「時間足りていましたか? 堀内さん。」【前編】

「堀内誠一展 FASHION・FANTASY・FUTURE」レポート&有山達也さんインタビュー。

2025年2月26日

photo: Wataru Kitao
text: Ryoma Uchida

「マガジンハウスのエンジン」堀内誠一。

 サイトの上部を見てほしい。『POPEYE』の大看板ともいえるロゴ文字が構えている。創刊した1976年から、約50年変わらぬデザインだ。手がけたのは、デザイナーの堀内誠一(1932〜1987)さん。『Olive』のロゴデザイン、『anan』や『BRUTUS』のアートディレクションに携わり、素晴らしき雑誌の世界を彩ってきた。

堀内誠一©Seiichi Horiuchi

堀内誠一©Seiichi Horiuchi

 『平凡パンチ』『anan』『POPEYE』『BRUTUS』『Olive』などの編集長を務めたレジェンド編集者・木滑良久さんは、パワフルで鋭い編集力とデザイン感覚を持った堀内さんを指して「マガジンハウスのエンジン」と称えた。雑誌のみならず、『ぐるんぱのようちえん』(福音館書店)をはじめとした絵本など、堀内さんの仕事は多岐に渡る。その膨大な創作活動の源泉から現在地までを紐解く展覧会が立川の『PLAY! MUSEUM』にて開催中だ。

一石三鳥の堀内誠一展へ。

 堀内さんの膨大な作品量に恐れるなかれ。会場で迷子にならないためのキーワードがちゃんと用意されている。本展は「FASHION」「FANTASY」「FUTURE」という三つの「F」を頭文字としたセクションで構成されており、それぞれの側面から「堀内誠一」に迫っていく。

 セクションごとに、アートディレクター・有山達也、設計事務所ima、イラストレーター・三宅瑠人とデザイナー・岡崎由佳の各組が展示空間をデザイン。全く異なる風景が展開し、三つの展覧会を一度に楽しめる、一石三鳥の展示だ。

 「FASHION」では、アートディレクターとして創刊から49号までを手がけたファッション雑誌『anan』にフォーカス。実際の雑誌を解体して再構築し、一冊の全ページを見せるほか、企画や特集の魅力やユニークさ、画期性をピックアップした展示空間が広がる。堀内さんは、ロゴや表紙のデザイン、誌面全体のアートディレクション、雑誌のコンセプト作りや編集にも携わっていたそうで、その並々ならぬ熱意と、意外性だらけの誌面に驚く。

 「絵本作家の道こそ運命が決めた本命」と語った堀内さん。「FANTASY」では、絵本作家の面にフォーカスする。『くろうまブランキー』『雪わたり』『ぐるんぱのようちえん』(すべて福音館書店)『オズの魔法使い』(世界文化社、のち偕成社)など、ファンタジーを色濃く感じる作品や原画が展示される。楕円の展示室はゆったりくつろげるようになっており、立体のぐるんぱや巨大な絵本に囲まれた森が姿を現す。堀内さんの作品世界の中で癒されてみよう。

 「FUTURE」では、絵画やリトグラフ、イラスト、地図、写真、ポスターや装丁デザイン、旅行記やエッセイ、友人に宛てた絵手紙にいたるまで、多彩な作品を見渡せる場だ。堀内さんを敬愛する110人の方々がその中から好きな作品を推挙し、受け取ったもの、未来へ伝えたい言葉とともに展示する。中には意外な著名人の名前も。堀内さん交流の数々、そして影響を受けた人々の多さたるや。1987年、54歳の若さで逝去した堀内さんだが、現在もなお、いきいきと輝く作品たちは多くの人々に影響を与えている。未来へのヒントに溢れた展示空間だ。

 続く記事後編では、『FASHION』の展示構成を担当した有山達也さんに展示の見どころから、堀内さんへ抱いた感情、その魅力まで語っていただいた。

大きなぐるんぱ像(撮影:小川真輝)©Seiichi Horiuchi

大きなぐるんぱ像(造形:角孝政、撮影:小川真輝)©Seiichi Horiuchi

インフォメーション

「時間足りていましたか? 堀内さん。」【前編】

「堀内誠一展 FASHION・FANTASY・FUTURE」

会場:PLAY! MUSEUM(東京都立川市緑町 3-1 GREEN SPRINGS W3 棟 2F)
会期:2025年1月22日(水)〜4月6日(日)
休館日:2025年2月16日(日)
開館時間:10:00〜17:00(土日祝は18:00まで、入場は閉館の30分前まで)
入場料:一般 1800円、大学生 1200円、高校生 1000円、中・小学生 600円
【立川割】一般 1200円、大学生 700円、高校生 600円、中・小学生 400円
※未就学児無料
※当日券で入場可能。土日祝および混雑が予想される日は事前決済の日付指定券(オンラインチケット)を販売。

Official Website
https://play2020.jp/article/seiichi_horiuchi/