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【#3】急かされながら創作することへの憧れ

執筆: 髙城晶平(cero)

2023年4月22日

photo & text: Shohei Takagi(cero)
edit: Yukako Kazuno

我が家の長男は最近iPadのアプリでマンガを描いている。マンガといっても大層なものではなく、主に1ページで終わるギャグマンガなのだが、定規で線を引いていた自分たちの世代と比べると、サッサと画面上でコマ割りをして色まで塗っているのだからいつも感心してしまう。

ある日、彼が描いたものを覗いてみると、いつものマンガとは違い、走り書きのメモのようなものがあった。そこには「はいはいマンガかきます。たかぎより」と描いてあり、そのメッセージの横にはアシスタントが苛立ちながら「アイツ〜」と憤っている。これは何かというと、つまり彼はアシスタントに急かされてマンガを描いている、というロールプレイのなかでこのメモ書きを残しているのだ。この行為には自分も思い当たる過去があるので、とても共感できた。僕の場合は自由帳に描いていたマンガで、枠外に苛立っている架空の編集者がいて、「はやくしてくださいよ〜」などと小突いてくる様子を落書きしたりしていた。

要するに我々は、誰に頼まれたのでもない創作行為を、誰かに待望されているものとして書き換えたいのだと思う。そういえば、大橋裕之さんのマンガで、素人のマンガ家なのに編集者役に〆切をどやしつけてもらって興奮するという、すごい面白い話があったよな…。

ところで、僕は現在いちおうプロの音楽家として活動しているのだが、あまりこんなふうに〆切をシビアに言いつけられたり制作の横でピリピリ待たれたりした経験ってない。ないと思う…。インディーズというユルめな業界に属しているせいなのか、所属しているレーベルが特殊なのか、自分が単にそれを認識してないだけで、誰かを密かに苛つかせているのか、わからないけど。きっとメジャーで契約を交わしてるとか、楽曲提供の依頼とか、各々状況は違うんだろうと思うんですけど、たまに「あ〜〆切が〜!!」みたいなことをSNSにあげている同業者を見ると、大変だな〜と思う反面、頭にはマンガの枠外に描いていた架空の編集者が浮かんできたりする。みんな本当は急かされて創作している状況にウットリしてたりするんじゃないのか…?とか、絶対そんなことはないと思うんですけど。

少し話題が逸れるけど、先日阿佐ヶ谷のRoji(僕の家族が経営してるバーです)で、趣味でおやじバンドやってる常連の人と話をした。なんでも最近オリジナルソングを作っているそうで、「バンドメンバーに“早く作れよ”なんて言われちゃっててさ」みたいなことを言っていた。その表情はとても嬉しそうで、やっぱり待望されている、というのはプレッシャーもあるけど気分良いものだよな、と思った。その創作がたとえ誰にも待たれていないものだったとしても、自分が自分の生み出すものを待望している、という状態は、とても健全で素敵なことだと思う。

プロフィール

髙城晶平(cero)

ceroのボーカル・ギター・フルート担当。2019年よりソロプロジェクト “Shohei Takagi Parallela Botanica”を始動。2020年4月8日に1st Album『Triptych』をリリースする。その他ソロ活動ではDJ、文筆など多岐に渡って活動している。5月24日にceroの新作『e o』をリリース予定。