TOWN TALK / 1か月限定の週1寄稿コラム
LIFESTYLE

【#1】タイムリープ・クローゼット

2022.03.09(Wed)

パッとしない、野暮ったい、垢抜けない……まあ、言い方は色々だが、筆者の“私服評”である。いや、決して誰かにそう揶揄されたわけではなく、あくまで自己採点。

しかし、かれこれ40年以上生きてきて、
「そのパーカーどこで買ったの?教えて!?」
と尋ねられた記憶もないので、オシャレじゃないのは確かだろう。
そもそも、ダサい・ダサくない以前に、筆者はいつも同じ格好をしている。

デザインやコーディネイトがワンパターン、といった話ではなく、文字通り、“昨日着ていた服に今日も袖を通している”という意味。

……これには事情があった。
問題は、妻の洗濯能力の高さ。

それは思わず、
(あれ!?俺、タイムリープしてる?)
と錯覚するほどで、夜カゴに放り込んでおいた汚れ物が、翌日の午前中には丁寧に畳まれ、クローゼットへ里帰りしている。

そこへ毎日洋服を選ぶ面倒臭さも加わり、
(清潔だし、これでいーや!)
とついつい同じシャツやズボンに手が伸びてしまうのだ。

スマホのカメラロールを眺めると、もはやホラー。

自分がパーソナリティーを務めるラジオ番組でゲストの方とパシャリ、地方営業の楽屋で芸人仲間とパシャリ……隣の人物は入れ替われど、コチラの見た目に変化が無いので、いつの思い出なのか判然としない。
オシャレに疎いのは、芸風のせいもあるかもしれぬ。

正統派の漫才やコントで日の目を見ると、それ以降の芸能活動は、スタイリストのお世話になることが多い。
つまり、売れる前と後で、衣装を選ぶ人間が変わるのだ。

芸人が何組か集う大部屋で、
「今日はこういう感じでどうでしょう?」
「あっ、カッコいい!これ買い取ろうかなー」
「全然、大丈夫ですよー!」
といったスタイリストと“正統派”の楽しそうな会話を聞くとはなしに聞いていると、
(いいな~……)
とため息が出る。

ファッションのプロの力を借り、私服まで……そりゃあ、洗練されるはずだ。

一方、自称“貴族”のコスプレキャラ芸人、即ち筆者はと言えば、自前のタキシードやシルクハットをキャリーバッグから引っ張り出し、「いつもと同じ格好」になるしかない。

プロフィール

山田ルイ53世(髭男爵)

1975年生まれ、兵庫県出身。ルネッサーンスのフレーズと乾杯漫才でお馴染みのお笑いコンビ・髭男爵のツッコミ担当。主な著書に『ヒキコモリ漂流記完全版』(角川文庫)、「一発屋芸人の不本意な日常」(朝日新聞出版)、「パパが貴族」(双葉社)、「一発屋芸人列伝」(新潮文庫)がある。ラジオ局bayfmで、2022年4月から新番組「シン・ラジオ」木曜日担当のヒューマニスタとして登場。
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