カルチャー

キョンキョンのポッドキャストが始まった!

『ホントのコイズミさん』の話。

2021年4月5日

photo: Takeshi Abe
hair & make: Kenichi Yaguchi
text: Keisuke Kagiwada
special thanks: Laboratoryy

小泉今日子

ポッドキャストがやりたいんじゃ! 『POPEYE Web』のウィッシュリストには、スタート当初からそんな項目がある。しかし、今も果たせずにいるのは見ての通りだ。そんな現状を打破すべく、会いに行ったのは小泉今日子さん。Spotifyオリジナル・ポッドキャスト番組『ホントのコイズミさん』が始まるという情報をキャッチしたからだ。しかも、本にまつわる仕事をしているゲストを招いていろいろ語り合うという番組で、内容もなんだか興味深い。小泉先輩、いろいろ教えてください!

——どうしてポッドキャストを始めようと思ったんですか?

小泉今日子(以下、小泉) 10代の頃から、ラジオ番組をやるのがすごく好きだったんですよ。去年もTBSラジオさんで『あなたとラジオと音楽と』って特別番組を生放送で1回だけやらせていただいて。「どこかでレギュラーでやりたいな」と思っていたところにSpotifyさんから今回のお話があったので、二つ返事でお引き受けしました。

——小泉さんのラジオといえば、20代の頃にTOKYOFMでやっていた『KOIZUMI IN MOTION』が伝説的ですよね。

小泉 あの番組は私も思い出深いです。川勝(正幸)さんが放送作家で、いとうせいこうさんや(藤原)ヒロシくんが選曲をやってくれて。高城剛くんや松沢呉一さんは、ネタをくれる人っていうか、昔の刑事ドラマなんかによく出てきたじゃないですか。情報屋っていうの?(笑) そんな感じで、ブレーンが豪華だったんです。

——いやはやシビれるメンツですね。

小泉 ちょうどその頃、ヒロシくんたちと作った『17番』ってアルバムが出たんですよ。そのCDにはバックトラックも収録しておいたので、番組にからめてリミックスコンテストのイベントをしたりもしましたね。その後も、『KOIZUMI IN MOTION』は新しいアルバムが出るたびにイベントを組んでくれて、みんなでライブとかをやっていました。贅沢だったなぁ。そのイベントを『スペースシャワーネットワーク』が番組にしてくれたり。もうサブカル全開(笑)。

——『KOIZUMI IN MOTION』は、もはやひとつのラジオ番組にとどまらないムーブメントだったんですね。ポッドキャストに話を戻しますが、ラジオとの違いとかって感じますか?

小泉 ポッドキャストには、いつもでどこでもパーソナルな感覚になれるっていうよさがありますよね。あと、音質もいいし、アーカイブもちゃんと残されるし、番組エピソードの途中でCMが入ることもない。これは自由にフォーマットを作れるなと思っています。

——たしかにCMが入らないのは重要ですね。そもそもポッドキャストを聞いたことはあったんですか?

小泉 ありましたし、やることになって改めていろいろ聞きました。好きなのは『アンニョントーク』って番組。日本語を喋る娘と韓国語を喋るお母さんがただ話しているだけなんですけど、ときどきお母さんも「○○だよねー」って日本語を喋ったりして、それがすっごくかわいいんですよ(笑)。語学学習の番組もあるのかなって探してたら、たまたま見つかったんですけど。ポッドキャストって放送局のラジオよりも、小さい世界のおしゃべりが、実はすごく大きく広がっているって感覚があって面白いですよね。

——『ホントのコイズミさん』は、毎回本に関わる方をゲストに招き、日々感じることや人生哲学を語らうという内容ですね。本をテーマにした理由は?

