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『旅人の必需品』を観る。

ホン・サンス(監)

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「月刊ホン・サンス」と銘打ち、今月から5ヶ月にわたって毎月新作が公開されるというホン・サンス。記念すべき1作目の主人公は、韓国で暮らすフランス人女性イリスだ。韓国人相手にフランス語を教えている彼女が、生徒や居候先の青年らと交わすいかにもホン・サンスらしい他愛もない会話を、劇中で奏でられる楽器の音を蝶番にして紡いでいく。興味深いのは、韓国語を解さないイリスが、韓国人たちとおしゃべりする際に英語を使うこと。要するに、旅人の必需品とは、英語のことなのだろう。しかし、街中の石碑を通して何度か言及される、日本で死んだという詩人が尹東柱だと知れば、もう少し深い何かを感じずにはいられない。尹東柱とは、日本の統治下時代の朝鮮半島で、独立運動に関与した容疑で太平洋戦争中に逮捕され、福岡刑務所で獄死した詩人なのだから。つまり、本作では一方で植民地主義によって殺された者の悲劇が、もう一方ではある種の汎世界的な”英語植民地”状態であるがゆえに繋がることができた者たちの喜劇が、語られているのかもしれない。11月1日より全国順次公開。

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