カルチャー

8月はこんな映画を観ようかな。

暑すぎる夏から逃げ出したくなったら観たい6作。

2021年8月1日

『愛のように感じた』イライザ・ヒットマン(監)

(C)2013 IFLL MOVIE LLC

『17歳の瞳に映る世界』が話題のイライザ・ヒットマンの長編デビュー作だ。早く大人になりたくて焦燥感に駆られているらしい14歳の少女ライラの、ホロ苦い恋路が描かれる。まるで竹下夢二が描く女性たちのような顔のライラ(初登場シーンでは顔に日焼け止めを塗っているせいで、その印象がより強まっている)が常に浮かべている、困惑とも憂鬱とも取れる表情が忘れられない。本作はこの表情を撮るためだけに作られたんじゃないか。そんな妄想すらせずにはいられないくらい強い。8月14日より全国順次公開。

『ザ・スーサイド・スクワッド “極”悪党、集結』ジェームズ・ガン(監)

(C)2021 WBEI TM & (C)DC

スーサイド・スクワッドが装いも新たに帰ってきたぞ! ハーレクインをはじめDCコミックスに登場する悪役がチームを結成し、さらなる巨悪に立ち向かう姿を描く、例のアレだ。監督は『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』シリーズのジェームズ・ガン。B級ホラー出身のガンらしい、ひょえーっと驚くしかない描写がてんこ盛りだ。それにしても、まさか数百匹のネズミを使って撮られたカルトホラー『ウイラード』にオマージュを捧げてしまうとは。ガン、恐るべし。8月13日より全国公開。

『ザ・パブリック・イメージ・イズ・ロットン』タバート・フィーラー(監)

(C)2017 Follow The Motion LLC All Rights Reserved.

PiL(パブリック・イメージ・リミテッド)とは、ロンドン・パンクの元祖セックス・ピストルズではボーカルを務めたジョニー・ロットンが、解散後に本名であるジョン・ライドン名義で結成したバンドである。本作は、2018年に結成40周年を迎えたPiLの波乱万丈な道程に、ライドン自身はもちろん、さまざまな関係者へのインタビューや資料映像を通して肉薄するドキュメンタリーだ。できれば、ライドン自身の私生活ももっと知りたかったけど(トランプ支持の真相とか)、PiLのサウンドは今もまったく古びてないことが再確認できたのでオールオッケー。8月14日より全国順次公開。

『ドライブ・マイ・カー』濱口竜介(監)

(C)2021「ドライブ・マイ・カー」製作委員会

世界のフィルムフェスティバルで評価されまくっている濱口竜介監督が、なんと村上春樹の同名短編小説を映画化。本作もつい先日、カンヌ国際映画祭で日本映画としては史上初となる脚本賞を含む4冠に輝いた。妻を亡くした舞台演出家兼俳優の男が、広島の演劇祭で彼の運転手を務めることになった少女との交流を通して、喪失感を癒していく……というのがあらすじではあるが、それでは語りきれない魅力的な細部の宝庫である。特に、頬を伝う目薬のしずくから本当の涙へ、という“イメージのバトン”にはマジでしびれた。8月20日より全国公開。

『ベケット』フェルディナンド・シト・フィロマリーノ(監)

BECKETT (2021) NETFLIX

ジョン・デヴィッド・ワシントン演じる男が旅行先のギリシャで陰謀に巻き込まれる。聞き慣れない監督だなぁと思って調べてみると、ルキノ・ヴィスコンティの曾甥孫というから驚いた。長編デビュー作『Antonia…』はイタリアの詩人アントニア・ポッツィの伝記映画だそう。彼女の詩はルカ・グァダニーノ監督の『君の名前で僕を呼んで』でも取り上げられていたが、フェルディナンド監督はルカ監督とかつて付き合っていたらしく、『君の名前で僕を呼んで』で第二ユニットの監督をしていたとか。で、本作ではルカがプロデューサーを務めている。要チェックな監督であることは間違いない。8月13日よりNetflixにて独占配信。

『殺人者の記憶 デニス・ニルセンが残したテープ』マイケル・ハート(監)

デニス・ニルセンとは、イギリスでもっとも悪名高い実在の連続殺人鬼である。彼は5年にわたり、社会的弱者の若い男を家に誘い込んでは絞殺し、床板の下に隠していた。2018年に亡くなった彼は、自ら録音した250時間を超える未公開のカセットテープをはじめ、大量の記録を残していたという。本作は、独占入手したそれらの記録をとおして、スコットランドの平和な港町で育った少年が、なぜ殺人鬼になってしまったかを探るドキュメンタリーである。8月18日よりNetflixにて独占配信。