確かにこれは変わったお手入れだ!【前編】
2022.03.28(Mon)
photo: Naoto Date, Aaron Wynia (Toronto)
illustration: Hiroaki Seto
coordination: Aki Takabatake (Toronto)
text: Shintaro Kawabe
2022年4月 900号初出
①え、ウールコートを泡で丸洗いしちゃうの?

ウールコートって洗えないし、クリーニングに出すのも面倒と思っていたが、〈フェニカ〉のテリー・エリスさんは、なんと自宅で泡まみれにして洗っているという! 「水洗いするのではなく、泡で汚れを拭き取るイメージです。変わった方法に見えますが、ヨーロッパでは絨毯のお手入れとして知られるやり方です。大切なのは必ずナチュラルな石鹸を使うこと。石鹸に含まれる天然の油分がウールの栄養になるのです」。基本の手入れはブラッシングで十分。冬の終わり、よく着たコートにだけ行う。ドライクリーニング液のケミカル臭や生地を傷めるのが嫌でこの方法に取り組んで約30年、テリーさんの洋服はどれも風合いがいい。
-用意するもの-
②食器用洗剤で洗うなんて、メガネは食器じゃないのに!

気付いたら汚れがちなメガネは日常生活のルーティンの中で綺麗にしてしまおう。畠中将秀さんは20歳の頃から14年間、お皿を洗うついでに食器用洗剤でメガネもクリーニングしている。「父がやっていた洗い方で、確かに中性洗剤を使えば皮脂が落ちるし、摩擦が少ないからガラスのコーティングも剥がれないし、合理的だなと思ったんです」と話しながら〈モスコット〉のメガネに洗剤をつけて指で優しくきゅきゅっと。水滴をクロスで拭き取っているときの感覚は革靴をポリッシュしているときと同じなんだそう。
-用意するもの-

③最後は結局、力技なのか。小さい服はパワーで伸ばす!
洗濯を繰り返すうちに、気付けばワンサイズくらい服が縮んでいることもしばしば。そこへ「どんな服でも伸ばせるぜ」と高音ボイスを響かせる救世主登場! 彼こそがトロントのヴィンテージショップオーナー、ジョシュ・ローター。「ヴィンテージTシャツでLサイズなら手に入るけれど、XLはなかなかない。だったら伸ばせばいい! と思い立ち、5年ほど研究してこの特別な方法に辿り着いたんだ」。試すか試さないかは、あなた次第!
「次は伸ばしたいものをこの液に最低30分浸け置きだ。今日はアジャスターなしのキャップと’90年代の〈チャンピオン〉の
リバースウィーブ、’90年代の『フィリーズ・ブラント』のTシャツにするか。おっと、帽子はつばまで入れていいぞ」

「よし、きっちり30分浸けたな。そしたら洗濯機で洗濯するぞ。洗剤を入れてノープロブレム。俺でも理由はよくわからないんだが、洗剤を入れたほうが生地は伸びやすくなるんだ。キャップは洗えないから真水で洗い流してくれよ」
「洗濯後は力の限り伸ばしたい方向に引っ張れ! 大事なのは生地の端から順にストレッチすること。真ん中からやると左右のバランスが崩れるぞ。ヨレるから襟を持つのもNGだ。キャップは後ろ側だけを丁寧に、スウェットは分厚くて伸びにくいからエクストラパワーだ!」
「最後はバスタオルの上に綺麗に広げて一晩乾かすぞ。縦に伸ばすときは両裾に重しを、横に伸ばすときは服の脇の全域に重しを置くんだ。
なぜかって? そうすれば生地が歪まないんだ」
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