20世紀初頭を舞台に描かれるのは、ミャンマー、タイ、日本などなど東アジアをまたにかけた、大英帝国の公務員であるエドワードと彼を追いかける婚約者モリーの壮大なイタチごっこだ。しかし、フィクションとドキュメンタリーの境界を自在に行き来するゴメス監督は、モノクロで紡がれる重厚なドラマパートの合間合間に、現在の各国の風景をときにカラーでこともなげに挿入してみせる。中には日本を撮影したものもあり、例えば大阪の北新地にあるうどん屋「つるつる庵」が登場するだろう。そこだけ切り取れば、外国人観光客がいかにも好みそうな風景集だと言えるかもしれない。しかし、時空を越えたドラマパートが重なり合うことで、観る者はどこでもない場所へと誘なわれる。その奇妙な心地よさは、映画ならではの体験と言えるかもしれない。10月10日より公開。

『ハード・トゥルース 母の日に願うこと』を観る。
この気持ちを、何と表現したらいいのだろう。本作で観客が主として目にするのは、初老の黒人女性パンジーが、誰かれ構わずキレ散らかす姿だ。「全てを終わらせたい」と言いながら、まるで死を恐れているかのごとく...

『グランドツアー』を観る。
20世紀初頭を舞台に描かれるのは、ミャンマー、タイ、日本などなど東アジアをまたにかけた、大英帝国の公務員であるエドワードと彼を追いかける婚約者モリーの壮大なイタチごっこだ。しかし、フィクションとドキ...

『ジュリーは沈黙したままで』を観る。
ベルギーのテニスクラブに属する15歳のジュリーは、天才プレイヤーとして練習に打ち込む日々を送っている。コーチが指導停止となったのは、そんなある日のこと。クラブメイトたちが動揺する中、沈黙を貫くジュリ...

『〈私たち〉とは何か 一人称複数の哲学』を読む。
「私とは何か?」と問う哲学書は数多いが、本書が問題にするのはタイトルの通り「私たちとは何か?」。著者は冒頭にこう綴る。「最初にこう考えてみよう。政治の主体とは〈私たち〉である、と」。実際、”左派と右派...

『どこかで叫びが ニュー・ブラック・ホラー作品集 』を読む。
おバカなコメディアンとして頭角を現しながら、今では映画『ゲット・アウト』をはじめとする”エレベーテッド・ホラー”の急先鋒となったジョーダン・ピール。そんな彼が編者を務めたアンソロジーには、自身のクリ...