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〈A.P.C.〉36年目のフィロソフィ。
Created by BRUTUS
2023年12月18日
photo & text: Shoichi Kajino
久しぶりに東京の地を踏んだ〈A.P.C.〉のジャン・トゥイトゥ。東京の旧友たちとスタジオに入り、ライブセッションを収録したかと思えば、ジェシカ・オグデンとの刺繍ワークショップにギターを抱えて参加するなど、慌ただしい滞在の合間を縫って話を聞いた。

ジャン・トゥイトゥ|1951年チュニジア生まれ。〈A.P.C.〉ファウンダー。’87年「生産と創造の工房」をブランド名に冠した〈A.P.C.〉をスタートさせ、最初のコレクション「HIVER’87」を発表。’91年に海外初となるショップを東京・代官山にオープン。シンプルながら確固たるフィロソフィに裏打ちされたデザインで支持を集め続け、2022年ブランド設立35周年を迎えた。
ジャン・トゥイトゥが語る、〈A.P.C.〉の現在。
ーー36年という長い間にわたって自身のブランドを続けてこられた秘訣はどこにあったのでしょうか?
特別になろうとしないことです。何か特別なことをしないことです。なぜならファッションにおいては革命は起きないからです。注目を集めすぎることを拒否すること、それが私たちがやり続けてこられた理由だと思います。
ーーそのために意図的にショーをやらないこともありましたね。
包み隠さず話しましょう。いわゆるファッションショーというのは巨大なブランドが、現在ではデジタル以外にほとんど残っていないメディアのために行っているのが現状です。良いモデルはすでに押さえられていて使えないなどの制限の中、数枚のインスタグラムの写真のために莫大な労力を費やすことには、私は意味を見出せません。それでも時にはショーをやることはエキサイティングで、例えば前回の私たちのショーでは娘のリリーのクラスメイトをオーディションなしで全員をモデルにして行いました。あれはほかにはできないショーでした。
ーーリリー自身がデザインした洋服も含まれたコレクションでしたね。
ええ。冒頭の質問に戻るとしたら、誰もやらないことをやるということでしょう。例えば昨夜は、私の家の庭で育ったケッパーを使って、私がパスタを作ってスタッフや友人に振る舞いました。もし大きなブランドだったら編集者やインフルエンサーを招いてファンシーなレストランで食事会を開くでしょう。また昼間には、レコーディングスタジオを借りて、INO(hidefumi)さんや(藤原)ヒロシさんと一緒にセッションを収録しました。これらはファッションとは直接関係ないですが、ブランドの一部なのです。時差のせいか、あるいは緊張のせいでしょうか、私は思ったように声が出せず苦戦してしまいましたが……。こういうことはほかのブランドはやらないことでしょう。それをやることが自分たちをほかとは違う存在にしてきたのだと思います。
ーー2022年、35周年のコレクションの発表の際はステージでギターを弾いていましたね。確かにショーで自らギターを弾くデザイナーをほかに知りません。
昔、フセイン・チャラヤンはやってましたけどね(笑)。
ーー近年のA.P.C.の発展を見ると、世界各国にカスタマー、店舗が増えました。デザインのテイストはフレンチネスやパリ・シックというより、よりインターナショナルなムードを帯びてきたように感じます。
そもそも私はたまたまフランスに住むことになっただけだったのです。私の祖国はフランスではなく“フレンチカルチャー”というべきでしょう。私自身はフランス人という認識は薄いですし、フランスにいるのが、快適でないことも多々ありますから。
ーーそれで一年の多くをイタリアの島で過ごされてるのでしょうか?
人口7,000人ほどの、広告サインもない小さな島に家があって、世界から隔離されることができるのは、とても幸せです。シチリアの西にあるパンテレリアという島です。まだその島で日本人を見かけたことはありません(笑)。
ーーその島で隔離されてデザインをしているんですか?
