①え、ウールコートを泡で丸洗いしちゃうの?

ウールコートって洗えないし、クリーニングに出すのも面倒と思っていたが、〈フェニカ〉のテリー・エリスさんは、なんと自宅で泡まみれにして洗っているという! 「水洗いするのではなく、泡で汚れを拭き取るイメージです。変わった方法に見えますが、ヨーロッパでは絨毯のお手入れとして知られるやり方です。大切なのは必ずナチュラルな石鹸を使うこと。石鹸に含まれる天然の油分がウールの栄養になるのです」。基本の手入れはブラッシングで十分。冬の終わり、よく着たコートにだけ行う。ドライクリーニング液のケミカル臭や生地を傷めるのが嫌でこの方法に取り組んで約30年、テリーさんの洋服はどれも風合いがいい。
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1.ブラシで汚れを掻き出す。
「生地に付着したホコリを掻き出すように、上から下に向かって全体を力強くブラッシングします。表だけでなく、裏や袖口など、汚れやすい場所は入念にやるのがポイントです」 -
2.洗剤を泡立てる。
「ぬるま湯をためたボウルに中性洗剤を数滴入れ、キッチンスポンジで泡立てます。水気が少なく、洗剤の濃度が濃い泡を抽出することが好ましいです」
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3.濃密な泡でまんべんなく汚れを拭き取る。
「スポンジに泡だけを含ませ水分を絞ったら、表面を拭くように洗います。これを繰り返しコート全体に泡を行き渡らせてください。裏地が付いていない場合、裏面も忘れずに」 -
4.残った泡を慣らすように仕上げのブラッシング。
「泡が塗られたことによってぺったりと寝てしまった生地を再び起き上がらせるために、コートの全体をブラッシングし直してください。これで石鹸の油分も奥まで浸透させます」
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5.日陰で乾かす。
「泡で洗っているので水気はほとんどないかと思いますが、最後は風通しのいい日陰で乾かします。水を使っていないので、縮む心配もありません。うん。いい匂いがしますね」
-用意するもの-
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北村さんが「これ、すごい消臭力ですよ」と教えてくれたのが北海道発の消臭スプレー「きえ~る」。牛尿を発酵処理することで無害化した天然成分100%の発酵液だそう。¥638(環境大善☎0157・67・6788)
教えてくれた人

テリー・エリス さん
〈フェニカ〉 ディレクター
ジャマイカ生まれ、ロンドン育ち。2003年から北村恵子さんと〈フェニカ〉を率いる。オイルドジャケットのリプルーフも自分で行う。
②食器用洗剤で洗うなんて、メガネは食器じゃないのに!

気付いたら汚れがちなメガネは日常生活のルーティンの中で綺麗にしてしまおう。畠中将秀さんは20歳の頃から14年間、お皿を洗うついでに食器用洗剤でメガネもクリーニングしている。「父がやっていた洗い方で、確かに中性洗剤を使えば皮脂が落ちるし、摩擦が少ないからガラスのコーティングも剥がれないし、合理的だなと思ったんです」と話しながら〈モスコット〉のメガネに洗剤をつけて指で優しくきゅきゅっと。水滴をクロスで拭き取っているときの感覚は革靴をポリッシュしているときと同じなんだそう。
-用意するもの-

教えてくれた人

畠中将秀 さん
「OVERRIVER」 セールス
アパレルブランドのPRや流通を行う「オーバーリバー」で営業を担当。たま~に、同社が運営する駒沢のショップ『SKOOL』にも立つ。
③最後は結局、力技なのか。小さい服はパワーで伸ばす!
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教えてくれた人 / ジョシュ・ローター さん『In Vintage We Trust』 オーナー
バンドT、スポーツアイテムなどを取り扱う、トロントのヴィンテージショップ。
〈ベター〉のアヴィ・ゴールドや料理家マッティ・マセソンともマイメンな仲。
洗濯を繰り返すうちに、気付けばワンサイズくらい服が縮んでいることもしばしば。そこへ「どんな服でも伸ばせるぜ」と高音ボイスを響かせる救世主登場! 彼こそがトロントのヴィンテージショップオーナー、ジョシュ・ローター。「ヴィンテージTシャツでLサイズなら手に入るけれど、XLはなかなかない。だったら伸ばせばいい! と思い立ち、5年ほど研究してこの特別な方法に辿り着いたんだ」。試すか試さないかは、あなた次第!
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1.コンディショナー液を作る。
「まずは服をしっかり浸け置きできるくらいにデカいバケツを準備するんだ。たっぷりの冷水をためて、コンディショナーをドバドバと入れる。毎日シャンプーの後に使っているものでいい。量? そんなの気にしたことないが、水全体にまんべんなく行き渡るくらいだな。きっとコンディショナーは溶けないだろうけど、そんなこと気にする必要ないさ!」
「次は伸ばしたいものをこの液に最低30分浸け置きだ。今日はアジャスターなしのキャップと’90年代の〈チャンピオン〉の
リバースウィーブ、’90年代の『フィリーズ・ブラント』のTシャツにするか。おっと、帽子はつばまで入れていいぞ」

「よし、きっちり30分浸けたな。そしたら洗濯機で洗濯するぞ。洗剤を入れてノープロブレム。俺でも理由はよくわからないんだが、洗剤を入れたほうが生地は伸びやすくなるんだ。キャップは洗えないから真水で洗い流してくれよ」
「洗濯後は力の限り伸ばしたい方向に引っ張れ! 大事なのは生地の端から順にストレッチすること。真ん中からやると左右のバランスが崩れるぞ。ヨレるから襟を持つのもNGだ。キャップは後ろ側だけを丁寧に、スウェットは分厚くて伸びにくいからエクストラパワーだ!」
「最後はバスタオルの上に綺麗に広げて一晩乾かすぞ。縦に伸ばすときは両裾に重しを、横に伸ばすときは服の脇の全域に重しを置くんだ。
なぜかって? そうすれば生地が歪まないんだ」
-1 Day Later…-
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「見てくれ! Tシャツとリバースウィーブは縦に13㎝、キャップは3㎝伸びたぞ、エクセレント! 今回はやらなかったが、ウールのニットも大きくできるからネクストステージとしてやってみてくれ!」
-用意するもの-
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「生地を伸ばす鍵はコットンの割合にかかっている。ポリエステルやレーヨンよりも天然素材のほうが伸ばしやすくて、形も綺麗に保てる。初めて伸ばすならコットン100%のTシャツからがベストだ!」
-アドバイス-