ライフスタイル

【#1】お弁当

執筆: 石橋静河

2023年7月10日

photo & text: Shizuka Ishibashi
edit: Yukako Kazuno

今年の前半は舞台が2本続いた。舞台のいいところは、稽古も公演も時間のスケジュールがあらかじめ決まっているところだ。生活の予定が立てやすい。

1本目の稽古期間から、お弁当づくりにはまった。ごはんを炊いて、炒め物をして、卵焼きをつくる。ご飯の上に梅干しを乗せ、おかずを詰めていく。それだけだが、毎日のルーティンができて楽しかった。

私は作品に入ると、そのことで頭がいっぱいになってしまう。家に帰っても、現場での出来事や役柄のことが頭から離れない。お芝居を始めたばかりの頃はそうなることが正しい、というか「頑張っている証拠」だと思っていた。でも、そうしているうちに数年前から身体が悲鳴を上げるようになった。

色々考えた結果、自分でちゃんとご飯を作ることの大切さがわかった。シンプルな原材料でできた調味料を使い、バランス良く食べること。最初は食事の内容にフォーカスしていたが、毎朝お弁当を作るうちにお弁当をつくる過程こそが安らぎだと気づいた。卵焼きを焼いたり野菜を切る時間はそのことだけを考えている。なんというか、お風呂に入った後の感覚に似ている。副交感神経が優位になるということなのか。

とにかく、作りながら癒され、食べながら癒され、一石二鳥。お弁当は偉大ということだ。

プロフィール

石橋静河

いしばし・しずか | 俳優。1994年、東京都生まれ。2015年の舞台『銀河鉄道の夜2015』で俳優デビュー。初主演作『映画 夜空はいつでも最高密度の青色だ』で第60回ブルーリボン賞新人賞、第91回キネマ旬報ベスト・テン新人女優賞ほか多数の新人賞を受賞。近作に映画『あのこは貴族』『前科者』、舞台『桜姫東文章』『舞台・エヴァンゲリオン ビヨンド』、ドラマ『東京ラブストーリー』『大豆田とわ子と三人の元夫』『鎌倉殿の13人』『まんぞく まんぞく』『探偵ロマンス』など。7月期テレビ朝日オシドラサタデー『ノッキンオン・ロックドドア』に出演。

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