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『Chime』 黒沢清(監)

(C) 2023 Roadstead

黒沢清監督による今年2本目の新作は、前作『蛇の道』が序の口だったんじゃないかと思われるほどやばい。料理教室の講師が、1人の生徒から謎の打ち明け話をされたことに端を発するスリラーとひとまず説明できるがしかし、45分の中編映画ってこともあり、やりたい放題やりまくって時間が来たら「はい終了」と言わんばかりの破茶滅茶さ。これはもう、キッチン空間において考えうるあらゆる恐怖描写をメインディッシュに据えた、目眩く不穏で邪悪なショットの満漢全席だ。そこには「伏線回収」もなければ「考察」の余地もない。実際、主人公の妻が大量の空き缶の詰まったゴミ袋を溜め込んでいる理由など考えても仕方がない。正しい向き合い方はおそらく、「ゴミ袋の空き缶が鳴らすシャンシャンシャン〜音ってこんなに怖かったっけ?」。そんな新世界への回路すら開いてくれる必見中の必見作。来月はさらに『Cloud クラウド』の公開が控えているんだから、もう現在は黒沢清の世紀になっているのだろう。8月2日よりStranger他で公開。