私の人生においては、生活と仕事の境界を持たないという贅沢があります。私はバカンスという言葉を知りません。そこに境界がないからです。例えば私は船で海の上にいる時に、デザインを考えることも、会社のとても重要な決定を下していることもあります。会社の誰もが私がどこにいようと週7日24時間連絡ができるのを知っています。この先リタイアということも考えないでしょう。仕事をやめて休暇に行こうなんて考えはないからです。私には人生のすべてが休暇で、すべてが仕事でした。
ーー羨ましい人生です。それがデザインに反映されているのでしょうね。
どうでしょうか? さっき言われたインターナショナルなデザイン感覚というのがどういうものかわかりませんが、近年でデザインの幅が広がったのは確かでしょう。私たちはチームで動いてますから。もし私一人でデザインしていたら、世界で20店ほどの規模で足りるでしょう。私の案はラディカルなので、時にJ.W.アンダーソンのようなデザイナーを迎えるのは良いことです。例えば、彼を説得して彼を前に押し出すことでそういった過激なアイデアを実現できるのです。例えば今回のコラボレーションで使った救急車のイメージです。かつてヨーゼフ・ボイスがアメリカでのパフォーマンスの際、政治的理由からアメリカの土地は踏みたくないと、空港からギャラリーまで担架ごと救急車で移動しました。そのギャラリーの檻の中で彼はコヨーテとのみコミュニケーションをとったのです。アメリカ人とコミュニケーションを取らずコヨーテとのみコミュニケーションを取るという彼のアクションにはメッセージがありました。’70年代のキャデラックの救急車のイメージは、その際のボイスへのオマージュです。それを目にする1,000人のうち10人でも気づいてくれればいいのです。ここで冒頭の質問へのもう一つの回答をするなら、「私たちがやることすべてには説明がある。スピリットがある」からということです。
ーー数年前から始まったこのインタラクションというコラボレーションシリーズについて聞かせてください。
そもそもこのシリーズよりもずっと前、’90年代から私たちは頻繁にコラボレーションをやってきました。〈マルティーヌ シットボン〉〈MILKFED.〉〈PORTER(吉田カバン)〉などと。コラボレーションに際してはミュージシャンの考え方で臨んでいます。昔ニューヨークのスタジオでレコーディングをしていた際、プロデューサーにここにジミ・ヘンドリクスのドラマーを入れようと提案され、気がつきました。ファッションはあまりにエゴイスティックなのではないかと思うんです。私はほかの分野でより優れた才能と仕事をするのが好きなんです。フェンダー・ローズを弾くことができないから、INOさんを招いて弾いてもらうというような感覚です。
ーー2022年になりますが、インタラクションでの、ジャン・トゥイトゥ自身とのコラボレーションというコンセプトにはやられました。
さっきも言った通りA.P.C.のデザインはチームで行っているので、より自分の趣味を反映したコレクションになりました。
ーー例えば、多くは上下ワントーンのコーディネートだったり、ブランドロゴを記すこともなく、よりアノニマスなデザインというものにあなたの初期衝動のようなものを感じました。「HIVER’87」の時のような。
私がブランドを始めた当時は私が見ていたアノニマスでミニマルなデザインは新鮮だったのです。なぜなら世の中があまりにも騒がしく自分も大声で叫んでいる時期だったからです。まさに今のように。
ーー本当に、まさに今のようですね! 再びそこに立ち返るタイミングなのでしょうか。
ええ、アンダーグラウンドに。アンダーグラウンドというのは単なるマーケティングの言葉ではなく、それはアティチュードであり強いアイデアなんです。
今ジャンが気になる6つのこと。
1. DON WINSLOW
ドン・ウィンズロウ


2. JOSEPH BEUYS
ヨーゼフ・ボイス

3. 12 STRINGS GUITAR
12弦ギター


4. PANTELLERIA ISLAND
パンテレリア島

5. CAPER
ケッパー


6. FAMILY
ジャンの子供たち

インフォメーション
A.P.C.
アー・ペー・セー カスタマーサービス ☎0120・500・990
Official Website
www.apcjp.com/jpn
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