小泉 テーマを決めないと会議が進みそうになかったっていうのもあるんですけど(笑)。それはともかく、本って読む人の新しいドアをどんどん開けてくれるものだと思うんですよ。例えば、本の中に「目黒川の桜が……」って書いてあったから、今度の日曜日に見に行ってみようかなとか、作中に登場した歴史上の人物について、もっと調べてみようかなとか、次のアクションのきっかけになる。このポッドキャストも、聞いた人たちが次のドアを開ける、次のアクションをするきっかけになるような内容にしたいですね。だから、一冊の本の紹介とかではなく、本好きな人たちのお話を聞くことにしたんです。本を好きな人はきっとたくさんの言葉を持っているし、たくさんの面白い経験をしていると思ったので。

——1回目のゲストは、『POPEYE』でもよくお世話になっている松浦弥太郎さんですね。昔からお知り合いだったんですか?

小泉 私、若い頃によくフォトグラファーの小暮徹さんの家に入り浸っていたんですね。そこに『COW BOOKS』を松浦さんと一緒にやっていた小林節正さんも、靴屋さんとして出入りしていたんです。だから、コバちゃんとは長くて。2人が『COW BOOKS』の前にやっていたお店で、留守番電話のメッセージを吹き込んだこともあるんです(笑)。だから、松浦さんともご挨拶はしたことがあるんですけど、深く話すのは今回が初めてでした。

——小泉さんの留守電メッセージ、聞いてみたかった……。松浦さんと話してみていかがでしたか?

小泉 本に関わるきっかけになった話がとっても面白かったです。松浦さんは高校に全然馴染めなくて、ぱっと学校を辞めて、バイトしてお金を貯めてアメリカに行ったんですね。だけど、誰かに話しかけられても英語があまり喋れないから、ずっと引きこもっていたんですよ、汚いモーテルみたいなところに。ただ、本屋さんだけは誰も話かけてこなくて、それで入り浸っているうちに、目利きになったそうです。そういう話は今の若い人が聞けば、「こんな道もあるんだな」って思えるんじゃないかな。

——それにしても、小泉さんっていつも新しいチャレンジを続けていますよね。今回のポッドキャストしかり。その好奇心旺盛さって生まれながらのものなんですか?

小泉 うん、DNAじゃないですか。親もそうだし。今回のポッドキャストでも、いくつか挑戦をしているんです。ポッドキャストって著作権の関係で、既存の曲を流せないじゃないですか。だから、普通は著作権フリーの音源で番組を作るんですけど、だったらオリジナルの曲を作れば大丈夫じゃないかと思って、Spotifyの方に聞いたんです。そしたら、「オリジナルなら大丈夫です」って言うので、すぐに友達のミュージシャンに声をかけて、もう5,6曲は作りましたかね。そういうことをして遊んでいます。あと、ゆくゆくはこの番組を書籍化したいと思っているんですよ。せっかくいろんな人や本屋さんに会えるんだから、本や本屋さんのカタログみたいなものを作れたらいいなって。私、「せっかくなら」っていう一石二鳥みたいことが好きなんです。

——今後、『POPEYE Web』でもポッドキャストをやりたいと思っているんですが、何かアドバイスはありますか?

小泉 そうだなぁ。ラジオもそうですけど、ポッドキャストって1対1なんですよ。結果的にたくさんの人が聞いてくれたとしても、聞いている人はひとりひとりの個人。だから、みなさんにっていうよりは、1人に話しかけるようにするのが、一番重要かもしれませんね。

番組情報

ホントのコイズミさん

Spotifyオリジナル・ポッドキャスト番組『ホントのコイズミさん』は、4月5日(月)よりSpotify限定で配信開始! 毎週月曜日0時に更新。

Official Website
http://spoti.fi/HontoNoKoizumisan

プロフィール

小泉今日子

こいずみ・きょうこ | 1966年、神奈川県生まれ。1982年「私の16才」で歌手デビュー。以後、「なんてったってアイドル」「学園天国」「あなたに会えてよかった」「優しい雨」など数々のヒットを放つ。女優として映画、舞台などの出演も多数。エッセイなど執筆家としても活躍中。2015年より自らが代表を務める株式会社明後日ではプロデューサーとして舞台制作を手掛ける。映像制作プロダクション新世界合同会社のメンバーでもあり、2020年8月28日公開の外山文治監督「ソワレ」にアソシエイトプロデューサーを務めた。