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【#4】乗馬をして幾つか感じた事

2022年4月3日

text: Shigeru Suzuki
edit: Yukako Kazuno

鈴木茂さんの乗馬
乗馬をする鈴木茂さん(横)
鈴木茂さんの乗馬

乗馬は楽しい、怖い、不思議、、、色んな体験をさせて貰いました。僕は乗馬クラブでしか乗った経験がないのであまり良い馬には乗っていないと思います。こんな事を言うと乗馬クラブから怒られてしまうけど、クラブに1頭でも良い馬がいればラッキーです。勿論、これは貸馬の話で良い馬は下手なライダーには乗せずに大切にされています。

良い馬は、全てにおいて敏感に反応します。つまり下手なライダーは手綱にしがみつき、その手綱は、馬の口の中のハミという金具に繋がっているので、下手なライダーが手綱にしがみついている時の馬の口の中は、拷問のような痛みが走っていると思います。

そして馬に合図を送る事を扶助(ふじょ)と言います。脚、拳、坐骨、等を使って合図を送る訳です。この合図で馬は行動します。合図は微妙で繊細なので、乗り手が替わった時の馬はその扶助の違いに混乱する事でしょう。これだけでも、乗馬クラブのオーナーがやっと手に入れた良い馬を貸馬にしたくないと思うのはわかるし、当然です。

僕が動物とのコミュニケーションに特別な感情を持つようになったのは多分、馬に乗るようになってからだと思います。怖い体験は10回くらいかな。あるクラブで10日間くらい馬小屋に入っていた馬に乗った瞬間に、ヤバいと思ったんです。それはその馬の耳が小刻みに震え、異常に興奮していたからです。案の定、その馬は競馬馬のように暴走して、ひっかけられたという状態です。いくら手綱を絞めても何の効果もありません。ただただ、馬が落ち着くまで怖い思いをしながら、落馬しないようにと願いつつ、ひたすら馬が疲れるのを待つしかないのです。

バイクに乗って、アクセルを全開にふかしてアクセルが戻らないと怖いでしょう?そんな感じです。そんな体験を10回程すると、こちらも少しは対抗策を身につける事が出来ます。僕の場合は、片方の手綱を自分の方に持って来て、反対の手綱は引っ張らずにしっかり握りしめるんです。そうすると馬は、頭が横になって1歩目の踏み込みの足が出しにくいようです。興奮している馬の顔が正面を向いているのはあまりにも危険な状態です。

不思議な体験もしています。ラフィンゴという名前の馬でした。3mくらいしたら左に曲がるぞ、って心の中でつぶやくと本当に左に曲がってしまうんです。この馬に乗った時に初めて何やら神秘的なものを感じたんです。僅かな乗り手の重心の移動を感じてのことか、テレパシーなのか、わかりません。

最高の体験もしています。埼玉方面のクラブで乗った馬には驚きました。一言で言うと、魔法の絨毯って乗ったことはないけどこう言う感じなのかな?って思ってしまうような馬でした。乗っていて全く力を入れる必要がなく、乗り心地は魔法の絨毯、ってこんな馬いるんだ!あの快感と感覚は忘れる事が出来ない思い出です。昔の武将は、気に入っている馬は我が子にも絶対に乗せないって話を聞いた事があるけど、わかるような気がします。

プロフィール

鈴木茂

すずき・しげる | 1951年、東京都生まれ。ギタリスト。1969年「はっぴいえんど」に加入。解散後は、単身L.A.に渡りソロアルバム「BAND WAGON」を完成。帰国後、アルバムリリースに合わせ「鈴木茂&ハックルバック」を結成し、全国ツアーを行う。その後「ティン・パン・アレー」のメンバーとして数多くのセッション活動を重ね、ソロとしても7枚のアルバムを発表するかたわら、スタジオワーク、LIVEサポート、アレンジャー、プロデューサーとしても活躍。2021年には、小原 礼、鈴木 茂、林立夫、松任谷正隆の4名で「SKYE」を結成しソロ活動と共に精力的に活動中。