刑期を終えた中年の白人男が絶望的な表情で牢獄を後にする。男はサウスブロンクスで黒人ギャングを束ねる顔役、フランク・ホワイトだ。やがて彼は、絶望的な表情のまま、警察も巻き込んだ麻薬ビジネスをめぐる戦争に参戦することになるだろう。興味深いのは、彼がその間、ほとんど”外”に出ないこと。有刺鉄線の張り巡らされた牢獄から車でまず向かうのが、同じくらい頑丈そうなゲートに閉ざされた家なのは象徴的だ。ある建物の中にいたかと思えば次のカットでは別の建物の中にいる彼が(移動シーンがあったとしても車や地下鉄の中)、その肌を外気に晒すシーンは劇中でほとんどない。そればかりか、警察と壮絶なカーチェイスを繰り広げて車が大破した後、1人だけなぜか忽然と姿を消してしまうことすら。世界それ自体が窮屈な牢獄で、囚われの身である彼は外に出ることを禁じられているかのよう。だからこそ、その後に待ち受け……あとは言わぬが花でしょう。8月22日よりシネマート新宿ほかにて全国順次公開。
『海賊のフィアンセ』を観る。
知る人ぞ知る異端の映画監督、ネリー・カプランが1969年に発表した作品だ。舞台は架空の村テリエ。そのはずれで母と暮らすマリーは、不法滞在者であるがゆえに、他の村人たちからつまはじきにされている。母が...
『THE END(ジ・エンド)』を観る。
ポストアポカリプス的な状況下の地球において、地下シェルターで贅沢に暮らす富裕層一家とその仲間たちのお話だ。しかし、広大な塩抗の中に設られた彼らの家はハリボテめいていて、そこで営まれる装われた普通の暮...
『ジェイ・ケリー』を観る。
年末の恒例行事となりつつある、バームバック監督作のネトフリ独占配信(とはいえ、数えてみると2、3年に1本のペースだったが)。今年、その主役を務めるのは、ジョージ・クルーニーだ。クルーニー演じるジェイ...
『ネクロポリティクス 死の政治学』を読む。
平和の象徴と目されもする民主主義は、同時に分断を生み、虐げられた者たちを死に至らしめる暴力装置として、要するにネクロポリティクスとしても機能してきたし、今もしている。黒人差別やガザの現状を鑑みれば自...
『ヒップホップ名盤100』を読む。
よくある「歴史を動かした名盤100選」ではなく、「2025年の気分で聴ける名盤100選」であることを目指したっていうコンセプトがまずいい。どんなアルバムが紹介されているかはその目で確かめていただくと...