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いま食べたい – 鹿児島県垂水市のカンパチ・海の桜勘 –
2022年10月27日
photo & text: Chie Yokota
edit: Masaru Tatsuki
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鹿児島県垂水市にある垂水漁協は、カンパチの出荷量日本一を誇る。漁協の目前に広がる錦江湾には、桜島を背景にカンパチの生簀がずらりと並んでいる。平均水温が高く、潮の流れが速い環境がカンパチの生育に適しているのだ。夏は日の出前、朝4時ごろから生簀での作業が始まる。
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垂水漁協が手掛けるカンパチのブランド魚「海の桜勘」は、桜色の身と桜島を望む漁場にちなんで名づけられた。餌にこだわり、鹿児島県産のお茶の葉と焼酎粕を餌に混ぜて、臭みがなくタンパク質と脂質のバランスのいい魚に仕上げている。さらに、茶葉のカテキン効果で血合部分の変色が少ないのもおいしさのポイントだ。
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「県外の人が遊びに来たときに食べてもらうと、この身はサクサクしていておいしいねって言われます」と和美水産の篠原重人さん。水揚げしたカンパチは即〆をして脱血、すぐ冷やし込みをして、鮮度も弾力も保持された状態で出荷される。「さすがに3日も経つと歯ごたえは柔らかくなっていくけど、その分熟成して旨味が増します」
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篠原さんは養殖歴20年。東京でデザイナーとして働いた後に、帰郷して家業の養殖に携わるようになった。「帰ってきてもすることは同じです。デザイナー業で培ったように、必ず顧客の求めるものを提供すること」
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「保守的にはなりたくない」
ブリ養殖に比べて、カンパチ養殖はまだ歴史が浅い。餌の材料や配合、適した資材はまだ研究・開発途上にある。「毎年餌の材料や配合、仕組みを変えてみたり、いろんな変化球を試してみたりしながら養殖をしている」と篠原さん。効率の悪い部分が見えたら、次はそこをどうしたら段取りよく進められるか考えて次から改善、それを常に繰り返している。
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国内市場は飽和状態にあるため、「海の桜勘」は現在アジアやアメリカへの輸出に力を入れる。篠原さんはタイでカンパチ解体ショーや商談会でのPRに携わる。
「漁協を担っているわけですから輸出拡大も目指さないといけない。それでも、原点の『俺のカンパチを食ってくれ』って気持ち、自分のおいしい魚で喜んでもらいたいって気持ちは大切にしたい」
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漁協を挙げて「海の桜勘」の情報発信に努めている。高級魚であるカンパチは、刺身や漬けなどシンプルな料理はもちろんのこと、煮る、焼く、揚げるなどどんな調理法でもおいしく食べられる。脂質とタンパク質のバランスが良いため、ほどよい脂のりとさっぱりとした後味があり、カルパッチョ、ムニエル、しゃぶしゃぶ、鍋……どの料理にも合うのだ。漁協直営の食堂や漁業者たちの間ではフライも人気だ。
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切り身に塩コショウで下味を付けて、小麦粉、溶き卵、パン粉の順に付けてからりと揚げる。パン粉は生パン粉を使うと良い。衣にボリュームが出てサクッとした食感になり、カンパチの身の柔らかさをいっそう引き立ててくれる。
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高温の油でカラリと揚げたカンパチをごはんの上にのせて甘めのソースをたっぷりかける。カンパチの身がふっくらと柔らかく、サクッとした衣の食感と相まってたまらなく旨い。体を動かして疲れた時など、こういうガツンとくる食べ応えのあるフライは最高だ。
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日本一のカンパチの産地として、垂水漁協は今後増々の輸出拡大を期待されている。しかし、自然を相手にしているからこそ毎年思い通りに行くわけではない。今年2022年は台風14号、夏場の高水温の影響が大きく歩留まりが悪くなりそうだ。「人間が生簀を作って住まわせている。本来はそこに住みたい魚たちではないわけだから、与えられた環境の中で命を全うしてくれるカンパチには毎年毎年感謝をしています」と篠原さん。常にできる限りの最善策を探り、よりよい養殖を追求して毎年最高のカンパチを作っている。
「俺のカンパチ、食べてみんやんせ」
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