舞台は雪の積もるカナダのウィニペグ。実在する街ではあるものの、本作ではペルシャ語とフランス語が公用語となり、イラン文化が強く反映された場所。架空の設定が加わっている。そんな世界において描かれるのは、メガネを七面鳥に奪われた同級生のために、氷の中に埋まったお札を取り出そうと東奔西走する幼い姉妹と、彼女たちが出会う一風変わった者たちをめぐる人間模様。ところで、ウィニペグの映画監督といえばガイ・マディンという鬼才がいて、彼はこの街がいかに退屈であるかを描くことでお馴染みだ。本作でも、劇中に登場するツアーガイドは、何の変哲もない駐車場を名所として案内する。しかし、にもかかわらず、そんな退屈なウィニペグの風景が、本作ではとんでもなく素敵に映し出されるのはどうしたことか。カメラの置き方次第で世界はこんなにも輝くのかと驚くしかない。その視線は、物語の描き方とも通じている。なぜなら本作が描くのは、一見すると嫌な人々でも、別の角度にカメラを置けばいい人かもしれないことを、オフビートなタッチで伝えてくれる物語なのだから。8月29日よりシネマカリテ、ヒューマントラストシネマ渋谷ほかにて公開。
『海賊のフィアンセ』を観る。
知る人ぞ知る異端の映画監督、ネリー・カプランが1969年に発表した作品だ。舞台は架空の村テリエ。そのはずれで母と暮らすマリーは、不法滞在者であるがゆえに、他の村人たちからつまはじきにされている。母が...
『THE END(ジ・エンド)』を観る。
ポストアポカリプス的な状況下の地球において、地下シェルターで贅沢に暮らす富裕層一家とその仲間たちのお話だ。しかし、広大な塩抗の中に設られた彼らの家はハリボテめいていて、そこで営まれる装われた普通の暮...
『ジェイ・ケリー』を観る。
年末の恒例行事となりつつある、バームバック監督作のネトフリ独占配信(とはいえ、数えてみると2、3年に1本のペースだったが)。今年、その主役を務めるのは、ジョージ・クルーニーだ。クルーニー演じるジェイ...
『ネクロポリティクス 死の政治学』を読む。
平和の象徴と目されもする民主主義は、同時に分断を生み、虐げられた者たちを死に至らしめる暴力装置として、要するにネクロポリティクスとしても機能してきたし、今もしている。黒人差別やガザの現状を鑑みれば自...
『ヒップホップ名盤100』を読む。
よくある「歴史を動かした名盤100選」ではなく、「2025年の気分で聴ける名盤100選」であることを目指したっていうコンセプトがまずいい。どんなアルバムが紹介されているかはその目で確かめていただくと...