ライフスタイル

【#2】幸せって?

2022年9月18日

photo & text: Salam Unagami
edit: Yukako Kazuno

 「幸せってこういうことじゃないか?」
 8月31日の午後、裏渋谷の庶民派韓国焼き肉屋の座敷で、たっぷりの焼肉を食べて満腹のソクラテスがこう言った。彼は初の日本ツアーを行ったキプロスのバンド、Monsieur Doumani(ムッシュー・ドゥマニ)に同行してきたキプロスの伝統舞踊ダンサーだ。

 僕が彼らと知り合ったのは、2019年10月にフィンランドのタンペレで開催された、ワールドミュージックのエキスポ『WOMEX』で、彼らにインタビューをしたのがきっかけだ。その時、彼らは翌年に日本ツアーが決まっていると言っていたが、コロナ禍でキャンセルになってしまった。その後、リーダーのアントニスとはSNSを通じて仲良くなり、頻繁に近況を伝え合い、僕のJ-WAVEの番組『Oriental Music Show』にはリモートゲストで登場してもらった。そして、この夏、初の来日が実現した。

8/30 『Sukiyaki Tokyo』@WWW渋谷に出演したMonsieur Doumani

 僕は可能な限り彼らに同行した。最初の公演先の富山南砺市では彼らの演奏を楽しみ、夜には一緒に酒を飲み、僕が司会を務め、ソクラテスが主導するキプロスの伝統舞踊のワークショップも行った。その後、東京に戻り、彼らは渋谷WWWでもライブを行った。

 その翌日、オフ日の彼らを誘い、インタビューを兼ねたランチに出た。トロンボーン奏者のデメトリスがかなりのアジア通のため、彼らは既にラーメン、寿司、天ぷら、お好み焼き、焼き鳥などは一通り食べていた。そこで色々迷った末に韓国料理店に案内した。畳の座敷に座った彼らを前に、僕が肉奉行となり、テーブルの真ん中にセットされた焼き肉グリルで、ねぎ塩タンや上ロース、ハラミや和牛ロースなどを一枚ずつ焼いて、ふるまった。そこでソクラテスの口から出たのが冒頭の言葉だった。

東京公演の翌日、裏渋谷の庶民派韓国料理店でくつろぐメンバーたち。

 「そのとおりだよ。思うに、幸せとは素晴らしい音楽を聴き、美味い料理を食べ、良き友人たちと会うことさ。」と、前回のコラムに書いたのと同じことを僕は答えた。するとアントニスも「確かに、音楽、料理、友達だ。What else?(それ以外に何が必要?)」と加わった。そして、デメトリスが「ヤマス(ギリシャ語で乾杯の意味)! カンパイ!」とレモンサワーのグラスを挙げた。その時の僕たちにはまさにその3つが揃っていた。

 翌日、ムッシュー・ドゥマニは沖縄へと飛び、台風11号が迫る中、ライブを行った。その後、一週間の南国滞在を楽しみ、次の公演が待つルーマニアへと向かった。また近いうち、世界のどこかで彼らに再会し、美味い飯を食べ、良い音楽を楽しめるだろう。CU Guys!

CU Guys! また世界のどこかで、もしくは今度はキプロスで会おう!

プロフィール

サラーム海上

1967年、群馬県高崎市生まれ、明治大学政経学部卒業。DJ/中東料理研究家。中東やインドを定期的に旅し、現地の音楽シーンと料理シーンをフィールドワークし続けている。NHK-FMのワールドミュージック番組『音楽遊覧飛行エキゾチッククルーズ』のナビゲーター。J-WAVE の『Oriental Music Show』では2017年日本民間放送連盟賞ラジオエンターテインメント番組部門最優秀賞を受賞。『美味すぎる世界グルメ巡礼』『MEYHANE TABLE More! 人がつながる中東料理』ほか著書10冊。

Official Website
www.chez-salam.com