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『文化の脱走兵』 奈倉 有里(著)

ロシア文学者の著者が、ロシアによるウクライナ侵攻直後から綴ってきたエッセイをまとめた一冊。日常の些細なワンシーンから、みるみる大事なメッセージへと繋げられていくその筆致は、坂を転がりながらだんだんと大きくなっていく雪だるまのようで心地いい。人と人が仲良くなるのは、例えばある同じ文化が好きだからであって、同じ国籍だからではない。もしその仲良しの輪が国の都合で引き裂かれる戦争のような事態に巻き込まれたなら、脱走せよ。不思議なタイトルには、そんな祈りが込められている。¥1,760/講談社