな車椅子にも30秒で装着できる「JINRIKI® QUICK」を発明。特許も取得した。前輪を持ち上げるから山道や雪でもスイスイ進める。京都市内や鳥取砂丘など、観光用途での貸し出しも増えてるんだって。一家にひとつ置いておきたいね。

トレッキングでも応用できる。北海道の旭岳登山にもチャレンジ。
豪雪地帯ではソリの要領で牽引。

COLUMN 04
銭湯にもフェスにも行きたい!そんな願いを叶えます。

介護者も入浴できるよう浴槽は2つ(要連絡)。くるっと回れば、負荷をかけず湯船に入れる回転椅子を設置。

 車椅子で暮らしていたって、たまには銭湯の熱い湯に浸かりたいはず。そんな思いを叶えるのが墨田区『御谷湯』の福祉風呂だ。「下町の銭湯はみんなのための場所だから」という先代の思いを継ぎ、リニューアル時に設置したという。車椅子のまま脱衣所までスーッと入店し、家族と一緒にちゃぽん。最高だね。さらに音楽ラバーのためのサービスも。障害があったり車椅子だったりすると好きなライブに出かけるのもハードルが高いけれど、そんなときは「WASSUP」に相談だ。介護保険の「移動支援」として、ライブの提案から会場までの送迎まで全力でケアしてくれる。

WASSUP
居宅介護、重度訪問介護、移動支援を軸とする「WASSUP」。移動支援では外出サポートに加え、利用者が好きそうなライブやフェスの提案をしてくれる。イベント運営で培った経験をもとにGREENROOM FESTIVALや日比谷音楽祭などをチョイス。会場のバリアフリー状況も確認してくれる。

インフォメーション

御谷湯

戦後、墨田区石原で開業した老舗銭湯。2015年に銭湯設計を手掛ける今井健太郎さんがリニューアルし、その際に福祉風呂が併設された。番頭を務めるのはロックバンド片想いのボーカルでもある片岡シンさん。福祉入浴¥1,000
◯東京都墨田区石原3-30-10 ☎03·3623·1695 15:30~2:00、日15:00~24:00


COLUMN 05
『太鼓の達人』とレーシングゲームで、シニアだってeスポーツ!

沼津はeスポーツが盛んで、導入前に沼津eスポーツフェスで体験会を実施したという。本格的なレーシングシミュレーターも導入したレーシングゲームは、男女問わず運転経験がある方に人気。

 レーサーばりの熱い眼差しでコースを走行するおじいさん。一方、ドンドンカッカと太鼓をバチで叩くおばあさん。ゲームセンターにしては和やかだけれど、ここは沼津の「デイケアさとやま」。今年からレクリエーションの一環でeスポーツを取り入れている。「近年“シニアeスポーツ”が注目されています。ゲームの世界なら高齢者も様々なアクションができますから。ゲームで刺激を受けた失語症の方が『難しいなあ』と声を発した事例もあるとか。単純に楽しいので参加者も増えました」と経営戦略室の柳田礼央さん。世界を揺るがすシニアゲーマーが誕生する日も近い!?

インフォメーション

デイケアさとやま

沼津「さとやま整形外科内科」の通所リハビリテーション施設。半日型デイケアとして理学療法士による運動療法で身体機能回復を目指す。

◯静岡県沼津市東原560-1 ☎055·939·5031

Official Website
www.satoyama2.jp


COLUMN 06
スニーカーもモビリティも、移動手段の進化がスゴイ。

GLM Electric Mobility Scooter
〈GLM〉が2020年に発表した次世代型シニアカー。「球」をイメージコンセプトに“乗りたくなる”デザインを実現。歩行者への圧迫感も軽減した。しかもEV。市販化に向けて試作機を開発中。
NIKE Go FlyEase
2021年に〈ナイキ〉がリリースしたスニーカー。手を使わずとも、足でぐっと踏み込むと綺麗にフィット。着脱が容易なハンズフリー構造になっている。¥16,500(NIKE

 EVとか自動運転とか、もう車の最新技術ではびっくりしなくなったけど、さすがにこうくると「未来カーだなあ」と言わざるを得ない。〈GLM〉が発表したシニア世代向け小型モビリティのコンセプトモデルは、丸っこいフォルムに、つやっと光るシルバーのボディ。小型モビリティというのは、おじいちゃんやおばあちゃんが乗っているスクーターみたいなアレのこと。“自動車から乗り換えたくなるモビリティ”を掲げているそうで、アレがコレになると思うと老いも怖くないかも? 身近な移動手段といえば靴。〈ナイキ〉が障害のあるアスリートの意見を参考に開発した「Go FlyEase」は、手を使わずに履けるスグレモノ。妊婦さんや高齢者にも便利な一足だ。


COLUMN 07
その場で握るからおいしい。川崎駅のホームレス支援。

この日の最終目的地、川崎駅前でのひとコマ。最近はボランティアも増え、おかずやデザートを持ってきてくれることも。

 木曜夜の川崎駅には、路上でおむすびを握る若者がいる。リヤカーに炊飯器をのせ、ほかほかのご飯をキュッキュッと結んでいく。彼は濱野怜さん。地元の川崎駅周辺で、ホームレス状態にある人たちに食料支援を行っている。きっかけは同じ川崎駅前での出来事だった。

「選挙の手伝いをしていたら、女性が倒れて泣き叫んでいたんです。僕は声がかけられなかったんですが、ひとりの男性が駆け寄ってハンカチを渡したんです。応援旗には『変えよう』と書いてある。僕は政治で格差をなくしたいと思っていたのに、無意識に目の前の女性を除外していた。そのことに気づいて、向き合おうと」

 ボランティアセンターへ行き、夜回りを体験。余っていたリヤカーを借りて炊き出しを始めた。せっかくなら温かいものを食べてもらおうと思い、おむすびに。

 「家族内に問題がある方、健康状態が芳しくない方、精神疾患や発達障害がある方、頼る人がいなくて孤独な方もいる。貧困ビジネスも近寄ってくる。おじさんたちと話すといろんなことが見えてくるんです」。いつか、彼らのための場所を作りたいと濱野さんは考えている。「今考えてるのはコーヒーショップ。おじさんたちは人生の渋みを知ってますからね(笑)。やり直しに向けて、社会と路上の間のような場所を作れたらと思っています」

プロフィール

濱野 怜

はまの・れい|2001年、神奈川県生まれ。中央大学を卒業し、現在慶応大学大学院に在学中。「ホームレス支援CoE」を立ち上げ、チームメートの神領龍生さん、ボランティアの方々と、社会復帰の一助となるよう、川崎駅周辺のホームレス状態にある人の食料支援を行う。“ホームレスの友達大学生”としてSNSでの発信も積極的に行っている。

Instagram
https://www.instagram.com/rei.hamano2000/

ananの記事はこちら。
https://ananweb.jp/anan/509215/

こここの記事はこちら。
https://co-coco.jp/series/nursing/aoicare/

本プロジェクトは厚生労働省補助事業 令和5年度介護のしごと魅力発信等事業(情報発信事業)として実施しています。