カルチャー
さーて、4月はどんな展示に行こうかな。
まだ間に合う!広い芸術の世界を感じる春に。
2023年4月26日
text: Ryoma Uchida
PLATINUM PRINT —肖像の回廊
@清里フォトアートミュージアム
カメラフォルダにあるものといえば昨日食べたご飯や友達とのブレブレのセルフィー、いつのものかわからないスクリーンショット。写真が身近になってからというもの、撮影する行為をかなりぞんざいにしている気がしてならない。本展では、写真が誕生した1839年よりも前から実験が行われてきた古典技法「プラチナ・プリント」の作品が並ぶ。優美な色調・繊細な光のグラデーションが美しく、写真を味わう楽しさを今に伝えてくれる! プラチナ・プリントは、いったん現像すると経年による変化が起きないという。丁寧に作り上げられ、現像時から変わらぬ姿を収めた写真作品を見ると、作品に封じ込められた光や時間、当時の被写体と撮影者の関係性まで浮かび上がってくるような気がする。それは哲学者ロラン・バルトが写真の本質を「それは、かつて、あった」ということを証明するものであると語ったように(こちらの連載もどうぞ)、ここには「かつて、あった」100年以上も前の人々との出会いが待っている!
SP_RING_2023
@アトリエももさだ
COVID-19の世界的流行やロシアによるウクライナ侵攻など、社会不安が高まる昨今。『SP_RING_2023』は秋田を中心として、芸術家たちが「反戦」「非暴力」の声を届ける展覧会だ。昨年開催した「#SUM_MER_2022」参加アーティストに加え、今回はベルギーやメキシコ、南アフリカ、中国など国外のアーティストや、秋田公立美術大学の学生・卒業生も多数参加。芸術に関わる人々からのメッセージを届ける「新聞」の掲示も気になる。不安なムードがずっと漂う近年だからこそ、展示作品が発するストレートなメッセージを受け取り、いまこそ考えるときだ!
自然という書物 15~19世紀のナチュラルヒストリー&アート
@町田市立国際版画美術館
町田の穴場スポット・町田市立国際版画美術館で開催中の「自然という書物」展。こちらは15世紀から19世紀までの西洋のナチュラルヒストリー(自然誌/博物学)とアート(美術/技芸)のつながりに注目し、人間が表してきた自然のすがた・かたちを紹介する展覧会となっている。活字・版画などの印刷技術が果たしてきた役割を確認するとともに、自然の図解に用いられた美術の表現手法も見逃せないポイント。幻想・空想の動物への自由な表現や精緻な植物図解など、先人たちの記述・描写にかける情熱にびっくりすること間違いなし。会期も後半で、展示替えならぬページ替えが行われているので、一度行った人もぜひ!
ラテンアメリカの民衆芸術
@国立民族学博物館 特別展示館
北はメキシコ、南はアルゼンチンまで。「ラテンアメリカの民衆芸術」では、豊かな先住民文化や、流入してきたキリスト教文化、そしてそれらを受け入れ融合し、発展してきた独自の芸術様式を一望できる。その造形や配色のセンスに「かわいい!」という感想で消費してしまいそうになるが、そこに秘められた搾取構造や暴力への批判的な視線・精神性を映し出す展示にはハッとさせられるものがある。生活に身近なアートだからこそ、暮らしの問題そのものを映し出す鏡として芸術が機能している。そう、ここにあるのはあくまで「Arte Popular(アルテ・ポプラル)」と彼らが呼ぶ世界そのものなのだ!
木村全彦展「private eyes」
@Goozen
昨年、ウェブでも取材をさせていただいたギャラリー『Goozen』が一周年を迎えた! 「京都市ふしみ学園」(生活介護施設)に2008年に誕生したアート班「アトリエやっほぅ!!」所属のアーティスト・木村全彦氏の個展「privete eyes」を開催中。木村氏の濃い筆圧と鮮やかな色遣いが美しく、鑑賞する私たちにもインスピレーションを与えてくれる。障害のある人もない人も全てを巻き込んでくれる広い世界に飛び込んでみよう。周年記念グッズも要チェック👍。
ダムタイプ|2022: remap
@アーティゾン美術館
1984年に京都市立芸術大学の学生を中心に結成され、日本のアート・コレクティブの先駆け的存在であるダムタイプ。そのメンバーは流動的で、本展では新たなメンバーとして坂本龍一を迎え、第59回ヴェネチア・ビエンナーレ国際美術展・日本館展示で発表されたダムタイプの新作《2022》を再構築。《2022: remap》として日本初公開する。コロナ禍の影響で無料配信されたことも話題だった代表作《S/N》(1994)では、シグナル(S)とノイズ(N)の関係性と社会が直面する諸問題の表現が切実に描き出されていたように、身体とテクノロジーの関係を独自な方法で舞台作品やインスタレーションに織り込んできた彼女/彼らであるが、音を聴くことを探求し、「アウターナショナル」として世界に接続してきた坂本龍一がここに(コラボレーションやフィーチャリングではなく)”加わる”ことの意味を考えながら鑑賞したい。
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