CULTURE

長野県上田市の『エディストリアル・ストア』へ。

2022.10.07(Fri)

photo: Naoto Date
text: POPEYE

日々、取材をしていると「昔ポパイで働いてたんだ」という人に出会うことがある。時期は違えど、そういう方に出会うと同じ学校を卒業したOBに遭遇した感覚になり、勝手に親しみがわいてくる。そして、その先輩たちの生き方や仕事が枠にハマっていないことが多く、改めてPOPEYEはこういう個性の連続で生まれているんだと真面目に考えたりもする。

そんな中でも“オリジナリティあふれる”という意味では、特に強烈だったのがスタイリストの小沢宏さんだ。1990年代から第一線で活躍されている大先輩ということはもちろん知っていたが、その小沢さんが40年以上暮らしていた東京から拠点を故郷の長野県上田市に移し、お店を始めるという噂を聞き、先日、訪ねてきた。

小沢宏 (おざわ・ひろし)| 1964年、長野県上田市出身。大学生の頃、スタイリスト御供秀彦さんのアシスタントとしてポパイ編集部で働き始める。独立後、雑誌のファッションページ、ブランドカタログのスタイリングを数多く手がけ、2003年には自身のブランド〈Numero Uno〉の立ち上げもおこなう。

「おー!よく来てくれたね!」と満面の笑顔で迎えてくれた小沢さんは、会った瞬間に年齢や肩書きなどを忘れさせるような柔らかい迫力があった。ハイブランド、古着、ハンドメイド、さらにコーヒースタンドまでは入った縦横無尽な『EDISTORIAL STORE(エディストリアル・ストア)』を目の当たりにして、こちらの頭に中に浮かんだ「?」マークを察知してくれたのか、わかりやすく店を始めた経緯を教えてくれた。

「ある日、スタジオで物撮りをしていたときにカメラマンが『それ、古着なんですね。小沢さんってハイブランドしか着ないと思ってました』と言ったんです。それを聞いて漫画みたいに雷に打たれたような感覚があって(笑)。そう言われると自分は、高い・安いや古い・新しいで洋服を見ていないなと。普通、洋服屋さんは、その中のどれかに基準を合わせて服を揃えていきますが、スタイリストの自分ならそういった枠にハマらない店ができるんじゃないかと思ったんです」

お店を始めるにあたって、もう一つ大きなきっかけになったのがアパレル業界の在庫問題。

「同じタイミングで、自分のブランドの忘れていたサンプルやB級品が数点出てきたことがあったのですが、それなら大きいセレクトショップやブランドはどれだけの在庫があるんだろうと感じて、そのときに、自分が考える時代や値段で括らない服のセレクトで、その問題を解決できるのではと思ったんです」

そこからのスピード感が早い。長年の経験を生かし、信頼関係のあるブランドやメーカーからデッドストックやサンプル、B級品を仕入れることに。

「メーカーの倉庫で数年眠っていた、デッドストックの中から今の時代にも着て欲しい、今だからこそ着て欲しい服をピックアップして“ライブストック”と名付けて並べています。あとは、ドローコードを少し変えたり、異素材を足したアイテムは“マッシュアップ”呼んでいます」

新たな視点を加えることでまったく違う魅力を引き出す小沢さんならではの”楽しみ方”は、お店の随所隠れている。例えば値札と一緒についているメモ。

小沢さんの手書きコメントが添えられているのだが、書かれている内容はウンチクではなく、「なぜこの服が好きか」だったり「出会った経緯」だったり「自分なりの着方」だったりする。必要最低限の情報は書きつつ、ノリや独自の使い方を伝えるこの感じ。まさにポパイのキャプションだと勝手にシンパシーを感じた。

「御供秀彦さんのアシスタントとしてポパイ編集部で働き出し、原稿、リース、ロケハンなどもやっていたので、スタートは編集者という感覚があるんです。このお店も“雑誌”と捉えていて、今後はポップアップや季節に合わせた特別企画など“特集”を組んでいく予定です」

東京に戻ったある日、小沢さんから「特集をやります」とお知らせが届いた。

その名も「カルーゾが分かる〜ぞ」。

2022年の〈カルーゾ〉のサンプル品を特別価格で販売するイベントで、〈カルーゾ〉を日本でも最もよく知る2人といっても過言ではない〈ユマノス〉代表の中野浩規さんと栗野宏文さん、そして店主でスタイリストの小沢さんが接客をしてくれる。もちろん、ただ接客するだけではない。隣のヴィンテージショップ『dada』の古着やエディストリアルストアの商品を使ってコーディネートの提案もしてくれるのだ。3人が接客してくれるのは10月8日。連休初日にでかけよう!

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